「涼み処」600カ所超、福島県独自指定 6月から熱中症新対策

 夏本番を前に、福島県内で熱中症対策が本格化している。4月施行の改正気候変動適応法に基づき、各市町村は公共・商業施設を「クーリングシェルター」に指定し、熱中症特別警戒アラート発令時に一般開放する運用を始めた。加えて県は、より柔軟な対応を視野に避暑施設「ふくしま涼み処(どころ)」を独自に定め、登録数は600カ所を超えて順調に推移する。二つの制度が同時期に始まることになり、いかに浸透させられるかが焦点になりそうだ。

 クーリングシェルターは冷房設備と滞在スペースがある公民館や図書館などを市町村が指定する。熱中症特別警戒アラートが発令されると、施設側は事前に設定した時間に開放しなければならない。県内では少なくとも約400カ所が指定を受けた。基本的に全て公共施設で、民間は「開放義務」に難色を示しているとみられる。

 特別アラートは、気温と湿度などから算出する「暑さ指数」が都道府県内の全観測地点で35以上と予想される場合に発令される。しかし、県内29の観測地点で「全て35以上になる可能性はかなり低い」(県関係者)という。直近5年間の最高値が28.0の福島市鷲倉(標高1220メートル)など、冷涼な地点を複数含むためだ。県内初の40度を記録した昨年8月5日の伊達市梁川町は36.6だった。

 一方の「ふくしま涼み処」は商業施設の協力も取り付け、当初計画した「400~500カ所」を上回る600カ所超で開設される方向だ。過去に県が同じ趣旨で協力を依頼した「クールシェアスポット」の下地を生かし、スーパーやドラッグストアなどが参画。県は6月1日の運用開始に向け、所在一覧と地図を近く公表する。「涼み処」になった施設はのぼり旗を掲げ、利用者らに周知する見通しだ。

 登録数が順調に伸びる一方、流動的な要素もある。シェルターと違って施設の明確な基準はなく、場所ごとに広さや設備の充実度はまちまちだ。また住民が殺到したり、長時間滞在したりした場合、直接の対応は各施設に委ねられる。昨年度まで7年間続けてきたクールシェアスポットと同様、認知度も課題となる。

 本県では昨年5~9月、熱中症による救急搬送者数が2008年の調査開始以来最も多い1840人に上り、4人が死亡した。今年は12日までに33人が搬送されており、真夏にかけて増加が見込まれる。

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