『あぶない刑事』が復活した理由とは?まるで変身しない仮面ライダー

伝説のバディ復活秘話! - (C) 2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会

1986年にドラマシリーズがスタートすると、舘ひろし柴田恭兵のスタイリッシュでコミカルなコンビが大反響を呼んだ「あぶない刑事」。翌年に劇場版『あぶない刑事』が公開されてから、最新作『帰ってきた あぶない刑事』が8作目の劇場版となるが、映画全作品に携わってきたのが近藤正岳プロデューサーだ。前作『さらば あぶない刑事』で“刑事”を引退した鷹山と大下が8年ぶりに『あぶ刑事』に戻ってきた経緯を近藤プロデューサーが語った。

伝説の二人が帰ってくるまでの経緯

これまで7作品が劇場版として公開されてきた『あぶない刑事』。前作『さらば あぶない刑事』では、舘演じる鷹山(タカ)と柴田扮する勇次(ユージ)が刑事を引退し、まさに“さらば”という形になったが、8年の歳月を経て、タイトル通りタカとユージがヨコハマに帰ってきた。

近藤プロデューサーは「『あぶない刑事』(1987年)『まだまだあぶない刑事』(1988年)『もっとあぶない刑事』(1989年)と3年連続で劇場版を公開したあと、しばらく間が空いたんです。そのあと『あぶない刑事リターンズ』(1996年)『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』(1998年)『まだまだあぶない刑事』(2005年)と公開したのですが、テレビドラマシリーズからも時間が経過していたので、そこまで興行的に振るわなかった。ただビデオやDVDが全盛の時代で、プロジェクトとしてはしっかりとペイができた」と劇場版の歴史について触れる。

その後、『まだまだあぶない刑事』から11年経過した2016年に『さらば あぶない刑事』を公開した。近藤プロデューサーは「興収が前作の倍になったんです」と語ると「もちろん一つの理由として『これが最後』ということもあったと思うのですが、昔から観てくれていたファンがしっかりついてきてくれたことが数字として表れた」とヒットの理由を明かす。

近藤プロデューサーは「プロデューサーという生き物は、ヒットすると『またあるよね』ということになる」と語ると、共に作品に携わってきた黒澤満プロデューサーと「頃合いを見てやりたいね」と少しずつ企画が動き出し始めたという。

企画の種は、刑事を引退しニュージーランドに行ったタカとユージが問題を起こして、国外退去させられ、またヨコハマで探偵をやろうというところから始まった。そんななか、黒澤プロデューサーが2018年に他界。近藤プロデューサーにとっては「黒澤さんの残した宿題を僕が果たさなければいけない」という思いが強くなっていったという。

舘ひろし&柴田恭兵への交渉

しかし2020年には、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界中で流行し、その影響は日本にも及んだ。いろいろなことがとん挫するなか、企画を進めていったという近藤プロデューサー。「ヨコハマで探偵を始める」「二人に関わる娘の存在」というアイデアを舘に提案すると「面白いかもね」という返答が返ってきた。

一方で柴田からは「『さらば あぶない刑事』が大ヒットしてきれいな終わり方をしているので、よほど面白い話にならないと、帰ってくる意味がないんじゃないのか」という意見が出たという。作品の絶対条件として「舘さんと恭兵さんが揃うこと」があるため、二人に納得してもらえるための脚本づくりに全精力を傾けたという。完成したのは2021~2022年の冬だった。

近藤プロデューサーは「脚本ができてからもそう簡単には行きませんでした」と振り返ると「何度も改稿は繰り返しました。いつも恭兵さんは『65点でいい』と言うんです。そこまで行けば、あとは現場でディスカッションをしながら100点にしていく。『あぶない刑事』はアドリブを含めて、ライブ感をとても大切にしている作品なんです」と特徴に触れる。

この言葉を裏付けるように、現場で舘はよく「僕が言ったら面白くないけれど、恭サマが言ったら面白い」とアイデアを出すという。一方の柴田も、それを受けいろいろなチャレンジを繰り返す。「セクシー大下」というユージの代名詞も「あれは2作目の映画の現場で生まれた恭兵さんのアドリブなんです」と近藤プロデューサーは裏話を披露してくれた。

タカとユージは変身しない仮面ライダー

コロナ禍というアクシデントはあったものの、こうした綿密なやり取りを繰り返し、丁寧に進めていった。8年という歳月を費やしたのは必然だった。テレビドラマがスタートしてからは実に38年が経過しているが、「二人の魅力はまったく変わっていません」と舘と柴田の格好良さに太鼓判を押す近藤プロデューサー。

「舘さんと柴田さんの持つハードボイルドな格好良さはもちろん健在なのですが、面白いセリフを含めて現場で生まれるライブ感、軽やかさも切れ味が増しています。映画のジャンルで言うと、アクションコメディーになるのかもしれませんが、ハードとソフトを一瞬にして行き交う二人の姿は、時の流れを感じさせません。本当に素晴らしいコンビネーションです」。

さらに近藤プロデューサーは「よく冗談で言うのですが、タカとユージの格好良さって変身しない仮面ライダーだなと。ライダースーツを着なくても、キャラクターが出来上がっている」と語ると、昭和、平成、令和と続くシリーズだが「あえて“令和に昭和をやろう”と思っていました」とコンセプトを明かした。

一方で、昭和の匂いを感じさせながら、映像はものすごくスタイリッシュで、新しい『あぶない刑事』を強く印象づける。監督を務めたのは30代の原廣利。近藤プロデューサーは「これまではベテランの監督がメガホンをとることが多かったのですが、今回は若い監督さんにお願いしました。結構カット割りをされる監督で、時間もかかりました」といつも以上に粘った現場だったことを明かすと「ルックもそうですが、『あぶ刑事』シリーズで初めてシネスコで撮っているので、全体的に令和の新しい『あぶ刑事』が楽しめると思います」と期待を煽っていた。(取材・文:磯部正和)

映画『帰ってきた あぶない刑事』は5月24日より公開

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