その後の小値賀

 「地方自治は民主主義の最良の学校である」は101年前に亡くなった英国の政治家・外交官であるブライスのあまりにも有名な言葉だ。身近な場所で票を投じて議員や首長を選び、地域社会の物事がそこを出発点に決定されていく地方自治では、良くも悪くも政策の効果を実感しやすい▲言い換えると、この人が当選したことでこう変わったとか、逆にあまり変わらなかったとか、ということが国の政治よりも体感されやすい-それが「学校」の意味するところと理解されている▲この欄で8年前に同じ言葉を紹介したのは、若い世代の政治参加を促すために、議員報酬を50歳以下限定で大幅に増額すると決めた小値賀町議会の決断をとても新鮮に感じたからだった。同町議会のその後の日々を追った連載記事を興味深く読んだ▲残念ながら誰からも手が挙がらず、制度は3年後に廃止されたが、試行錯誤は続いている。議員の「なり手不足」解消に向け、熱いメッセージを発し続ける町議会▲立候補者を一生懸命に集めて、自分たちが落選したら笑い話…連載の1回目は現職議員のこんな言葉で結ばれていた。それは彼らのアクションが個々の利害や欲得ずくをとっくに超えている証拠▲この小さな学校の学びは相当いい線をいっている。その思いを新たにした。(智)

© 株式会社長崎新聞社