「女性ならでは」が強みの建設会社 成功までの道のり/有限会社ゼムケンサービス代表取締役・籠田淳子さん

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

女性が多い建築会社を設立した理由

甲木:あけましておめでとうございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。

梁:同じく、西日本新聞社の梁京燮です。

甲木:梁さん、新しい年になりましたね。

梁:はい。皆さんあけましておめでとうございます。

甲木:この番組も3年目に入ります。

梁:そうですね。3年も続いているんですね。甲木さんのお陰です。

甲木:梁さん、今年の目標はなんですか?

梁:これは多分、毎年言ってるんですけど…

甲木:あっ、分かりました。減量?

梁:はい。今年こそ20キロ痩せます。(笑)

甲木:じゃあ、是非そんな梁さんが、修業で働かせてもらったらいいんじゃないかなっていう、今日のゲストはそういう会社の方です。それでは早速、本日のゲストお呼びしましょう。女性が大半を占める建築会社、ゼムケンサービスの籠田淳子社長です。よろしくお願いします。

梁:よろしくお願いします。

籠田:よろしくお願いします。

甲木:籠田さん、うちの梁を使って頂けますか?(笑)

籠田:是非。

甲木・梁:(笑)

籠田:半年で減量が叶うかもしれません。

梁:働きながら減量ができる、そんな夢みたいな仕事があるんですか?

籠田:そうなんですよ。なんていっても周りはハーレムですから。(笑)

甲木:女性が大半を占めるって、さらっと言ったんですけど、実際そうなんですよね。男女比率はどれぐらいなんですか?

籠田:弊社は私以外、基本的に社員8人のうち、1人男性っていう感じです。

甲木:建築会社なのに、すごいですよね。なぜ女性が多い建築会社を作られたんですか?

籠田:そもそも私は、職人が周りにいる所が実家だったんです。ハゼモト工務店っていうのが私の実家なんですけれども、職人さんってすごくかっこよくて、いい仕事をして帰って来た時の職人の話も面白いし、こんな仕事を私は、すごいなあ、かっこいいなあって思うことが、子どものときからあったんですね。そんな職人たちが腕がなるような仕事を私は取ってきたいと思ったのが、私が建築の業界を目指していこうというきっかけなんです。短大に行かせてもらって、最終的に現場に出るんです。するとですね、姉ちゃんそこ図面を置いとけという感じだったんですけど、多くの男性の唯一目の色が変わったのが、私が2級建築士や1級建築士の資格を取った時に名刺と私を2度見3度見するんですよ。1級建築士になった時に、父から電話がかかってきて、お前がそこまで本気と思わんかったって言って、家に帰って来いと言われました。

甲木:でもその時はまだ男性ばかりの建築会社でしょう。

籠田:そうです。

甲木:どういう形で、女性にシフトしていったんですか?

籠田:私の働きぶりを父が見て、私が外へ出て行くのを見て、淳子がやってるのは建築じゃない。サービス業だと言ったんですね。私がお客様にお会いすると、「淳子さんが来てくれたなら、ちょっとこの部屋を見てちょうだい」って言われまして、打ち合わせの部屋じゃない奥のお部屋で、しかもその奥にある引き出しだったり、納戸だったりいろんなものを開けて見せてくれるんですよ。逆に言うと、男性にはそんなところは見せたくないということで、本当に相談したいことを一緒に見てもらって、一緒に考えられるのは、淳子さんしかいないのよ、と言われて、喜んでいただいた経験が何度もあるんですね。

これは建築の世界で圧倒的男性多数で、やはり女性が全然足りない、だけど存在させることができなかったということで、父が亡くなって後継したときに、社員を採用しようと思ってハローワークに行ったら、私が女性経営者ということで、応募に来たのは女性が多かったんです。17年ぐらい前の面接の時のことですが、彼女たちの話を聞くと、朝9時から昼3時に帰らせてほしいって言われたんですよ。私がその時に思ったのは、正社員で募集しているのに、女性はなんてこんなわがままことを面接の時に言うんだろと思ったんですね。あのような女性たちはどこも採用しないのではと思いました。

でも気が付くと私も実際、この仕事を続けていかなければいけなかったから、子どものこととか、自分の体調のこととかで家族だったり、周りの人たち皆に支えてもらっていろんな工夫していました。だから私が彼女たちにできることは、そういう仕組みを作っていくことだなと思って、1人採用する予定を2人採用しました。小さな会社だったので、17年ぐらい前に1人分の給与で2人採用したのが、最初の女性を採用して育てていくきっかけだったんです。

会社を設立してから成功まで

甲木:働きぶりはどうだったんですか?

籠田:水を得た魚のように嬉しいって言われて、朝9時に出てきますけど、11時に帰ったり3時に来たりいつ会社に居るのかよく分からないような状態で、大丈夫かなうちの会社、と思ったんですけど、お互いにその時間に出てきて、クラウドサーバーに図面を入れていくこととか、お互いの仕事をスムーズにできるように、その仕事をどこでもできるようにパスしていくなどという工夫を、早くから始めたんですね。

甲木:素晴らしいです。女性を採用したことで、業績はどのようになりましたか?

籠田:最初は大変でした。男性からは女性をこんなに雇って、会社がつぶれるよって言われたり、複数の方からもアドバイスをされましたし、私も正念場でした。石の上にも3年という言葉がありますが、それではまだ芽が出るか出ないかと思っていまして、とにかく10年で彼女たちを育てようと思いました。仕事も普通の主婦だとか、子育てしている母親の視点とか、消費者視点とか、いろいろな女性の特有な視点や提案があるということも、ビジネスとして有効になるように教育していくのに5年ぐらいかかりました。100万円を150万円にするのに年間40万円を現場研修に投資してたんですね。今は8人で昨年度の売り上げが5億円ですので、多分、日本全国津々浦々、女性ばかりの工務店で8人で5億円と言ったら、よく頑張ってるねと言ってもらえるかもしれないです。

“女性のチャレンジ賞”受賞

甲木:次に、表彰されたお話をお伺いしたのですが、内閣府の女性のチャレンジ賞というのを2015年に受賞されたんですよね。

籠田:そうですね。女性技術者のワークシェアリングというのは、日本の中で多分、業界初の試みだったんですね。建設業界が女性のチャレンジ賞を受賞したということは、建設業界に女性がチャレンジしていいじゃないかっていう機運がこの2015年ぐらいに生まれてきたっていう感じですね。建設業界は圧倒的男性多数と言うところで、現場に女性はすごく少なくて、当時は現場の3%が女性でした。

甲木:そういう女性たちのために、女学校を立ち上げたっていうお話を、お聞きしたんですけど。

籠田:そうですね。1級建築士の資格取得の数字を調べると、女性の1級建築士はどんどん増えているんです。合格率はどんどん高くなっているにもかかわらず、定期講習というのをへて、1級建築士も更新していくんですね。1級建築士業務をやっていくには、定期講習を受けなさいっていうことになっていて、一応、更新する試験を受けていくんですけど、建築士の資格を取得しても約8割ぐらいが更新していないことに気付いたんですよ。

甲木:もったいないですね。

“けんちくけんせつ女学校”の設立

籠田:建設会社の男性の幹部の方に聞くと、女性は結婚するまでだから。子どもができた後、現場で仕事するのは、子どもがかわいそう、ということで続けられないんですよね。続けられるようにする仕組みとか改革に関しては出遅れてるんですが、世界中が女性の活躍が当たり前のことだと思うので、建設業界も変わっていこうとしているのは確かです。推定約2万人の女性1級建築士が、資格は持っているけれども、この業界で働いてないっていうことで、女性たちがもう1回この業界で仕事したいって思うならば、入れるようにマッチングするようにということで、現在の仕事の建築関連法令もどんどん変わってきています。そして現場の技術っていうのも新しい材料、新しい工法、新しい道具がどんどんできていて、女性や高齢者が、使いやすいように変わってきています。そういう職場の様子も知って頂きながら、もう1回学び直して、女性技術者、女性技能者を育てたいと思っている会社と、マッチングをするというような仕組みを作ろうと思い、けんちくけんせつ女学校というのを立ち上げました。

甲木:それは籠田さんの会社ではなく、業界のためにその学校を立ち上げたということですね?

籠田:そうです。

赤本(業界マニュアル)の作成

甲木:ところで、業界にはマニュアルが少なくて、赤本を作ったと聞きましたが?

籠田:そうですね。職人は自分の技術とか技能を、苦労して何年もかけて身に付けています。だから簡単に教えたくないんです。ちょっと意地悪いところが、職人の技術技能の魅力でもあるんです。それはいいと思うんですけど、でも私の会社は、ワークシェアリングをして行く時に、仕事を見える化して行かないといけなくて、私はよく喋ったんですよ。こういう場合はこうするとか、こういうことが起きたらこうだ、こういう天気の時はこういうふうにやっていくとか、喋ったことを弊社の女性の社員、スタッフはみんなメモを取ったんですね。そのメモがいっぱいになって、クリップでたくさん止めているのを、時間がある時にワードで作って、こんなになったのっていうので、二つ折りにして表紙を付けてみようと思って作ったのが、ゼムケン赤本っていうのなんです。自分が喋ってるんですけど、こんなに喋ってるのっていうぐらい面白ということで、残っていた全てのデータを、デジタル化にしてiPad(アイパッド)の中に入れて検索すると出てくるように、オリジナルの辞書のようなものを作りました。

甲木:そうですよね、みんなで共有する財産ですからね。

籠田:そうです。

甲木:こういうことが、ダイバーシティに奏功しているわけですね。

籠田:そうです。だれでも働き続けることができるようにということです。

副業の立ち上げ

甲木:それと、副業もOKされたと聞きましたが?

籠田:そうですね。何年か前にアイフォンを買い換えたときに、今までアイフォンをケーブルで繫いで充電をしていたのが、置くだけで充電ができるということが、画期的なことだと思ったんですね。こういう時代になると繋がなくていいということで、10年ぐらい前の構想で練っていたシステムを元に、ビジネスプランを作りまして、今年の1月27日にリリースします。“DIYフレンズ”っていうので、女性のデザイナーとか建築家とかファイナンシャルプランナーとか現場監督とか電気職人、クロス職人など、いろんなプロの女性のスペシャリストたちが、一同に何人も登録されていまして、自分で家を改装してみたいとか、お店をこういうふうにしみたいとか、会社に少しこういうカウンターを作りたいとか、自分たちで何かしようと思った時に、どんな材料が良いのか、見積もり金額はどういうふうに予算立てしたら良いのかなど、オンラインで全ての調整をするために、専門家の意見を聞くことができるいうようなプラットフォームを作りました。

甲木:何か求めている人も見ることができるし、それを提供できる能力がある人は、そこでお仕事が取れるということですね。

籠田:そうですね。

甲木:副業OKっていうことは、籠田さんの会社の誰かが、「私、これやれる」って言ったら、そこにアクセスするということですね。

籠田:そうです。弊社の社員も週休2日で、家でできることもたくさんありますので、収入を得られるようにと思ってますし、ほかの会社の副業もどんどん解禁されてくるでしょうから、そこで得た知識を本業の仕事のときに、お客様にお渡しすることもできると思います。

梁:素晴らしいですね。

甲木:今回は、北九州市で女性が活躍する建築会社、ゼムケンサービスを経営する籠田淳子さんにお話を伺いました。籠田さん、どうもありがとうございました。

梁:ありがとうございました。

籠田:ありがとうございました。

〇ゲスト:籠田淳子さん(建築会社・ゼムケンサービス社長)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)

(西日本新聞北九州本社)

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