山陽時事懇で伊原木隆太氏が講演 「生き活き岡山」の実現に向けて

 いばらぎ・りゅうた 東京大工学部を卒業後、外資系経営コンサルティング会社勤務を経て、米スタンフォード大経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。1998年から天満屋社長を務め、2012年に退任。同年10月の岡山県知事選で初当選し、16年10月に再選、20年10月に3選を果たした。岡山市出身。56歳。

 山陽時事問題懇談会(会員組織、代表世話人・松田正己山陽新聞社社長)は20日、岡山、倉敷、津山、笠岡の合同例会を岡山市中区浜の岡山プラザホテルで開き、岡山県知事の伊原木隆太氏が「『生き活(い)き岡山』の実現に向けて」と題して講演した。要旨は次の通り。

 県の2023年度当初予算案がまとまった。一般会計は前年度当初比5.1%増の8021億7300万円を計上した。5年連続のプラス編成であり、12年の知事就任以降で最大規模となった。

 今回の予算編成でこれまで以上に強い覚悟で臨んだのが少子化対策だ。子どもが少なければ県政の2本柱である「教育再生」「産業振興」のいずれにも影響を及ぼすため、少子化対策を好循環の中核に据えようという発想だ。

 子ども関連予算には約219億円を配分した。結婚支援システム「おかやま縁むすびネット」の登録料(2年間で1万円)無料化といったサポートから妊娠出産、育児までを切れ目なくアシストする。ただ、行政だけで成果を出すことは不可能と考えており、企業や市町村、大学、NPO法人など幅広いプレーヤーと連携し、社会の意識を変えることが大事だ。「できることは全てする」という強い思いで取り組む。

 教育、産業の2本柱は引き続き好循環のエンジンに位置付ける。教育では学力の底上げが奏功し、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が全国平均レベルまで持ち直してきた。23年度は私学教育の支援強化やICT(情報通信技術)を用いた教職員の負担軽減などで環境のさらなる改善を図りたい。

 産業では民間の設備投資が活発化しており、企業誘致に伴う県内への投資額は21、22年度と2年連続で1千億円を超えた。課題となっている用地確保に市町村と一緒になって取り組みたい。新型コロナウイルス禍で打撃を受ける観光業の立て直しも急務で、岡山桃太郎空港の国際線の完全復活に力を入れる。

 新機軸となる事業も打ち出した。社会問題化している海ごみ対策として清掃ボランティアのごみ撤去費用を助成する内容で、従来の行政の枠を超え、踏み込んだ一手だ。

 県の財政状況は高齢化に伴う社会保障関係費の増大などで厳しさを増しているが、県民の生命と財産を守ることは何よりも最優先すべきだ。知事就任当初から財政規律を重視してきた半面、国とともに約260億円を投じる児島湾締切堤防の耐震化工事のような災害時の安全性を高めるための大型事業も決断してきた。10年、20年後にあの判断は正しかったと思える視点を大事にしており、今回の少子化対策もそういった観点から考え抜いた。

 20年からの新型コロナ禍では県民に不自由を強いる場面もあったが、感染症法上の「5類」への移行でようやく出口が見えつつある。県政としても「アフターコロナ」にモードを切り替え、反転攻勢を仕掛ける。元気な郷土の実現に向け、県政運営に全力を尽くすつもりだ。

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