よゐこ有野「株主優待を狙おうと…」金融のプロが指摘する問題点とは?

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年2月は金融教育家の塚本俊太郎先生に、投資の基礎知識について、タレントで元「アイドリング!!!」14号の酒井瞳さんと一緒に学びます。

今回は、「金融商品を選ぶ基準」について伺いました。株主優待に憧れがある2人ですが、金融のプロが勧める投資方とは?


有野晋哉(以下、有野): あー、アカン。今回も疲れ目や……。

酒井瞳(以下、酒井):有野さん、また夜通しゲームですか?

有野:ちゃうちゃう、前回話したやん。予習のためにファミコンの「松本亨の株式必勝学」をやっててん。これが名作でなぁ、続編の「松本亨の株式必勝学II」もしっかりやりました。

酒井:……やっぱりゲームじゃないですか(笑)

有野:このゲームの開発元がイマジニアいう会社で、ファミコン時代に大人向けゲームをいろいろ出してたとこなんやけど、あの当時に株を買って支えてあげていたら、今でも「松本亨の株式必勝学」が続いてて、オープンワールド版が出ましたって、「オープンワールドで株を買えるようになりました!」「え、オープンワールドで買えるって何!?」って所で目が覚めてん。

酒井:寝てるじゃないですか(笑)

塚本俊太郎(以下、塚本):有野さんのように、受けたレクチャーから自分ごとに落とし込んで、日頃から意識する方が増えれば、日本の金融リテラシーも高まります。素晴らしいですね。

有野:すみません、実は途中から同じイマジニアが出した「Fit Boxing 北斗の拳(※)」をやりはじめちゃいました(笑)
※編注:2018年発売のNintendo Switch用ゲームソフト

酒井:やっぱり、ゲームで夜更かししてただけじゃないですか(笑)

有野:あたたたぁ〜〜!

酒井:頭抱えて、弱いケンシロウですね(笑)

「ローリスク・ハイリターン」をうたう商品は疑え!

塚本:とはいえ、その心意気や良し、です! それでは早速、前回お話した「金融商品の選び方」の続きからお話ししましょう。

有野:そういえば、その話の最初の時点で頭が混乱してしまって、次にしてくださいってお願いしたんやった。確か、金融商品を選ぶ時には3つの基準があるんでしたよね?

塚本:正解です。金融商品を選ぶ際のポイントは、安全性、収益性、流動性の3つのバランスを考える必要があるとお伝えしました。

酒井:銀行預金は安全性や流動性は高いけど、収益性がほとんどない。一方で、株式投資は収益性と流動性(現金化のしやすさ)はあるけど、元本割れするリスクもあると。それで、3つの基準がすべて二重丸の金融商品なんてない、ってことでしたよね?

塚本:おっしゃる通り。特に、安全性と収益性に関しては相反する部分があり、「ローリスク」な商品は「ローリターン」、「ハイリターン」をうたう商品なら「ハイリスク」と覚えてください。

有野:ローリスクでハイリターンなものはないってことか。低予算の単館上映の映画が当たった「カメラを止めるな!」みたいなパターンは少ない。何億円もかけて作る「アベンジャーズ」シリーズみたいな映画はハイリターン狙いやけど、転けたらどうしようのハイリスクでもあるって事やもんなぁ。確かに、ローリスクでハイリターン確定な商品があったら、みんな買ってますよね。いや、みんなより先にトレーダーが絶対買ってるわ。んで、みんなが買いに来た頃には売られるねん。チキショー!

酒井:はいはい、空想で腹立てないで下さい。先生、続きをお願いします。

塚本:時折、高いリターンに目がくらんでしまった投資詐欺がニュースになりますが、「元本保証」かつ「ハイリターン」をうたっている商品があれば、まず疑ったほうがいいでしょう。

酒井:3つの特徴がわかっていれば、そういう話を聞いたら「おかしいぞ?」って思いますもんね。

塚本:生活や近い将来必要な出費は、安全性と流動性が大事になるので、やはり預貯金が中心。それらを差し引いた長期でおいておける資金を資産運用に振り分けることになります。その資金をどう振り分けるかについては、自分がどの程度のリスクを取ってリターンを求めるかによって大きく変わるでしょう。

株主や個人投資家の質問に答えてくれる企業も

有野:そういえば昔、「株主優待」を狙おうと思ったことがあります。株主優待本買って「飛行機に安く乗れるんや」とか、いろいろ調べたけど、見てるだけでお腹いっぱいになってきて、実際には買わへんかったけど。

酒井:私も、株主優待に憧れたことがあります! 雑誌とかで「株主優待ライフ」なんて特集されてるのを見ると、すごく楽しそうで。

塚本:株式投資は「その会社の成長のために資金を投じて、成長の恩恵を還元してもらう」のが本来の目的です。株主優待がある銘柄だからといって、必ずしもその会社が成長して利益を出しているということではないので、本来の目的からは少し外れます。

有野:なるほど! 投資して欲しい会社が無理してすごい優待を配ってるかもしれへんしな。先にハイリターンを配って、「投資いっぱいされるぞー」って、蓋あけたらハイリスク待ちのはずがローリスクで。あら、これってローリスクハイリターンで一番儲けるやつや、でも会社は傾いてる。先生、この例えどこで間違えたんですかね?

酒井:先生、続けてください。

塚本:やはり会社の業績が着実に伸びそうな企業に投資をしたいところですが、株式投資に触れるきっかけとしては株主優待もいいかもしれませんね。

酒井:でも、その会社が利益をだしているかどうか、どうやって見極めたらいいんですか?

有野:その会社に「おたく、儲かってまっか~」って、電話で聞けばいいんちゃう?「全然、儲かってまへんねん」はホンマに儲かってないねん。逆に「ぼちぼちでんなー」て言う会社は儲かってる場合もあるし、言いたくないから、定型文として言うてる場合もあるねん。

酒井:それで「儲かってますよ~」なんて答えが返ってきたら、逆に不安になりますよ(笑)

有野:株式投資って難しいよね〜。

酒井:有野さんが難しくさせてるんです(笑)

塚本:上場企業には、株主に対して業績やビジネスの現況などを報告する義務があります。企業IR(株主や投資家向けの活動)にきちんと取り組んでいる企業であれば、そうした問い合わせにも1つ1つ応じてくれる可能性かもしれません。実際、企業に直接問い合わせる個人投資家も少なくありません。

有野:何かしらで揉めてる会社の株主総会とかに行った人が、「全然説明がわからへんかった」とか言ってるのがニュースになってる、あの感じってことですか! 思い出した。テレビ局で社長が代わって初めての株主総会が終わって、演出家がごっそり移動させられて、株価は上がったけど視聴率やら評判がすげー下がって、3年くらいで全部戻したりしたのもあったなー。でもそうか、ニュースになってない、揉めてない会社も定期的に株主総会やってるんや。まぁでも、そっちの方が多いのか。

塚本:ただ、個人でさまざまな情報を収集したり、分析するのはかなり大変。やはり初心者の方は、投資信託という形でプロに任せてしまうのがやりやすい方法です。

有野:ここでも出た、投資信託! でも、顔も知らん人にお金を預けるわけでしょ? 大丈夫なんですか、それ。

酒井:有野さん、山中先生の授業の時と全く同じリアクションしてますよ(笑)

「お金がないから投資できない」は言い訳にならない

塚本:投資信託と一口にいってもさまざまな種類があって、全部でおよそ6,000本くらいあります。数だけでいうと、株式の個別銘柄より多いんです。

有野:えぇ~っ、そんなにあるんですか!? だったら余計に選べへんやん! 誰かプロの方にお願いしたいなぁ。

酒井:それが投資信託ですよ。でも先生、私も何を買えばいいのかわからなくなりそうです……。

塚本:そこはご安心を。その中でも、最初は大きな株価指数に連動する「インデックスファンド」で、全世界の企業に幅広く投資する「全世界株式型」を選べばOKです。

酒井:「インデックス」ってなんですか?

有野:昔あったゲーム会社やな。アトラスって言う方が分かりやすいかもしれんけど、インデックスは「女神転生」シリーズとか「ペルソナ」シリーズのアトラスっちゅうゲーム会社を買収したりしてたんやけど、10年前くらいに破産してしまったんや。でも、アトラスはセガ傘下になって復活して、いまでも「女神転生」シリーズとか「ペルソナ」シリーズは新作が出てんねん。でも、僕的にアトラスで好きなソフトはPCエンジンで出てた「メソポタミア」やね。主人公がバネのアクションゲームやねん。ビヨンビヨン上にも下にも壁にも張り付いて、移動しながら敵をやっつける……そのメソポタミアを含むファンドやね。

酒井:……絶対に違うと思います(笑) 先生、お願いします。

塚本:インデックスとは、複数の銘柄の株価の合計から算出される「株価指数」のことです。対象となる指数が上下に動けば、そのインデックスファンドも同じように上がったり下がったりします。日本では、「日経平均株価」や「TOPIX」が代表的な株価指数ですね。

有野:日経平均株価なら聞いたことあります、日本の企業の株価の平均ってことですよね? ネタ見せ番組だと、どの芸人のネタが一番視聴率とれたかじゃなくて、番組の平均視聴率で評価されるって感じか。その株価指数と同じように動くってことは、上場企業の株を全部買えばいいけど、自分で買うのとものすごいお金が必要になるから無理やし。あ、それがファンドだったら同じことが少額でできるってことですね。

塚本:日経平均は日経新聞が選んだ225銘柄の株価の平均、TOPIXは東証に上場している全企業の株価の合計を元に割り出された株価指数です。ただ、いまは日本の経済成長が停滞しているので、成長の期待度が高い「全世界型株式」、または「米国株式」が人気ですね。

酒井:全世界!? なんだかお金持ちになったみたい。

塚本:それも、投資信託のメリットの1つなんですよ。個別で全での株を買うとなると、とてつもない資金が必要になりますが、投資信託なら100円から買うことができるものもあります。

有野:100円ですか? 大きな会社の一株なんて買われへんけど、みんなが100円ずつ持ち寄ったら買えて、儲けたらまたみんなで分けるって考え方ですかね。そう考えたら、意外と安く買えるんですね。個人個人は100円のローリスクやけど、集まったらハイリスクでハイリターンやけど、分けてるからローリターン、それも堅実なローリターン。知らんかったなー。

塚本:ですから、「お金がないから買えない」というのは投資をしない言い訳になりません。投資信託の中には内容が似通っているものもありますが、その場合は、投資信託の規模と手数料を比べて、規模が100億円以上で、手数料(信託報酬)が0.3%以下のものがベター。

有野:なるほどね、流行ってる人気者やから手を出すんじゃなくって、信頼と実績のあるたけしさんとかさんまさんみたいな、長く活躍する人にみんなでついていけば間違いなし、ってことか。

酒井:100円でいいなら、気軽に始めることができそうですね。全世界に投資できるっていうのも面白そうで、投資信託にどんどん興味がわいてきました!

有野:そうやな、まずは投資のプロの顔写真を検索しよう。

酒井:顔の話ばっかりじゃないですか(笑)

次回(2月28日配信予定)は「長期・積立・分散」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

酒井瞳
1989年5月3日生まれ。宮崎県出身。2008年4月に女性アイドルグループ「アイドリング!!!」に14号として加入し、2015年10月に卒業。その後は地元・宮崎県に関わる活動や、テレビやドラマ、YouTubeなど活動の幅を広げている。2022年2月よりジムでパーソナルトレーナーを開始。また、同年に故郷の宮崎県延岡観光大使に就任。 アイドル専用ジム「iウェルネス」ではトレーナーとしても活動している。

塚本俊太郎
金融教育家、日本CFA協会執行理事。1994年、慶應義塾大学総合政策学部卒、97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論修士。同年、UBS信託銀行に入行し、債券運用部ファンドマネジャーを務める。02年以降、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ(現ブラックロック・ジャパン)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど外資系運用会社にてストラテジストや投資戦略部長などを歴任。20年、金融庁に入庁し、金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や、小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在はフリーランスの金融教育家として金融リテラシーや資産形成について発信・寄稿・講演を行う。また、金融教育プログラム構築に関するコンサルティングも実施している。Eテレ「趣味どきっ!」に3月1日(水)21:30から「金育」をテーマに4週に渡り出演。著書『今日から楽しむ“金育” 』(NHK出版)が2月22日(水)発売。

ライター:新井奈央 / 写真:文化工房

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