外国人に人気の宿坊(temple stay)とは?山梨身延の覚林坊で仏教と伝統を体感しよう

外国人に大人気のリアルジャパンが体験できる”覚林坊”

宿坊(temple stay)・覚林坊は、日蓮宗総本山である身延山久遠寺に修行に来る僧侶の宿泊施設として開かれました。しかし、次第に久遠寺の参拝者も泊まれるようになり、現在では、山梨身延に観光に訪れる人や、外国人の宿泊の受け入れも行っています。

日本の一般的な宿坊(temple stay)は、基本的には参拝のための宿泊施設であるため、サービスや設備等は簡素なものが多いことが一般的です。しかし、覚林坊は来る人にあたたかなホスピタリティと利便性の高い設備、プライベート性が保たれた空間を提供しています。また、夢窓国師が手掛けた日本庭園や、桜時期にはお花見ができる桜寺栖(Sakura Terrace)など、身延の豊かな自然を五感で感じられる空間が広がっており、滞在中はその快適さや心地よさに宿坊(temple stay)であることを忘れてしまうかもしれません。

そんな覚林坊には、身延の伝統と歴史を体感できる様々なアクティビティが数多く用意されており、宿泊する人に忘れられない思い出を残す宿として、外国人を始め、多くの人から支持を集めています。

その人気のヒミツはアクティビティのコンセプトである「リアルジャパン」。仏教という歴史・伝統・工芸など人の営みが集積されてきたこの地だからこそ体験できる数珠ブレスレットづくりや写経などの仏教体験、また日本の伝統文化を感じるお祭り体験や日本人でも珍しい結婚式の着付け体験など、日本の風土や暮らしをリアルに感じることができます。また、身延山久遠寺からほど近い場所にあり、宿泊中は早朝の鐘撞きや勤行体験、お寺の本堂でのヨガ体験など、仏教の歴史が深く根付く山梨身延ならではの体験は、訪れた人にとって忘れられない「リアルジャパン」体験となることでしょう。

覚林坊と名物女将

山梨県の南部にある身延山久遠寺は、鎌倉時代に日蓮聖人によって開かれました。以降、日本の仏教の宗派のひとつである日蓮宗の総本山として、多くの人が参拝に訪れています。また、身延山久遠寺は修行のお寺としても有名で、周囲には修行僧の宿泊施設である宿坊(temple stay)が数多くあります。そして覚林坊も、そうした宿坊(temple stay)のひとつです。

覚林坊は、正式名を「行学院覚林坊」といい、今からおよそ550年前、身延山久遠寺の第11代法主である行学院日朝大上人により、塔頭寺院としてその歴史が始まりました。その祖なる日朝大上人は、61歳の時に失明し、67歳の時に法華経の信者が眼病で苦しまないよう「眼病消滅本尊」をまとめました。それ以来、「目の神様」や「学業の神様」としても知られるようになり、覚林坊にある日朝上人をお祭りしている日朝堂には、今も多くの人が参拝に訪れています。現在は、42世の大黒・樋口純子氏が女将となり、副住職の樋口是皐氏と宿坊(temple stay)・覚林坊としてさまざまな試みにチャレンジしています。

そんな彼女は、訪れたお客様やリピーターから「ジュンコさん!」と慕われています。彼女は大学卒業後、すぐに覚林坊に嫁いできました。覚林坊に嫁いだ当初、身延町は多くの修行僧や参拝者で賑わっていましたが、2000年以降になるとその数は減少し、身延の宿場町全体に活気がなくなってしまったのだそう。「覚林坊の女将さん」として自身を守り子供たちを育んでくれた町が、次第に寂しくなっていく様子に切なさを感じた純子さん。一念発起して、覚林坊を中心に身延に賑わいを取り戻そうと、さまざまな取り組みを始めました。

すると、次第に参拝者だけでなく、日本人観光客や外国人の方の姿も増え、宿は徐々に賑わいを取り戻していきました。女将やスタッフの熱い想いとホスピタリティは、多くのリピーターも産み、評判が評判を呼んで、いまや世界中から覚林坊を目指す外国人がいるほどの宿泊施設へと進化を遂げたのです。2019年の新型コロナウィルスの影響で、一時期外国人観光客の姿は少なくなってしまいましたが、その間も樋口女将はさまざまな企画やイベントを精力的に提案・実施し、身延地域を盛り上げています。

施設紹介とヴィーガンやコーシャにも優しい大人気の精進料理

覚林坊は宿泊だけでなく、ランチやお食事場所として気軽に利用することもできます。特に人気なのが、覚林坊自慢の庭園を眺めながらいただく「おてらんち」です。「おてらんち」とは、「お寺」と「ランチ」を組み合わせた覚林坊オリジナルのランチメニューのことで、身延地方の特産であるあけぼの大豆をはじめ、身延や山梨の食材を使った精進料理をベースとしたお料理がワンプレートになって提供されます。

山梨身延地方の在来種であるあけぼの大豆は、通常の大豆の2倍ほどの大きさであり、甘みも強くふっくらとした食感が特徴です。この特徴を生かして作られているのが、覚林坊自家製の納豆です。ふっくらと甘みのある大粒の納豆は、独特の臭いもなく、外国人からも人気を集めているのだそう。また、日蓮聖人のために弟子が作ったとされる湯葉も身延の名物のひとつ。

豆本来の甘みを感じながら、わさび醤油などでいただく湯葉は、ベジタリアンの人でも安心して食べられるとして人気のメニューです。デザートは、4種のフルーツのコンフィチュールがついた豆乳ソフトクリーム。コンフィチュールは、自然豊かな山梨県産のフルーツの中でも、農家の廃棄フルーツを活用し、色とりどりの味わいを楽しみながら資源の有効活用にも貢献できます

また、料理と一緒にぜひ味わってもらいたいのが地元のドリンクやお酒。覚林坊では山梨県産の甲州ワインをはじめ、オリジナルビールもおすすめです。その名も「寺(じ)ビール」というユニークな名前がつけられた覚林坊オリジナルビールは、女将の純子さんの熱い想いから作られました。「身延の町に賑わいを作りたい!」一心で開発された寺ビールは、味にもこだわり、軽やかで飲みやすい口当たりが特徴で、身延の新たな名物になりつつあります。

寺ビールの飲み方で特におすすめなのが、覚林坊自家製のコンフィチュールと合わせていただくフルーツ味のビール。ジューシーなフルーツコンフィチュールと、軽やかなビールとの相性は抜群で、フルーツが豊富な山梨ならではの味わいが楽しめます。なお、一番人気はすもも寺ビールなので、ぜひ試してみてくださいね。

もうすぐ身延は桜に囲まれるベストシーズンです。訪れる人に身延の文化や伝統、気候を感じられる体験を数多く提供する宿坊(temple stay)・覚林坊。ぜひ、山梨県の身延を訪れた際には、覚林坊でリアルジャパンを体感してみてください。

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