流行ではなく“原点”として捉えたいランドローバー「ディフェンダー」

時代を反映した旬の一台を選びたい人にとって、今ほど難しいタイミングはないかもしれない。クルマの動力源に着目しても内燃機モデルやハイブリッド、ピュアEVといったさまざまな選択肢が存在している。一方で、社会情勢に絡んだ燃料をはじめとする物価の高騰、そして環境問題に対する意識が年々高まっているという背景もある。

そんな混沌とした時代のクルマ選びに関して正解めいたことを言うのであれば、コレと決めた一台に長く乗ることかもしれない。そのためには色褪せないクルマを選ぶ必要がある。言い換えれば、虚飾のない極めて本質的な一台を選び抜く、ということになるだろう。

2019年にフルモデルチェンジしたランドローバーの新型「ディフェンダー」。イギリスが誇る武骨なSUVが今回のテーマに符合する一台に違いない。もともと荒れ地を走り回るオフローダーとしてデビューし、戦後のイギリス人の日常生活、主にカントリーライフを支えてきたランドローバーの原種だ。新型に生まれ変わってもなお、このタフなワークフォースのコンセプトは機能一辺倒といっていい。近年、輸入されているモデルの中では最も「ギア」と呼ぶにふさわしいキャラクターの持ち主だ。

直線と平面を基調に構成されたすっきりとしたプロダクトデザインと、最新のランドローバーらしい、走るステージを選ばないオールマイティな走行性能により、新型ディフェンダーは世界中で売れまくっている。と言うと、街中やゴルフ場の駐車場で頻繁に出くわしてしまいそうだが、実際にはそこまで数多く見かけるわけではない、ちょうどいい規模感もディフェンダーの魅力に拍車をかけている。

1948年のデビュー以来、2ドアの90（ナインティ）と4ドアの110（ワンテン）という2種類のバリエーションで展開されてきたが、昨年6月、110のリアオーバーハングを延長したロングボディ130（ワンサーティ）が追加された。機動性が高いコンパクトな90から、3列シート＋余裕のラゲッジスペースを備えた130まで選べる幅の広さが他のモデルにはない特徴といえる。

これまでのモデルは、デビューから基本構造を一切変えず、操作感の重い、本当の意味で武骨なオフローダーだったが、新型は違う。ディフェンダーのために新造されたプラットフォームにより、タフなだけでなく軽快なドライブフィールが実現し、街乗りでもまったくストレスがないのだ。

例えばランドローバーのプレミアムモデルである「レンジローバー」や「レンジローバーイヴォーク」と比べてもはっきりと違う。重量感が豪奢な雰囲気を演出してくれるレンジローバー系に対し、ディフェンダーは細い四肢で立つ馬のような感覚で、車高こそ高いがスポーツカーライクなキャラクターも秘めている。

現在は直4ガソリン、直6ディーゼルMHEVという2種類のパワートレインが導入されているが、本国ではV8やプラグインハイブリッドモデルも登場しており、将来的には同じプラットフォームを利用したピュアEVモデルも登場すると宣言されている。パワートレインだけに着目すると、いつが買いのタイミングか迷ってしまいそうなのだが、その魅力はランドローバーの伝統を受け継いだスタイリングや、飾り気のない本質的な室内の印象、使い勝手の良さといった部分にある。つまり、現在市場に出回っている新型ディフェンダーを手に入れて、これから10年以上乗ったところで、その魅力が色褪せることはないということだ。