映画『ワース 命の値段』2/23(木・祝)日本全国公開(試写会でトークしました)

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

© 2020 WILW Holdings LLC

2001年9月11日、アメリカ各地で発生した同時多発テロ。

被害者遺族7000人を救うため、命に値段をつけるという難題と闘った弁護士の実話『ワース命の値段』。2月23日(木)、いよいよ日本全国で公開される。

筆者はオンライン試写で一足先に観せてもらい、またニューヨークの世界貿易センター跡地(グラウンドゼロ)で毎年遺族に取材をしていることで、今月15日東京・神楽座で行われた試写会でトークイベントにオンラインで登壇させてもらった。

トーク内容を考えている時、これまでお会いした遺族や、あの日をニューヨークで生き延びたニューヨーカーにお聞きした話や記憶を紐解いていった。

改めてこの同時多発テロの犠牲者2977人(日本人24人)について考えてみた。私たちは犠牲者を普段「数字の塊」で考えがちだが、この一人一人は一つ一つの命があり、あの日までそれぞれの人生を歩んでいた。

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「一人一人の命に値段がつけられるのか?」

テーマがテーマだけに重く感じる部分もあったが、「人の命の値段」という考えもしなかったことを突きつけられた映画だった。

この映画を観て改めて思ったのは、誠意の大切さだ。最後に人を動かすのは誠意なのだということ。

さらに私は、遺族との取材を通して決めたことがある。彼らは「また後でね」で大切な人と別れている。その話を聞いて、私は「自分の人生で大切な人とは喧嘩をしたまま別れない」ということを決めたのだった。

そんなことを思い出しながら、犠牲者の命に値段を付けるというのはなかなかの難題だったなぁとも改めて思った。値段をつけられる側の心情も複雑だ。

ただ、セリフでもあったように「前に進むために」そうしなければならないことが世の中にはたくさんある。

9.11というと、遠い世界での出来事のように感じるかもしれないが、日本でも人それぞれのケースや事情で意見が分かれることがある。最近では国葬の是非やマスクをするかしないかなどだ。そして前に進むためには誰かがリードしていかないといけない。日本人もさまざまなシーンで「自分なら?」と問い「自分ごと」として考えることができる映画だ。

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『ワース命の値段』が2月23日(木・祝) TOHOシネマズシャンテほか全国公開

監督:サラ・コランジェロ、脚本:マックス・ボレンスタイン、出演:マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチ、エイミー・ライアン

2019年/アメリカ/英語/118分/シネスコ/カラー/5.1ch/原題:WORTH/日本語字幕:髙内朝子提供:ギャガ、ロングライド 配給:ロングライド

Text by Kasumi Abe 無断転載禁止

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