確定申告しないと罰則はある?申告が必要な人と、していなかった時の対処法を税理士が解説

確定申告の時期に突入しました。税金の仕組みと確定申告が何なのかを知ることで、税金が戻ってくるチャンスを逃さず申告できますが、「そうなの、関係ないから知らなかったよ」ですって?

なんて……嘆かわしい!

毎年申告をおこなっている方は「キタキタ!」「大変だな」など、いろいろ思いながら立ち向かうでしょうが、日本人の9割が確定申告の必要がない給与収入や年金の受け取りのみという方です。「確定申告ってよく聞くけど何?」「何のためにやっているの?」という方ばかりです。

いまや副業が当たり前の時代になってきているものの、副業に関する税の手続きを知らない方も多いですね。「副業を始めたけど自分には申告が必要なの?」「ちゃんとしなかったらどうなるの?」そんなことも含めて、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが確定申告の基本について解説します。


確定申告って何が確定するの?

世にいう確定申告とはズバリ「所得税の金額」を確定させるための申告です。

給与収入がある方にとって、お馴染みの手続きとして「年末調整」がありますが、これは会社が把握している「給与収入」のみから所得税の計算をして、その人の給与収入に関する所得税の計算をして税務署に報告をしてくれます。給与収入しかない方は、この手続きだけで所得税の金額が確定しているので、所得税の手続きはこれでおしまい。つまり、11月ごろに会社に年末調整の用紙3枚ほどを提出するだけで、所得税が確定しています。

しかし、副業やアルバイトなどの収入が一定以上あり申告が必要な方などは、年末調整だけでは所得税の計算は完結できません。年末調整の情報から作成してもらった「源泉徴収票」という、1年分の給与金額や所得税の計算プロセスが記載された書類をみて、さらに「確定申告」を税務署に提出しなければなりません。

例えば、会社の給与とは別で副業をされている場合は、副業の収入と支出(経費)は誰も集計してくれません。自分で売上帳(売上集計表)を作成したり、レシートや領収証を集めて経費を集計したり、収入から支出を差し引いた儲け分の計算をする必要があります。

この副業の儲け分と会社からもらった源泉徴収票の内容を合わせて、自分の所得税の計算を「確定申告書」で行って、税務署に提出するということです。

ただし、儲けが少額の場合は申告を受け付けないようにする申告不要制度があります。後述しますが、この申告不要制度は国税である「所得税」での申告不要であり、住んでいる地域に納める「住民税」についてはこの申告不要制度はありません。自治体によってルールが異なりますので、お住みの自治体のルールをご確認ください。

給与所得がある場合、確定申告が必要となるのは、ざっくりいうとまずは「課税される所得金額から控除を引いて税率をかけて税金を計算した結果から、住宅ローン控除を引いた後、納付する税額が残る方」となります。

具体的な金額を挙げて解説すると、課税される所得金額が48万円以下の方は所得税の確定申告をしなくていいということです。「課税される所得金額」というのは税金がかかる儲けの金額ということです。儲けに該当する「所得金額」から「所得控除」を引いて計算します。

課税される所得金額 = 所得金額(儲け)の合計 ― 所得控除

事業所得や不動産所得、雑所得など、経費をマイナスすることが認められている所得もありますが、給与所得の場合は「使った経費」という概念がないので、一定の計算式に当てはめて「給与所得控除」という金額を引いて「給与所得控除後の金額」を求めます。これが、経費を引いた後の所得にあたる金額となります。源泉徴収票の左から2番目に記載されている「給与所得控除後の金額」に、実際の金額が記載されています。

所得税では、申告する全ての人に対して48万円の「基礎控除」という税を計算する時に、儲けから必ず引いてくれる控除があります。所得控除は必ずこの48万円は全員ありますので、所得金額の合計が48万円以下なら、必ず課税される所得金額は0円になるので、所得税額も0円になる、ということです。

さらに、48万円やその他の所得控除(生命保険料控除や社会保険料控除など)を引いて、残った金額に税率をかけて税額が出た場合は、年末調整の時に「税額控除」として引いてもらった住宅ローン控除を引いた金額が1円でもあれば提出が必要になります。

さらに、給与の年間の収入金額で2,000万円を超える方は年末調整の対象外となっていますので、自分で確定申告が必要になります。また、給与での勤め先が1か所のみでその給与が年末調整で精算済みの方は、副業などの所得金額(儲け)が20万円以上なら申告が必要となります。例えば、100万円入ってきて80万円経費を使ったら、儲けは20万円です。入ってきたお金から出ていったお金を差し引いて、残りが20万円を超えたら申告してください。

また、2か所以上から給与をもらっているケースでは、その給与の全てが源泉徴収の対象(儲けが20万円以上)となる場合、年末調整はメインとなる1か所でしかしてくれませんので、申告が必要となります。

その他にも申告が必要となるケースがありますので、詳細は国税庁「確定申告が必要な方」をご確認ください。

ただし、これらに該当せず「申告しなくてOK」という場合でも、それは国税である「所得税」についてです。住んでいる地域に納める「住民税」はこのような申告しなくてOKの特別ルールがありません。所得税の申告をしなかった場合も、必ずお住まいの自治体に住民税の申告についてどのような手続きが必要かを問い合わせてください。

申告しないとどうなる?

所得税法では毎年1月1日から12月31日までの1年間で儲かった金額について、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納付しなさいというルールになっています。

確定申告の提出期限である3月15日までに提出できず、期限を過ぎて提出する確定申告のことを「期限後申告」と言います。期限後の申告をして納付税額があるときは、通常納める税金のほかに「無申告加算税」がプラスで課されます。

うっかり期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告しましょう。自主的に気づいて自ら提出した場合と、自主的に提出する前に「あなた提出していませんね」と指摘を受けてしまった場合で「無申告加算税」の金額が違ってきます。

無申告加算税は原則、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で計算されます。しかし、自主的に気づいて自ら申告書を提出すると、これが5%の割合に減額されます。

「今出そうと思ったのに〜」という小学生のような言い訳は通用しません。申告忘れに気づいたら、とにかく早く、指摘される前に申告しましょう。指摘されて高い無申告加算税を取られては、「なんて……嘆かわしい!」ですよ。

それだけではありません。

「無申告加算税」は、申告しなかったことに対するペナルティですが、それとは別に遅れて納付してしまった利息分のような「延滞税」というペナルティもかかります。税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。ダブルの罰金、さらに嘆かわしい!

確定申告をしていないことに気づいた……どうすればいい?

確定申告が必要なのに、まだしていなかった方は慌てずに、すぐ申告書を出しましょう。国税庁「確定申告書等作成コーナー」から、過去5年分の申告が可能です。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

マイナンバーカードがあれば電子申告することもできますし、印刷して税務署に出すことも可能です。申告忘れに気づいたら、とにかく言われる前に早く出しましょう!


なお、悪質な無申告については、さらに重い無申告加算税を課すべきということで、令和5年度での税制改正が検討されています。令和6年以降で無申告が見つかった場合、300万円を超える部分は税額に対して30%にアップして追加されます。

「税のこと知りませんでした」
「うっかりしていました〜」

そんな言い訳は通じません。所得税確定申告の締め切りは、翌年の3月15日です。「なんて……嘆かわしい!」とならないよう、申告期限の間に正しく申告したいものですね。

© 株式会社マネーフォワード