生き方や価値観がしっくりこない…「40歳の壁」にぶつかる理由とは?

キャリアやライフプランの方向性が定まってくるアラフォー世代。しかし、残りの人生も今の積み重ねでいいのか……と感じている方もいるのではないでしょうか?

そこで、「ワーママはる」こと尾石 晴( @wa_mamaharu )氏の著書『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、一部を抜粋・編集して40歳の壁について解説します。


人生100年時代、誰もが壁にぶつかる

「人生100年時代」。最近あらゆるところでこの言葉を耳にしますね。

一昔前は「学業→仕事→老後→寿命」というライフモデルが一般的でした。現在の高齢者(私の両親世代)は、終身雇用制度の時代(解雇リスクがない)の人ですから、40歳でもぶっちゃけ残り20年をどうにか乗り切れば、退職金をもらって優雅な老後を過ごすことができました。

「40歳の壁」を感じてモヤモヤしたとしても、現状をキープしていれば、不利益を被ることも特になし。とりあえず、「このままでいいや」とやり過ごしていた人も多かったのではと思います。

ところが、私たちが生きているのは、人生100年時代です。65歳で定年しても、あと35年も生きる可能性があり、社会も「できるだけ長く働いてね!」という方向に変わってきています。

人生100年時代は、人生が長い分、多くの人がさまざまな壁にぶち当たります。

特に、中堅といわれるアラフォー世代は、まだ方向転換ができる年齢です。50歳なら「定年まで10年ちょっと。それなら、なんとかここでがんばる方法を考えよう……」となるかもしれませんが、40歳だと「あと20 数年か……。仕事や住む場所を変えることもまだできる。どうする!?私!?」と迷うこともできる。

それゆえ「壁」を見て見ぬフリをせず、受け止めて惑う人が多くいるのではないでしょうか。

「まだ、これからの道を選び直すことができるかも」という期待と、「選んで失敗すると積み上げてきたものが消えてしまうのでは」という不安が入り交じる分岐点。そこに立ちはだかるのが「40歳の壁」です。

多くの人が、その壁の前で右往左往していますが、ロールモデルのいない未知の世界なので、手探りで進むしかありません。

「40歳の壁」は早くぶつかるが勝ち

人生100年時代となれば、40歳でもここからあと60年くらい生きなければなりません。誰もがどこかでキャリアの転機を迎えます。

私は出産をしたことで、この転機の足音が30代から少しずつ聞こえてきました。そのときは、自分を会社に合わせていくことで乗り切れたのですが、子どもが2人になり、自分も少しずつ年を取り、本格的な転機は40歳直前に来たと感じています。

人によっては、30代で早めの転機を選択する人もいれば、40代後半で転機を迎える人もいると思います。ただ、共通していえるのが、 キャリアの転機のタイミングが65歳(定年)で来るより、アラフォー(「40歳の壁」にぶつかる時期)で来るほうが格段に良いということです。 体力も知力もある40歳で気づけた人は、逆にラッキーなのではないかと思います。

「40歳の壁」は、本気で自分の人生を考え直すための「当事者意識」を与えてくれます。50代だと少し遅い(もっと前に一度ぶつかっていたよね!?)、20代ではまだ早い(社会の知見がまだ少なく、ライフイベントもこれから)。

「体力がある」「知力がある」「うまくいかなくてもやり直せる」、この3点がそろうのは「40歳±5歳」ではないでしょうか。

自分の不安・不満や、足りないところを見ずにやり過ごそうと思えば、いろいろな言い訳ができます。

「日々の生活が忙しいから」

「とりあえず生活はできているから」

「みんなやっていないから」

しかし、そこで「40歳の壁」の存在に気づき、立ち止まったり、登ったり、すり抜けたりして、自分の価値観と対峙した人は強いものです。

「壁」と真摯に向き合った経験や悩んだ過去は、必ず自分の身を助けてくれます。その後も「自分の人生をどうしたいのか」「キャリアをどうしたいのか」を自問自答し、情報をキャッチしながら、主体的に人生を生きられるはず。

周りを見渡すと、60代、70代で有意義な人生を送っている憧れの先輩たちは、みんなキャリアの転機から逃げなかった人です( 40 代で退職して移住した先輩、60代でも仕事をしている母、70代でヨガを楽しむ生徒さん)。

「40歳の壁」は、人生100年時代を生きる私たちが人生をシフトする(人生の方向や位置を変えていく)ベストなタイミングだと思えば、ちょっと勇気が湧いてきませんか? 早く気づけて良かった!

第二の職業人生をどう歩むか

アメリカの44歳から70歳までの3100万人以上が、個人的なやりがい、継続的な収入、社会的な影響力を兼ね備えた第二のキャリアを歩みたいと考えているそうです(『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス著、千葉敏生訳、早川書房刊より)。

人生100年時代の今は、誰もが必ず「40歳の壁」(もしくは壁もどき)にぶつかります。 そして、その「40歳の壁」と向かい合うとき、「第二の職業人生を考える」という課題も一緒についてきます。

なぜなら、「残りの人生」を考えたとき、24時間から睡眠や食事などの生活時間を除くと、仕事の時間はもっとも長いものだからです。40歳以降の自分がどうありたいかを考えるとき、職業の影響は大きいですよね。また、職業的自立は経済的自立につながるため、重要なファクターでもあります。

定年まで、この仕事で食べていけるのか?定年を迎えた後はどうするのか?同じ職種、職能だけでは限界や飽きも感じるし、定年後のためにせっせと貯金をしたり、保険に入ったりして、それらを切り崩しながら乗り切るのも心もとない。

これから来る自分の老いや衰えていく体力・気力と折り合うものでないと継続できないし、やりがいを持ち続けられるのか、働き続けたいと思えるのか、不安は尽きない。それらが今の仕事の延長線上にあるとは、とても思えない……。

アラフォーになって、私も「40歳の壁」を意識するようになり、第二の職業人生までを視野に入れ、自分の人生の「あり方」を考えることが増えていきました。

「40歳の壁」にぶつかるもう1つの理由

ケインズという有名な経済学者がいます。彼は、論文でこんなことを書いています。

将来、技術の発展によって、人のほしい物はすべてつくられ、人の仕事がなくなる時代が来る。しかし、社会システムによって、人間は長年仕事をするようにしつけられてきている。そのため、凡人ほど「暇な時間をどう使うか」に困るようになる。

これが書かれたのは、なんと1930年。「え!現代じゃないの!?」と思いませんでしたか?ケインズがいうところの「人がすることがなくなる時代」がすでに到来しているように感じます。

さらに、ケインズは、この「人がすることがなくなる時代」を「2030年」としていました。皆さんはどう思いますか?2030年まで待たなくても、もうその予兆を感じませんか?

たとえば、スマホの代表であるiPhoneが発売されたとき、世界中の人がどよめきました。これまでの携帯電話と全然違う!大きな革命でした。

その後、多くのメーカーがスマホ市場に参入して、毎年さまざまなスマホの新機種発表を繰り返しています。もはや「どこを改良したの?」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。

日本の白物家電もそうですね。多くのモノやコトも、0を1にする時代は、ほぼ終わりが来ている。こねくり回して、100を101にすることに労力が使われています。

こういった現象を見るたびに、ケインズ先生(敬意を表して先生)に問われている気分になります。

・あなたは、その仕事にやりがいを感じているか?(入社当時はやりがいのある仕事だったとしても、今は惰性でやっていないか?)

・その仕事は、価値を生み出しているか?(社会的に意義のある仕事なのか?わが社の製品で世の中が良くなるのか?子どもに誇りを持って説明できる仕事なのか?)

・未来の自分のためになる仕事なのか?(社内調整スキルは抜群だけど、専門職でもない。会社にいる分には問題ないけど……)

ちなみに、ケインズ先生は、「最終的に人は週15時間労働になる」「1つの仕事をみんなで分け合う時代が来る」とも述べています。

現在、多くの人が「40歳の壁」を感じてる理由は、「人生100年時代」だけではありません。もう1つの理由は、私たちの働き方に限界が来ているから、ともいえます。

あなたは、毎日時間を費やしている仕事に、やりがいや社会的意義を感じていますか?コロナ禍にリモートワークになって、「別に会社に行かなくていいじゃん」「意外とやること少ないじゃん」と気づいた人はいませんか?いるよね?いる。なんとなくやってきたけど、実は手応えがないことにうっすら気づき始めている人、きっといるはずです。

ケインズ先生になったつもりで、自分に問うてみます。

・もし週に15時間しか働かないなら、今やっている仕事で何を残したいか?

・不要だと思っていること、減らしたいことは何か?

・自分のキャリアにつながる仕事ができているか?

・これからも1つの仕事で生きていくのか?

・どんな人生を生きていきたいのか?

立ち止まった「ここ」から、すでにあなたの変化は始まっています。人生の後半戦をどう過ごすのか? ある程度の仕事スキルや武器を手に入れたアラフォーだからこそ、良い変化につなげたいですよね。

個人的には、 人生の後半戦こそ、主体的に幸せを感じることを追求してみる、やりがいを感じる仕事を選んでいくことが大切だと考えています。 そうすれば、ケインズ先生のいう「凡人」ではなくなり、充実した第二の職業人生を歩めるのかもしれません。

「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略

著者:尾石晴(ワーママはる)
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