若い世代ほどLGBTの権利保護に理解ある傾向…20代が語る、LGBT理解増進法と同性婚

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月15日(水)放送の「ニュースFLASH」では、“LGBT理解増進法”に関する報道を取り上げ、議論しました。

◆LGBT理解増進法は根本的な解決にはならない!?

LGBTなど性的少数者に対する元総理秘書官の差別発言を受け、当事者や支援者が2月14日に国会内で緊急集会を開き、与野党で議論が続く「LGBT理解増進法」では「状況が変わらない」と新たな差別禁止法の制定を求めました。

さらには差別禁止に加え、婚姻の平等などの人権保障のための法整備が必要だと強調。性的少数者支援団体「fair」の松岡代表理事は「LGBT理解増進法では具体的に起きている差別的取り扱いに対処することはできない」、「当事者の困難を置き去りにし、理解増進などとお茶を濁してごまかさないでほしい」と訴えています。

この件に関し、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、松岡代表理事の言葉に同意し、「まずは差別禁止法が必要」と主張。さらに「その後、同性婚の法整備をしっかりとしていくことが重要だと思う」と話します。

その理由を「日本はG7のなかで唯一LGBTの差別を禁止する法律がない。それは他国では当たり前にあるものなのでは」と日本の現状に触れます。

そして、例えば男女雇用機会均等法、障害者差別解消法、アイヌ施策推進法といった法律を見ても、そのなかには差別を明確に禁止する文言があるものの、LGBT関連を律するものはありません。能條さんは「LGBTQに関して特別なことをしようとするのではなく、他のものに合わせようとしているだけなのに……」と嘆きます。

また、今最も必要なこととしては「特にトランスジェンダー差別がSNSなどひどい状況なので、そこは早急な対応が必要」と指摘。そして、「当事者団体がいろいろと必要なものを訴えているので、それらを包括的に見ないといけない」と留意しつつ「なかでも、やはり大きいのは"婚姻制度”」を挙げます。

一方、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、この問題点の核を"制度”と指摘。その上で「そもそも人を好きになるのは人間の欲望で、その対象が同性だろうが異性だろうが、それは生まれながらに持ったもので誰にも否定されるものではない。そして、異性愛者には結婚という制度を認め、同性愛者には認めない、これは差別だと思う。制度に差があることが差別であり、それを解消するのは当然」と持論を展開。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは、渋谷さんの意見にうなずき、「生まれ持った特性でできること・できないことを社会が線を引くのは反対」と話します。そして、「たとえマイノリティであれど、当事者が日本にいて、マジョリティにしてみれば社会が変わるようなことなのかもしれないが、一部のマイノリティの方が必要としているのであれば、それは認めていくべき」と主張します。

◆若者ほど同性婚にポジティブな傾向に

2月11日~13日にかけて共同通信が行った調査では、LGBT理解増進法について「必要」と答えた人が64.3%。「必要でない」が24.1%でした。同性婚については「認めるほうが良い」が64%。「認めないほうが良い」は24.9%で、若い世代ほど「認めるほうが良い」と答えている人が多いようです。

また、2月1 日に岸田首相はこの問題に対し「家族観や価値観・社会が変わってしまう課題だ」と発言した件については、「適切ではない」と答えた人が57.7%となっています。

キャスターの田中陽南は、岸田首相の言動について「発言自体は『マイナスの意味はない』と言っていたが、"変わってしまう”という言い方はマイナスを含むのかなと思う」と率直な印象を語り、「(共同通信の調査で)これだけ必要、認めた方が良いという声があるのだから、その声をしっかりと聞いてほしい」と望みます。

この問題に関しては世間でもさまざまな意見があります。能條さんは、今後の筋道として「理念がまずあって、差別は禁止するものという前提を共有した上で、今は社会とズレがあるからひとつずつ解消していく、そうした社会の合意がないと施策にも落とせないと思う」と懸念。「その合意を作るのが"LGBT理解増進法”なのではないかと認識している」とこの法律の意義を示します。

そして、渋谷さんは共同通信の調査に見る若い世代ほど同性婚を認める傾向に「肌感覚としてとてもよくわかる」と納得。なぜなら、若い世代はSNSを含めネットネイティブで、ネット上でさまざまな人と接しているため、多様性に対して寛容で、議論もいろいろな人がいることを前提で進めることができるから。それはもちろんLGBTQについても同様で、そうした前提の違いは大きく、一方で「価値観をアップデートしていくのは難しい」とその差を埋める難しさを指摘します。

◆同性婚の実現には憲法改正が必要か?

ここで堀からZ世代の3人に「最大の価値観のアップデートは憲法をどうするかだと思うが、憲法改正は必要か?」と投げかけます。すると、3人とも挙手することなく、古井さんからは「現行の憲法でもできると思うが、その議論を進めていくことを含めやっていくべき」との提案がありました。

番組Twitterには、「LGBTの方に限らず、自分の価値観を押し付けて誰かの邪魔をする権利など誰にもない」、「社会が変わるのはその通り」といった意見が寄せられました。堀は、出生率の話を絡める人もいるとし、「すでに同性婚などを導入しているカナダなどでは出生率は横ばい、特に変わらない」という意見も紹介します。そして、「欧米社会では経済的生産性の話や納税者の割合などさまざまな指標を並べ、トータルで議論される。日本のように一足飛びに憲法改正、出生率の話になってしまうのは狭い議論なのかもしれない」と述べます。

能條さんは、「あらゆる議論に共通して言えるのは、マジョリティ側の理解を得ないと法律はできないということ」と指摘し、そうしたなかで以前から燻っていた同性婚の必要性がようやく開花したことに言及。「世論も少しずつ追いついてきているなかで、まずは当事者が求めているほうに目線を合わせる必要があるというか、いつまでもマジョリティがどう思っているのか話をしていても進まない」と意見します。

その他にも、視聴者から「もはや性別による比率を気にする必要はない時代」とのツイートが。ジェンダー平等を謳う一方で、まだまだ根底には男女の違いがあるのも事実。

そうした現実に対し、古井さんは「当然男女を含め、生まれながらの特徴、身体的特性などあると思うが、平等にしていかないといけないという根底には、それで不利益を被る人がいるから。それは社会で是正していくべきというところはあると思う」と自身の考えを述べた上で「同性婚の問題で言えば、同性だから家が借りづらいとか、入院中に会えないとか、さまざまな課題があり、それを解消していくというところで、当事者以外がとやかく言うことではないと思う」とも。

渋谷さんも、誰もが生まれながらに違い、その先に男女であることの違い、さらには同性愛者・異性愛者といった違いがあり、それら全てにおいて"機会が違ってくる”ことが差別とし、「法律で定義するとなると社会が変わるとは言うが、そもそもこの社会において、構成要因である僕らは欲望のままに生きているなか、社会全体で見たときに人の欲望や生活スタイルは変わるかといえばそこまで変わらない。なので、反対する意味がよくわからない」と同性婚の反対意見に異議を唱えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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