大分トリニータ 自由を手にした野村直輝の覚悟 【大分県】

今季、大分トリニータの最初のゴールは野村直輝だった。徳島ヴォルティスとの開幕戦、後半5分にチームを勇気づける先制ゴールを決めた。ペナルティーエリア前で味方のシュートのこぼれ球を拾うと、相手DFの心理を逆手に取り、シュートコースが見えた瞬間に左足を振り抜いた。「(こぼれ球を)トラップした瞬間に2人の選手が見えた。あの状況でプレスに来なければいけないので、(相手の重心の)逆を取った。あとは微調整して、追い風だったので思い切り打ったらイメージ通りにボールが流れた」。ゴールまで5人の選手がシュートブロックに飛び込んだが、野村にはゴールまでの道筋が瞬時にひらめいたという。

このひらめきこそが野村の真骨頂だ。ワンタッチのパスで局面を劇的に変えることもできれば、自らドリブルで打開し、前線へと飛び出すこともできる。独創的なアイデアとそれを表現できる確固たる技術がある。昨季まではチームの戦術の型にはまり過ぎてしまい、自分の良さを出すのに苦労していたが、今季は自分が中心になっていくという意識が強く感じられる。「(大分に移籍してから)3年間、自分が納得できるプレーができなかった。もっとサポーターをうならせるプレーをしたい」という思いで新シーズンを迎えた。

今季チーム初ゴールを挙げた野村直輝

チーム始動当初から体のキレはよく、副キャプテンになってからは精神面も充実。下平隆宏監督は「昨季からマインドが変わった。今季に懸ける思いが、高パフォーマンスを維持している」という。練習始めのランニングでは、昨季までにはなかった、先頭に立って走る野村の姿がある。野村は心境の変化をこのように語った。「今までもチームを引っ張る思いはあったが、今季はシモさん(下平監督)が、チームづくりも試合も選手が判断してプレーできるように余白を残してくれている。そこまでしてくれたら、やるしかないでしょ」

自由であればあるほど力を発揮する野村は「これまでは自分を制御した部分があったが、今は自由に表現できている」という。もちろん自分勝手なエゴを貫くことはない。「チームの勝利のために」という思いは誰よりも強い。「自由の中の責任」を感じてピッチに立っているのだ。

「心が整っている」ことが好調の要因と語る

(柚野真也)

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