「ウルトラマン」ブームで株価が1年で10倍!投資家が上昇初動で捉えることは可能だったのか?

「今期経常を83%上方修正、配当も40円増額」

円谷フィールズホールディングス(2767)の決算発表ヘッドラインを見て、思わず「まじで?」と、驚きの声を上げてしまいました。よい数字が出るであろうことは、ここまでの決算の流れを見れば予想できたものの、その予想をはるかに超える好決算です。


営業利益は前年比3倍!

さっそく決算短信を確認しましょう。

画像:円谷フィールズホールディングス「2023年3月期 第3四半期決算短信(全ページ)」より引用

①売上高89,607(百万円)、②前年同期比+23.5%、③営業利益9,476(百万円)、④前年同期比+300.5%と、営業利益は前年と比べてざっくり3倍です。通期の営業利益は、10,800(百万円)に上方修正されましたが、修正前の予想は6,000(百万円)ですので、予想値を超えた実績値を出したことになります。

2022年10月、第2四半期決算発表の前にも、通期予想を修正しており今回で2度目。いちばん最初に出された営業利益予想は4,000(百万円)ですから、たった9ヵ月で見通しが2.7倍も引き上げられています。そもそも第3四半期の10-12月の3ヵ月間だけで、営業利益はなんと5,942(百万円)を稼いでおり、23年度スタート時点で見込んでいた1年間の営業利益額以上になります。

いったい何が?

ここまで急激に業績が伸びている理由は、いったいなんでしょう?

まずは、円谷フィールズホールディングスが何をしている会社か知る必要があります。といっても、社名からピンと来ている人は多いはず。同社は、もともとは、「エヴァンゲリオン」など遊技機(パチンコ、パチスロ)の企画・販売を主軸とするフィールズ株式会社が、2010年4月に円谷プロダクションを子会社化し、現在の円谷フィールズホールディングスとなっています。

円谷プロといえば、日本全国民が人生のどこかのタイミングで、ほぼ100%ご存知であろうウルトラマンの生みの親。そして、まさに今! 遊戯機とウルトラマン、この2つの領域に、猛烈な追い風が吹いています。

「2023年3月期 通期業績予想修正の理由」を見てみましょう。

画像:円谷フィールズホールディングス「業績予想の修正に関するお知らせ」より引用

「コンテンツ&デジタル事業セグメント」は、ウルトラマン人気が中国まで拡大。日本国内では「シン・ウルトラマン」によるファン層の広がりと、テレビシリーズの映画化による関連グッズの売上が期待できるとあります。

決算説明書をみると、①中国からのライセンス収入が前年同期比で+313.0%とあり、人気の急拡大ぶりがよく分かります。

画像:円谷フィールズホールディングス「2023年3月期 第3四半期決算説明資料」より引用

さらには、②中国におけるウルトラマンのポジションは、なんと玩具分野ではディズニーを抜いてシェア1位! また今後の展開として「③2024年以降に予定されている新規作品郡等の紹介をBtoB向けに世界に向けて情報発信」とあります。

画像:円谷フィールズホールディングス「2023年3月期 第3四半期決算説明資料」より引用

円谷はウルトラマンのほかに、ゴジラという大物キャラクターを有しています。すでにアメリカでは不動の人気を得ていますので、基盤は強固と考えてよいでしょう。おなじく決算説明書に、ウルトラマンブランドの今後の海外展開予定が記載されています。世界各国で、「シュワッチ!」が合言葉になる日が来るかもしれません。

画像:円谷フィールズホールディングス「2023年3月期 第3四半期決算説明資料」より引用

「2023年3月期 通期業績予想修正の理由」に戻ります。

もう一方の「PS事業セグメント」は、「通期でパチンコ7機種、パチスロ6機種の販売を予定しており」とあります。じつはパチンコ業界には、スマスロ(スマートパチスロ)導入による大変革が起こっています。

スマスロは、2022年11月に登場した次世代パチスロ機のことで、メダルレスで遊戯できるのが最大の特長。店舗側にとってはメダル管理がいらなくなるというメリットがあり、顧客側には出玉性能と呼ばれる、大当たり時の獲得上限枚数が向上するうれしい設計がされているそうで、コロナ禍で足が遠のいていた顧客もふたたびパチンコ店に戻ってきているようです。

主軸事業が2つともアクセル全開で快走となれば、この絶好調決算も納得です。気になる株価は、2022年1月につけた安値461円から、ぐんぐん上昇し、直近2023年2月20日(月)には4,140円をつけました。ざっくり10倍! なぜもっと早くこの銘柄に気づけなかったか、投資家としては歯軋りするしかありません。

いつ、この変化に気づけたか?

取りこぼしてしまった利益を嘆いても仕方ありません。次、同じような銘柄に出会ったとき、がっちり上昇初動でキャッチできるよう、どこで円谷フィールズホールディングスに変化の兆しがあったのか、過去決算を検証してみたいと思います。

株価の推移をみると、2022年3月期の第3四半期決算以降、上昇しはじめているのが分かります。

TradingViewより

当時の決算短信を確認すると①売上高72,531(百万円)、②前年同期比+148.5%、③営業利益2,366(百万円)と、なんだかよいことは分かりますが、いまいちピンときません。

画像:円谷フィールズホールディングス「2022年3月期 第3四半期決算短信」より引用

ひとつ前の第2四半期決算の決算短信も見てみましょう。

画像:円谷フィールズホールディングス「2022年3月期 第2四半期決算短信」より引用

営業利益は358(百万円)とあります。第3四半期は2,366(百万円)でしたから、この3ヵ月で2,008(百万円)も稼いでいます。これはまさにサプライズ! 株式市場は何よりもサプライズが好物ですから、絶好の株価上昇フックです。

こうしてあとから検証すると納得の上昇スタートポイントですが、この時点ではなかなか気づけないものですね。

月足ぴょこは、上昇スタートのサイン

じつは、もっと簡単に大化け株のスタートを発見する方法があります。株価チャートを月足で表示し、長くほとんど動いていなかったところから「ぴょこ」っとロウソク足が立ったところが、株価上昇のスタートサインです。もちろん100%上昇するとは限りませんが、わたしの経験上、かなりの確率で、“月足ぴょこ”が出たあとは、上昇トレンドが形成されます。

TradingViewより

円谷フィールズの月足チャートでも2022年2月のロウソク足が「ぴょこ」っとなって、そこから上昇がスタートしています。「月足ぴょこ」を確認した翌月3月に株を買っても十分利益は取れますよね。

ファン垂涎の記念優待

1年前から業績好調で、株価も順調に上昇していましたが、2月13日(月)の2023年3月期第3四半期決算発表で、いちだんと角度が急になりました。おそらく、記念優待の発表が大きく寄与していると思われます。

株主優待の実施に関するお知らせ(円谷フィールズホールディングス体制発足記念)」によると、優待内容は1969年にテレビ放送された「ウルトラマン」、2019年に配信されたアニメ「ULTRAMAN」、2022年に劇場公開された「シン・ウルトラマン」、それぞれをモチーフ化した額装ピンズセットです。これはもうファンならずとも欲しい! 2023年3月31日(金)現在、株主名簿に記載されている100株以上保有株主に進呈されるとのこと。

勢いに乗っている会社がやることは粋ですね。ますます世界中に円谷ファンが広がっていきそうです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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