「40歳の壁」を超える準備−−本当に得たい報酬は何かを考える理由

人生後半の目的を言語化することで、それに向け準備することがわかってきます。

そこで、「ワーママはる」こと尾石 晴( @wa_mamaharu )氏の著書『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、一部を抜粋・編集して報酬とは何かについて解説します。


人生後半戦に「みんなの正解」は必要ない

人生後半戦をどうデザインするかを考えたとき、世間や他人が「良い」とすること=「みんなの正解」を基準としない、というのは1つのキーワードです。

人生の前半戦は、まだ自分の価値基準がはっきりしないので、親や先生や社会が「正解」としてきたことを、意識的にも無意識的にも選びがちですよね。でも、その「正解」通りにやってきたはずなのに、「40歳の壁」が目の前にある。ということは、その「みんなの正解」は、今の「私の正解」ではないということになります。

ここでいう「みんなの正解」とは何か?

• 親や先生から褒められることをする。
• 偏差値は1でも高い学校を目指す。
• 就職は大手企業を選ぶ。
• 一度やり始めたことは(習い事、部活)継続する。

これらを「良い」とする価値観が無意識に刷り込まれていませんか? これ、時代や他者によって決められた枠の中での価値観なんですよね。その枠の中では、「一番・早い・高い・長い(継続)」が正解。子どもの頃から、この「正解」への到達度を競わされてきました。

私たち(30〜40代)の多くは、この「みんなの正解」を当てにいくことが「良い」という教育を受けてきました。自分の価値観はともかく、とりあえずみんなが「正解」とするものを当てにいっておけば、親や先生から褒められるし、同じ価値観を刷り込まれている同級生から「すげぇ」と言われる。

「好きな道を進むべし」と言われていても、当時18歳でアイドル全盛期の広末涼子さんが「早稲田大学へ進学」というニュースを見て、「結局、学歴か」なんて気持ちになったものです。

「みんなの正解」ではなく「私の正解」が価値になる時代

モノがあふれる現代では、みんなと同じことをしていても成長はない(コモディティ化)ため、だんだんと「独自性・個性」に重きが置かれるようになってきました。

私たちアラフォー世代は、みんなと同じ中で「一番」になることが価値を持つ教育を受けて、社会に出たら、みんなと同じではないこと、つまり「独自性・個性」が価値になった世代です。インプット(教育)とアウトプット(仕事)のルールと評価がずれている。

「独自性・個性」が価値を持つ時代になじんでいくには、いくつかの「みそぎ」が必要です。

• 合わないことから外れる勇気を持つ(正解を疑う)。
• 違和感を覚えたらスルーしない(引っかかりをつかまえる)。
• 「みんなの正解」以外の尺度を見つける(正解よりおもしろさ)。
• 「私のこだわり」が価値を生む領域を見つける(市場を広げる)。

現在、私たちの子どもは、この「独自性・個性」が問われている世代です。しかも、社会からは、早めにそれを見つけて、生きていけと言われています。

私たちの世代は偏差値の高さ、大企業に就職、出世の早さなど、同じ枠の中で競い、評価され、それは一応ハズレのない道ではありました。

子どもたちの世代は、「みんなの正解」というものがない。しかも、難易度が高いのは、自分の「独自性・個性」に早めに気づいて、学業や仕事、生き方に反映させて人生を歩まなければいけないという点です。 「みんなの正解」ではなく、「私の正解」を見つける必要がある。とはいえ、「俺は海賊王になる!」では困るわけです。

社会的、倫理的視点も踏まえつつ、いろいろなことを学びながら、「何が好きか・嫌いか」「何に興味や問題意識を持つのか」「独自性・個性を生かして、どう主体的に生きるのか」です(AO入試が20年前と比べて9倍に増えているのも、まさにそこに注目した流れですね)。

アラフォーの私たちも、「40歳の壁」をチャンスととらえて、「みんなの正解」ではなく「私の正解」に目を向けていかないといけません。「これまでと同じことの繰り返しでは、行き詰まるかもしれない」と思うなら、これまでとは違うことに着目(自分の個性や独自性を深掘りする、大事にする)することで、開かれる道がきっとあるはず。

• 「私らしいって何?」と同僚や友人に聞いてみる。
• 偏愛(推しでも良い)を感じるモノを書き出す。
• 今まで時間とお金を使ってきたことを棚卸しする(第4章でも触れていますが、おすすめの手法です)。
• これまで与えられた役割(学生、部員、バイト、社員、子ども、親、友人、恋人……)の中で、自分がしっくりきていたものを思い出し、理由を考える。

「私の正解」が価値になることは絶対にある。でも、「みんなの正解」というメガネでは、見えてこない。メガネを外してみる。ここでうまくシフトチェンジできれば、「みんなの正解」ではなく、「私の正解」にフォーカスした仕事=自分業が見えてくるようになります。そうすれば、人生後半戦を、今よりもっと自分らしく生きられるのではないでしょうか。

報酬とは何か?あなたが得たい報酬の種類は?

会社員の方は「報酬」と聞くと「金銭」をイメージしやすいと思いますが、実はほかにもいろいろな種類の「報酬」があります。皆さんは仕事から「どんな報酬を得ているのか?」を意識したことがありますか?

• 精神的報酬(楽しさ・喜びを感じる)
• 技能的報酬(能力・スキル・経験が増える)
• 金銭的報酬(給与やボーナス、福利厚生など)
• 信頼的報酬(社会的信用・人物評価が上がる)
• 貢献的報酬(メンバーや仲間の育成に関わる)

私は2020年に会社員を卒業するまで16年ほど会社員をしていたので、典型的な労働者目線で報酬を見ていました。「どんな勉強ができて、いくらもらえるの?」という点、つまり技能的報酬や、金銭的報酬を主に意識していました。

相手(会社)が支払ってくれていた精神的報酬(楽しい、快適な職場のための維持コスト)、信頼的報酬(会社員としての信用)、貢献的報酬(マネージャーとしての経験などを得る機会)を見ていなかったのです。

しかし、ここ数年、人から頼まれ仕事をしたり、逆に人に仕事を頼んだりすることで、相手から「どんな報酬」をもらっているか、こちらは「どんな報酬」を渡せているかを考えるようになりました。

金銭的報酬以外の報酬を得ることを考える

人によって「得たい報酬」は異なります。(図9)

• いくらもらえるのか?(金銭的報酬)……雇われ人(会社員など)や学生、副業初心者などが見ているゾーン
• いくら+何がもらえるのか?(金銭的、技能的、信頼的報酬)……独立したてや個人事業主、専門職が見ているゾーン
• お金以外に得られるものは何か?(精神的、貢献的報酬)……金銭的に困っていない人、子どもや本業持ち、経営者などが見ているゾーン

こうやって考えていくと、仕事の依頼を受けたときに「『金銭的報酬』は少ないけど『信頼的報酬』が多いから、この仕事は受けよう!」と判断することができます。

こちらから仕事を頼むときにも、自分は「金銭的報酬」を渡そうと思っていたけれど、相手が求めているのは「技術的報酬」だと気がつくと、金額や仕事内容の交渉ができるようになったりします。

また、私の印象では「お金」がなくても、いろいろな人に助けられていて、行動が早い人は、この報酬設計がうまいです。たとえば、小さなコミュニティをつくりたいけれど、予算がないとします。そんなときに、「お金は多く渡せないけど、コミュニティ運営が学べるので、一緒に手伝ってくれませんか?」と言えば、賛同する人が集まってくれます。お金が貯まるまで待つより、スピーディーに取りかかれますよね。

「自分がどの報酬を求めているか、よくわからない!」という人は、憧れの仕事をしている人や、こうなりたいなと思っている人を観察してみてください。

その人の仕事を見て、「どんな種類の報酬を得るために、この仕事を受けているんだろう」と観察すると、いろいろ見えてきます。

特に「金銭的報酬」以外で仕事を受けている人からは、その人が大事にしたいものが見えてきます(例:広告系は受けないが、社会的信用の高い人との仕事は受ける著名人など。信頼的報酬で仕事を選んでいる可能性大)。

また、 本業があるうちは「金銭的報酬」が補われているので、「金銭的報酬」以外が得られる仕事やチャレンジをしてみると良いと思います。

私のVoicyは、会社員時代は「精神的報酬(やっていて楽しい)」「技術的報酬(話がうまくなる)」「信頼的報酬(信頼される)」「貢献的報酬(共働き世代のお役に立つ)」のために行っていました。

これらの報酬を得ていたから継続できたし、のちの「金銭的報酬」や「ヨガ」にもつながっています。

皆さんはどんな「報酬」を会社や副業からもらっていますか? そして、自分にとって必要な「報酬」はなんですか? 「報酬」の視点から考えると、あなたの自分業のイメージが、より具体的に見えてくるのではないでしょうか。

「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略

著者:尾石晴(ワーママはる)
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