学生は国民年金を払わなくてもいい?「未納」と「猶予」の決定的な違い

4月から大学生としてスタートする人も多いと思います。学生は国民年金を払わなくてもいいのでしょうか?

2023年1月の人口推計データ(総務省統計局)によると117万人が20歳を迎えました。20歳になると国民年金の保険料を納付することが義務づけられています。直接、国民年金の保険料を納付しているのは、第1号被保険者にあたるフリーランスや自営業者、学生などです。会社員などは、給与から厚生年金が引かれているので、自動的に国民年金の保険料も支払っていることになります。また、会社員などの配偶者も第3号被保険者ならば、国民年金の保険料を支払うことになります。

第1号被保険者だが、保険料の納付が困難な場合には、免除制度や減免制度があります。そして学生にも免除制度があります。それが「学生納付特例制度」です。対象者は、学生本人の前年の所得が一定以下の人で、大学、大学院、専門学校、高校などの学生が対象です。今回は、 「学生納付特例制度」 について解説をしてみましょう。


「学生納付特例制度」とはどんな制度なのか?

本来は、学生であっても20歳になると国民年金を支払うことになります。とはいえ、学生の多くは親に授業料を払ってもらい、仕送りをしてもらっています。当然、収入もアルバイト程度というのが一般的でしょう。国民年金の保険料を支払う余裕もないと思います。そのため「学生納付特例制度」があり、その期間は納付を猶予されます。

この「学生納付特例制度」は、申請書を出して手続きをする必要があります。もし手続きをしていないと、保険料は未納の扱いになってしまうのです。しかし、 「猶予」と「未納」とでは、とても大きな差があり、後々大きな損に繋がることがあります。

「学生納付特例制度」を申請すると保険料は「猶予」になることは述べましたが、その猶予期間は、老齢基礎年金の受給資格期間に含むことができるのです。老齢基礎年金は、保険料を10年以上納付しないと受け取ることができません。申請をしておくとその期間は受給資格期間に含むことができるということです。

では、老齢基礎年金の受給額との関係はというと、年金受給金額の計算の対象には含まれません。老齢基礎年金の保険料を40年間にわたり納付すると満額になります。満額の受給額は月額6万6250円(令和5年度)です。

もしもの時に安心な「障害基礎年金」「遺族基礎年金」

「学生納付特例制度」を申請すると、大きなメリットとなるのは、「障害基礎年金」と「遺族基礎年金」の関係です。

障害や死亡という不慮の事故が生じた場合に「障害基礎年金」「遺族基礎年金」が支給されることがとても大きなメリットなのです。たとえば、スノーボードをしていて大きな事故にあい、下半身不随になった場合には、障害認定を受けることになります。「学生納付特例制度」を申請していると、国民年金に加入していることになり「障害基礎年金」を受けることができます。

申請をしないと「未納」扱いになる

ところが、「学生納付特例制度」を申請しなかった場合にはどうなるかというと「未納」になります。

「未納」の場合には、老齢基礎年金の受給資格期間にも含まれません。「障害基礎年金」「遺族基礎年金」も支給されません。いいことは一つもないと言っていいでしょう。ですので、必ず申請をしてください。

追納をすると将来の年金受給額を増やすことができる

では、学生から社会人になって生活に余裕ができたら、追納をした方がいいのか?ということですが、これは 追納をした方がいい でしょう。

追納をすることで、将来の年金額を増額することができます。たとえば、20歳から22歳までの3年間分だとすると、40年間支払った人よりも年間約6万円(約8%)少なくなります。一生涯減ったままの金額になるので、65歳から95歳までの30年間では、175万円の差になります。ですので、追納をした方がいいのです。

追納は10年以内であれば保険料をさかのぼって納めることができます。その他の方法として、60歳以降も国民年金の任意加入を使って満額に近づけることもできます。また厚生年金の場合には、70歳まで厚生年金に加入できるので、国民年金の不足部分の納付もできるようになっています。

両親が代わりに保険料を支払うと節税になる

「学生納付特例制度」を申請しなくて、子どもの保険料を親が代わりに納付する方法もあります。国民年金の保険料は、社会保険料控除になります。子どもの社会保険料も、生活を一つにする配偶者や親族が支払った金額については所得控除ができます。つまり親の節税にもなるのです。

将来のために保険料はできるだけ納付することが大事です。いずれにしても、国民年金は40年間の満額がいいでしょう。

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