第38回「レズ風俗キャストが考える、一歩踏み込んだコミュニケーション 〜キャスト対談 vol.02〜」

「レズ鑑賞クラブティアラ大阪店」のまこさんと、お届けしています対談、第二弾です! 創業以来「ビアンコース」と呼んでいたものが「ウェルネス」に改められたり、「セーフタップ」「セーフタッチ」の新ルールができたり、レズっ娘グループには常にいろんな変化がありますが、それもこれも、お客様とキャストとのコミュニケーションがスムーズになり、より充実した時間を過ごすためなのです。

▼前回の対談はこちら:https://rooftop1976.com/column/nerumaeni/230214000000.php

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まこ:

何のどこまでがセーフでどこからがセーフじゃないかって、人によって違って当たり前だし、その日の気分や体調によってときどきで変わりますよね。自分でもそう感じるときがあります。

ゆう:

あるある、「このぐらいは大丈夫かな」と思ってアプローチしたら「あっ、踏み込んじゃいけない感じだった」とわかったり。

まこ:

その逆で、実はお客様はもっと踏み込んでほしいと思っていた……みたいなことも。ゆうさんは、そんなときどうしてますか?

ゆう:

私はお客様と待ち合わせ場所で出逢った瞬間から、この人はどんなタイプの人なんだろう、ベッドでのプレイはどんなだろうって想像をめぐらすんですよね。表情や仕草、声音、視線の方向、ファッションや髪型、お話されているときのことば……いろんなものにアンテナを立てて、“その人”を感じるんです。そうすると、もじもじした感じのお客様でもコミュニケーションを取っているうちに、「もしかしたら、思い切って踏み込んでもいいのかも!?」とひらめくことがある。私の場合は、思いついたらとにかくやってみます。でも、正解じゃないときもある!

まこ:

あるんですね! たしかに私もプレイ中にいきなり「踏み込もう」と思うんじゃなくて、その前からエッチなことも気持ちいいことも不快なことも、いい意味で「奔放になれる」という、話しやすい空気を作るようにしています。それで、ときには勇気をもって踏み込んでみる。もちろん、相手を驚かせたり傷つけたりしない程度の、ことばや行動で。それで「ごめんよ~、踏み込みすぎちゃった!」と感じたときは、お客様も私もお互いに訂正したり修復したりするし、大事だなぁと感じるのはその場ですぐに謝ること。自分も、相手の行動によってびっくりしたら落ち着いて「~ということに困ったよ~」と伝えるときがあります。それができる関係を作るのが、いちばんかな。

ゆう:

うん、間違える=ダメっていうわけでもないよね。人間だもの、間違えるときはある(笑)!

まこ:

そうなんですよね(汗)。キャストになりたてのころは、踏み込む=相手を傷つけるに近いんじゃないかと怖くて、そうする勇気があまりなかったと思います。だからお客様から踏み込んでくれたり、飛び込んできてくれたりしたら、うれしくて! そんな経験を重ねながら「ここはお互いのために踏み込むことがきっと必要」「もっと踏み込んでほしいときは、教えてもらえる」という気持ちが持てるようになりました。

ゆう:

アンテナを張って、いま目の前にいる女性だけのことを考えたい。待ち合わせのとき「こんなプレイがよさそう」と思っても、実際ベッドでは想像とまったく違うルートをたどることがあって、意外!と驚きながらも、それがまた楽しい。具体的なお話をすると、ご予約のとき私たちキャストに伝えたいことを何でも書ける「伝言」というシステムがありますが、そこに「めちゃくちゃに責められたい!」と書かれていたのに、はじめてみると実は逆でタチに目覚める……なんてこともあります。人というのは、そのときどきで変化していくもの。だから私は、こうだと決めつけず接しているところがありますね。だって、一回出逢って身体を合わせたくらいでは、相手の全部が見えるわけじゃない。何度も逢っているのに、ふとしたタイミングで「あ、いま踏み込んでみよう!」と思える……なんてこともありますから。そのときに大事なのが、さっきまこさんが言ってた「踏み込んだ話をできる関係」なんだと思います。

まこ:

そうですね、自分が言いたいことを伝えてもこの人なら話を聞いてくれる、言える、ことって素晴らしいことですよね。自分と人との境界線は、行動や気分、会話のなかで絶えず揺れ動いているものだと、私は考えているんですよ。最近だと“バウンダリー”ということばもよく聞きますね。自分と他者、国や家のあいだなどに適切な境界線を引くという意味のことばです。物理的にも心理的にも境界線は広くなったり狭くなったりと、波があっていい。お互いの行動や話題によって近くなったり遠くなったりすることも、ままある。私のイメージだと、万里の長城みたいな壁ではなくて、ぐーっと押しても破れない膜みたいなものーーそれが人と人の境界線なんですよね。だから、なんとなくそばにいてほしいと感じる日もあれば、なんとなくそっとしておいてほしい話題もある。それが人と人だなぁ、って。

ゆう:

お客様とキャストは、レズ風俗という場で出会っている以上、あいだに分厚い扉がひとつ挟まっていると思うんです。ドライな話だと感じられるかもしれませんが。越えてはいけない境界線が、ある。だからこそなんですが、私の場合は、ギリギリまで踏み込めるときは踏み込みたいなと思っているんです。もちろんお客様にもよりますし、キャストごとに考えも違うと思います。お客様がこんなにさらけ出してくれるんだったら、こちらもそれを全力で受け止めたい。そうしているうちに、ふたりの境界線がどこにあるのか、どれだけの厚さなのかが見えてくるんじゃないかな。それは信頼とか愛とかということばで表されるものと、同じという気がしています。

【ゆう プロフィール】

永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025

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