23年ぶり人口増!? 宇宙ビジネスで十勝・大樹町が変わる

今週のテーマは、宇宙。“宇宙のマチ”十勝の大樹町の宇宙産業の広がりと、その産業が地域にどういう効果を及ぼしているのかと取材した。

【開拓者インターステラテクノロジズ ロケットの現状は】

人口5000人余り、十勝の大樹町。このマチでちょうど10年前に誕生したのが、宇宙関連のベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」。

全長10メートルほどの小型ロケットMOMOは最新のもので9代目。これまで3回宇宙に到達したこの観測用ロケットは、課題が修正され進化を遂げていた。

次世代ロケットして開発中のZEROは、全長がMOMOの2.5倍、直径は3倍もの大きさだ。最大の特徴は、人工衛星を積み込んで宇宙まで運べること。今月10日には、衛星を搭載する部品を開け閉めする実験が行われ、成功した。

人工衛星を宇宙まで運ぶZEROを安定的に作れるようになれば、インターステラの宇宙ビジネスは本格的に軌道に乗る。そのために今、多くのスタッフが量産できる部品を一から作り上げている段階だ。

このインターステラ、ロケットの燃料に北海道の企業ならではのあるものを取り入れようとしている。牛などの家畜から得られる液化メタンをロケットの燃料として使用するという。酪農王国十勝だからこそできる取り組みのひとつだ。

【大樹町はロケット発射場の世界的な適地 進む開発】

ロケットの打ち上げに必要なもう一つのもの、それは発射場だ。これまで10回ほど小型ロケットMOMOを打ち上げてきた海沿いの発射場は、1年半前の前回の打ち上げ時から大きく姿を変えた。

発射場も小型ロケットMOMOの仕様から次世代型ロケットZEROの仕様へ進化している。今ある発射場のすぐ隣に、大型のZEROを打ち上げるための発射場が新たに作られる。来年3月までに完成する予定だ。

28年前からある航空公園の滑走路にも変化が。今、1000メートルの滑走路を300メートル延長する。スペースコタンの中神さんは「北海道らしいこの広大な土地に、いくつものロケット発射場を拡張できる、この拡張性も大樹町の大きな魅力の1つ」と話す。

これは大樹町の未来予想図。いくつものロケット発射場があり、観覧席もある。ロケットを発射できる条件を満たし、これだけ多くの施設を作ることができる広い土地が大樹町にはある。

【宇宙産業の発展でマチにも変化】

学校跡地の雪原にたたずむ、直径3メートルほどのアンテナ。活用するのは、東京の人工衛星サービス業インフォステラだ。

アンテナでは主に人工衛星から送られてくる地球上の観測情報を受信する。情報は国内外の特定の企業に送り、各企業は情報を活用してそれぞれ展開するサービスの質を高めている。

なぜ大樹町に衛星受信のためのアンテナを設置したのか?倉原CEOは「電波が他国に悪影響を及ぼすリスクの低い場所。ロケットの企業があり、人工衛星の事業者などオフィスを構えるような人が今後増えてくるかもしれない。そこも魅力」と話す。

実際、人は増えている。ここインターステラテクノロジズの社員は去年1月には50人ほどだったが、現在は109人。わずか1年で2倍以上に増えた。その半数は北海道外から移住してきた人たちだ。次世代ロケットの開発が本格化し、社員数が急速に増えている。

この影響で、大樹町の人口は実に23年ぶりに増加に転じた。去年12月の人口は5437人で1年前から18人プラスに。人口が増えるのは道内の自治体の中ではきわめて珍しいケースだ。

人口が増えたことで街中にも変化が。スーパーや飲食店に出店が最近、相次いでいるという。町内初のサツドラの店舗に…

中心部に古くからあるショッピングセンターにはコープさっぽろが入居し、リニューアルオープン。さらには、家系ラーメンの店も。

マチの郊外には、宿泊施設ムービングインもオープンした。森の中にある宿泊施設。
自然と一体化できるよう、さまざまな工夫が施されている。

1組専用のサウナ室も隣接しているほか、薪風呂も楽しめる。ムービングインはこのような施設を森の中に4棟備えている。

宇宙産業の効果は、土産ものにも及んでいる。実際に宇宙空間で食べることができる宇宙食は10種類以上。

今後の街づくりについて考える動きも本格化してきた。行政や農協、民間企業から
メンバーを募った検討委員会が定期的に開かれている。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「宇宙産業は全ての人にビジネスチャンスがある」と話した。当初はロケットの事業者など、一部の専門的な企業のみが集まっていた大樹町も、すそ野が広がりさまざまな変化が起きつつある。今後の発展にも期待したい。
(2023年2月25日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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