FRBの金融政策、米国景気、日銀総裁の交代…今後の日本経済に大きな影響を与える4つの要因とその影響

3月決算企業の決算発表が終了しました。全体としては下方修正が相次いだかなり厳しい決算と言えそうです。


例えば日本電産(6594)は、今期の業績予想を大幅に下方修正しました。これまで2,100億円としていた通期の営業利益予想を1,100億円と半分近くにまで減らし、今迎えている第4四半期(1-3月期)は144億円の営業赤字を見込んでいると発表しました。

こういった業績予想の下方修正が相次いだことにより、日経平均のEPS(一株あたり利益)は若干減少しました。EPSとは企業の純利益を発行済み株式総数で割って算出することができ、投資家が非常に重要視する指標です。また、株価を決める以下の式は非常に重要なのでぜひ知っておいてください。

株価=EPS(一株あたり利益)×PER(株価収益率)
上記の式を変形すると・・・
EPS(一株あたり利益)=株価÷PER(株価収益率)

日経平均は株価指数であり個別の企業ではありませんが、上記の式の通り、日経平均(株価)÷PERの計算をすることで、EPSを算出することができます。計算に使うPERに、実績値を使えば実績EPSが、予想値を使えば予想EPSを算出できます。株価は基本的に未来の情報を織り込みにいくので、通常は予想EPSを使います。

このように計算できる予想EPSと日経平均について、2011年以降の推移をチャートにしてみました。このチャートを見ていただくと、非常に形が似ていることがご理解いただけると思います。

(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成

株式投資では、中長期的に見ると驚くほど業績と株価のトレンドが一致します。個別銘柄では当然そうですし、日経平均のような多くの個別銘柄の株価の平均を取った株価指数でも同様です。

ということは、今後の業績動向を予測することができれば今後の株価を予測することができるということになります。それが1番難しいわけですが…。

それではここからは、今後の世界経済や日本経済への影響が大きそうな要因を整理するとともに、各要因への筆者の考えをお示しします。参考にしていただければ幸いです。

1. FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策

皆さまご承知の通り、現在米国をはじめとして世界的に非常に高い物価上昇に悩まされており、米国の中央銀行にあたるFRBは非常にハイペースで政策金利を引き上げ(金融引き締め)ています。あえて景気を冷まし、物価上昇率を鈍化させたいわけです。ハイペースでの引き締めを受け、米国株は大きく調整し、また日米の金利差が拡大したことから大幅な円安ドル高が進行しました。

筆者の意見

市場では2023年の後半にはFRBが引き締めをやめ、利下げに転じるのではとの見通しもありますが、足元の労働市場の強さからすると、筆者は2024年にかけても簡単には利下げできないのではとみています。これは株式市場にはネガティブです。

2. 米国景気の行方

(1)と密接に関連しますが、米国景気がFRBの意図する適度な景気鈍化(ソフトランディング)で踏みとどまるのか、それとも大幅な景気後退(ハードランディング)に陥ってしまうのかによって、企業業績や株価の動向は大きく変わってくると思われます。

筆者の意見

現時点でハードランディングまではいかないと考えています。ハードランディングしない事自体は当然プラスですが、それによって市場が期待する金融緩和が行われないとすると株価にはネガティブです。

3. 新日銀総裁の金融政策の方針

4月に日銀総裁が現任の黒田東彦総裁から植田和男新総裁に交代します。これまで超大規模金融緩和を進めてきた黒田総裁から植田総裁に交代し、緩和から引き締めへの政策変更が行われないかなどが注目されています。植田氏は2月24日に国会で行われた所信聴取で、現在の政策は適切な政策であるとの表明をしており突然大きな政策変更をする可能性は低いと見られています。

筆者の意見

植田氏は上述の現政策に副作用があることにも言及していることから、引き締め方向のなんらかの政策変更があることは前提として考えておいた方が良さそうです。株価にはネガティブです。

4. インバウンドの増加

昨秋から外国人観光客の受け入れ再開が始まりました。すでに多くの方が訪日しており、関連銘柄の業績に好影響が出始めています。訪日が本格化するのは今年からであり、円安進行もあって日本が誇る高品質の製品やサービスは外国人にとって非常にお買い得状態です。

筆者の意見

外国人観光客による消費は今後の日本経済や関連企業の業績に大きくプラスに働くでしょう。関連銘柄の株価上昇にはチャンスがありそうで、ポジティブです。

ここまで見てきたように、経済や株価に影響を与える材料はポジティブ・ネガティブ様々あり、かつそれらが複雑に結びつき予想をすることは簡単ではありません。難しいながらもご自身の頭で考えて運用に活かすことは、投資成果を向上させる上で非常に重要ですので、ぜひトライしてみていただければと思います。

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