横浜市内の認定こども園で2021年8月、保育士が園児の顎を繰り返しつかむなどの不適切な保育があったとして、市が今月、文書で指導していたことが分かった。この園を巡っては、市が保育士の配置不足などを問題視し、21年11月にも文書で指導していたことが判明。さらに、市内部の情報共有不足により、不適切保育への対応が遅れていた実態も明らかになった。
市保育・教育運営課によると、同年10月、保護者や園関係者から「特定の保育士の言動に園児がおびえている」「壁を蹴ったり、たたいたりしている」という趣旨の通報があった。市は複数回の立ち入り調査を実施して証言を得たが、既にこの保育士が出勤していなかったため、事情を聴けなかった。保育士はそのまま退職したという。
ただ、調査の結果、保育士の配置不足や、園長を兼務する運営法人の理事長が保育士や保護者と必要なコミュニケーションを図っていなかったことが判明。市は文書で改善を求め、不適切保育については「懸案事項」として注意を促した。
同年12月には、保育士が園児の顎をつかみ、何度も振り向かせる行為が映った動画の存在が発覚した。しかし、関係者から提示を受けた市職員がデータを入手しそびれた上、動画の存在が部署のトップにまで報告されず、不適切保育に対する園への指導は結果的に口頭にとどまった。
市は今月になって、別の関係者から動画を確認。園に対し、この保育士への聴取の場を設定するとともに、保護者に謝罪するよう文書で指導した。園のホームページに掲載されていた「保育士の問題行動は確認できなかった」との文書についても、修正か削除を要求した。
理事長は神奈川新聞の取材に対し、「全て済んだ話。何もお答えできない」と話した。