やっぱり【ニセコ】はやばかった① 北海道 スキーリゾートは外国!? さっぽろ単身日記

「ニセコには行きました?」

北海道でスキーの話をすると必ずといっていいくらい出てくるのが、この言葉だ。

「いやあ、まだなんですよ」

「それはもったいない。行かなきゃ。ぜんぜん違いますよ」

と、たいていはこうなる。

スキーヤーの聖地、憧れのゲレンデ。いつかは行ってみたいと思っていた世界のニセコ。

けど、20年ぶりにスキーを始めたばかりの〝初心者〟にその魅力が分かるのだろうか。まずは円山公園駅からバスで15分のBスキー場で、もう少しまともに滑れるようになってからでいいか。

そんなぐずぐずしている私の背中を押してくれたのが、Tさんの一言だった。

「とりあえず行ってみるかい」

稚内出身のTさんは私より16歳上の73歳。スキー歴60年のベテランだ。ニセコには若い頃から毎年のように通っていて裏の裏まで熟知しているニセコ通でもある。

この人と一緒なら安心だ。

ぜひ、お願いします!

いくらニセコ通だといっても、さすがに73歳というご年齢ですから(すみません)、無茶なことはしないだろう。という勝手な思い込みもあり、二つ返事でOKした。

その甘い考えは、ゲレンデで見事に裏切られることになるのだが…

2023年2月18日、土曜日。

この日が、ニセコデビューの日となった。

スキーウェアの上下に、スキーブーツとヘルメット(これが命を救ってくれた…)を積めた大きなリュックを背負い、スキー板とストックを縛ったケースを肩にかけ、転ばないように慎重に歩きながら、なんとかJR札幌駅前のバスターミナルまでたどりつく。窓口で8時間のリフト券付き往復チケット(7200円)を購入。午前9時20分発のニセコ行きバスに乗り込んだ。

この時点で車内はほぼ満席に。見た目や交わされる言葉からすると、半分くらいは外国人のようだ。

午前10時、真駒内駅に途中停車。ここでTさんと合流する。

よろしくお願いします。

雲の隙間に青空も見える。まあまあのコンディションだがちょっと気温が高いのが気になる。雪質はあまり良くないかな、とTさん。憧れのパウダースノーは期待できないかも知れない。

「それでもここらへんのスキー場とはまったく違うからね」

ここらへんでしか滑ったことのない自分にとって、ニセコはどんな世界なのだろう。

トイレ休憩で停まった中山峠では細かい雪が吹き付けていたが、峠を下ると晴れ間が広がり、羊蹄山の裾野が見えてきた。いよいよ未知の世界に突入だ。

午後12時半。「まもなくニセコヒラフ」の自動音声が流れ、バスはゲレンデを正面にした緩い坂を上り始めた。

えっ、ここってニッポン?

ブティックやカフェ、コンドミニアムが立ち並ぶその坂道で、歩いていたり、窓際のテーブル席でくつろいでいたりするスキーヤーのほとんどは外国人だ。まるでヨーロッパのリゾート地(もちろん行ったことないですが…)ではないか。

「昔は山小屋のような旅館しかなかったんだよね」とTさん。

バスがニセコヒラフの駐車場に到着すると、乗客が次々と降りていく。リフト券売り場の前にはすでに長い列ができていた。ここもほとんどが外国人のように見える。

残ったのは私たちとあと1組だけ。バスは上ってきた坂道を下り、山裾を回って「ニセコビレッジ」という別のゲレンデに。そこで1組が降りると乗客は私たちだけになった。

午後1時。目的地のゲレンデ「ニセコアンヌプリ」に到着。ひとことでニセコといってもこんなに広いのか。

「今日はここで慣らし運転をして、明日はヒラフにしよっか。ホントは全山制覇したいけど、無理しないほうがいいよね」

えっ、慣らし運転?全山制覇?

聞かなかったことに…

はい、無理はやめましょう。

2人で1つのロッカーを借りてリュックや靴をしまい、スキーブーツに履き替える。板を雪原に置き、ビンディングを踏み込んだ。

「雪質は悪くないね」

たしかにBスキー場と比べるとずいぶん軽い。

それでいてしっかり板に吸い付いている感覚がある。

これが世界中のスキーヤーが憧れるニセコの雪か。

「とりあえず、てっぺんだね」

てっぺん…

そう促されてゴンドラ乗り場に向かったが、なんと強風のため運転停止になっていた。

ゴンドラのロープの先はガスがかかって見えない。

ゲレンデといっても相手は大自然そのものなのだ。

そのことを思い知らされるニセコの2日間がこうして始まった。

(続く)

© HTB北海道テレビ放送株式会社