丹沢の害獣の皮、多彩な製品に 利活用の促進へ 秦野・すし店の若おかみ商品化「ジビエ身近に感じて」 

害獣を革製品に利活用した伊藤さん=秦野市堀川

 捨てられる害獣の皮を活用しようと、すし店「銀八鮨」(秦野市堀川)の若おかみ・伊藤彩夜加さん(36)がレザー商品を生み出した。「丹沢ジビエレザー」として商品化され、一部は市ブランド認証品にも指定された。伊藤さんは「ジビエを身近に感じてもらい、利活用の促進につなげたい」と話す。

 「丹沢ジビエレザー」は、丹沢産のイノシシとシカを駆除する際に廃棄処分する皮を活用し、県外の業者でレザー加工。環境に優しい植物のタンニンで皮をなめし、伊藤さんが丁寧に手縫いし仕上げる。

 なめらかな手触りと個体によって異なる質感や染色が特徴で、名刺入れ(1万1千円)やIDケース(3800円)、ヘアピンやポーチなど、商品は多彩。

 動物たちの生きた証しを感じてほしいと、けんか傷やけがの痕なども残しており、昨年11月には市の資源を生かした商品などに与えられる「はだのブランド認証品」に選ばれた。

 制作の契機は伊藤さん自身が狩猟免許(わな猟)を取得したことだった。自ら害獣を捕獲する中で、全国的に皮などが廃棄されることを知り「人間の勝手で捨てられてしまう部分を利活用したい」と昨年1月から制作に取りかかった。

 個体によって厚さが違う皮はやわらかく、型抜きや裁縫の際の障壁となったが、牛革をつなぎに使うなど試行錯誤し、同7月に初の商品を完成させた。

 その後も、市のアナグマやタヌキ、長野県からツキノワグマなどの廃棄予定の毛皮や皮を入手。4児の母でもある伊藤さんは本業と子育ての間をぬって制作を進めている。

 「商品を作る機会などを設けて、害獣被害の裏側に生まれるジビエの存在をみんなに知ってもらいたい」と伊藤さん。食育や障害者が制作に携われる環境整備にも意欲を燃やしていて「秦野になくて、誰もやっていないものをやっていきたい」とほほ笑んだ。

 現在の販売は同店の店頭商品のみ。問い合わせは電話090(5334)3120。

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