西海の福祉関係者が連携 人材確保、業務効率化へ セミナー開催やチャット運用

西海市内の社会福祉法人で開かれた介護福祉士実務者研修。市が費用を助成している

 少子高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響などで福祉を取り巻く環境が厳しさを増す中、長崎県西海市内の福祉関係者が連携し、事業運営などの課題解決に向けて動き出した。現状認識を共有して人材確保や業務効率化などの方策を探り、サービスの維持・向上につなげる。
 市社会福祉協議会(宮﨑正宏会長)と、市内の社会福祉法人でつくる市福祉施設連絡協議会(北島淳朗会長)が意見交換会として連携を呼びかけた。昨年11月、初めての会議に14法人・事業所・機関が参加。宮﨑会長は「各法人単独で課題を解決できない状況になってきている」と訴えた。
 介護・障害者施設を中心に慢性的な人手不足に悩まされている中、新型コロナの感染が拡大。直接的な対人援助が不可欠な職場のためさらに敬遠されるようになった。ある事業者は「求人を出してもなかなか集まらない。応募者が2年間ゼロの施設もあると聞く」と嘆いた。デイサービスやショートステイ、通所・訪問といったサービスの提供も制限せざるを得なくなった一方で、利用控えが広がり経営を圧迫。ここ数年、福祉を巡る制度が複雑化し労務負担などが増えていることもあり、事業者は危機感を募らせ、職員は疲労感を覚えているという。

試験的に運用を始めたチャットの画面(画像の一部を加工)

 初会議では課題やその解決に向けたアイデアなどを出し合い、事務局が後日、検討すべき共通課題と取り組みの方向性を提示。人材確保、情報交換、業務改善、福祉教育の四つをキーワードに、▽ハローワークと連携した面談会の定期的実施▽事業者間の情報交換の場の設置▽情報通信技術(ICT)やデジタル化による業務改善▽学校教育への働きかけ-を掲げた。
 地域の福祉を守るため市も本年度、介護人材確保対策の新規事業を始めている。介護職員初任者研修と介護福祉士実務者研修の費用などを助成。スキル、キャリアアップを支援し、人材の確保と育成を図っている。
 西海町の寄能莉那さん(25)は2年前に介護福祉士の資格を取得した。町内の特別養護老人ホーム「ふるさと」に勤め7年。「表情で利用者の思いをくみ取らなければいけない場合もあって大変だが、笑顔を見せてくれたり、ねぎらいの言葉をかけていただいたときは、この仕事に就いて良かったと思う」とやりがいを語る。3交代制で業務に当たり、地域福祉の担い手として歩み続けている。
 連携第1弾として、中小企業のデジタル化などを手がける十八親和銀行営業推進部の担当者を招き、ICTを活用した業務改善セミナーを27日に開催する。また試験的ながら、事業者間で気軽に情報交換できるようチャットの運用を始めた。
 北島会長は「やりがいのある職場づくりに向け英知を出し合い、個々ではなく地域の問題として取り組むことで、いつまでも暮らし続けられるまちづくりに貢献できれば」と話している。

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