【コラム】G2Eアジアがマカオに回帰!シンガポールとの2拠点開催体制に(WEB版)/勝部悠人

アジア最大規模の国際カジノ見本市として知られる「G2E(グローバル・ゲーミング・エキスポ)アジア」が今年(2023年)、4年ぶりにマカオで開催されることがわかった。

G2Eアジアは、アメリカゲーミング協会とリード・エグジビションズの共催で2007年にスタートし、2019年まで13年(回)続けてマカオで開催されてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受け、2020年と2021年は開催を模索する動きがあったものの、結果的に開催見合わせが続いた。

2022年については、マカオがゼロコロナ政策により厳格な水際措置を維持した中、いち早くウィズコロナ政策に転換したシンガポールへ開催地が移転に。「G2Eアジア2022スペシャルエディション」として当地で初めて開催されることとなった。

その後、マカオは昨年12月に事実上のウィズコロナ政策へ転換。今年1月8日には水際措置が大幅緩和された。出入りに関してはほぼシンガポールと大差はなく、すでにインバウンド旅客数が急回復している状況。マカオ当局の発表によれば、1月のカジノ売上(粗利益)は前年同月比82.5%増の115.80億パタカ(日本円換算約1872億円)となり、対前月2.3倍増。新型コロナの影響が生じた2020年2月以降の最高で、ウィズコロナ移行によるインバウンド増を追い風に、幸先の良いスタートを切った。

マカオのカジノ業界に関しても大きなトピックがあり、今年1月から新たなカジノ運営ライセンス(10年間)がスタートした。ライセンスを獲得したのは既存の6社で変わらずだが、ノンゲーミング要素の拡充や中国本土以外からの誘客促進が要件となっており、今後の各社の動向に注目が集まっている。ゲーミングテーブルとゲーミングマシン台数の上限制がスタートしたことも、マシンメーカーが多く出展するG2Eアジアにとっては大きなトピックとなりそうだ。

主催者によれば、今年のマカオでの会期は7月11日から13日までの3日間、会場は例年と同じコタイ地区の統合型リゾート(IR)ヴェネチアンマカオ内コタイエキスポとのこと。また、アジアにおけるIR開発及びそのダイバーシティ化に焦点を当てた新イベント「アジアンIRエキスポ」も併催するという。従来よりもノンゲーミング色を濃くしてくるのではないかと予想される。

また、今年はシンガポールでも「G2Eアジア2023スペシャルエディション」が継続開催される。会期は5月30日から6月1日までの3日間で、会場は前年と同じIRのマリーナベイサンズ内エキスポ。2年連続開催となることから、前年からどの程度規模が変化するかがポイントだ。

例年のマカオでの開催時期は5月中旬となっており、シンガポール版の方が本来に近いスケジュールとなる。約2ヶ月後の開催となるマカオ版とどう差別化するのか、参加者が割れないかなど気掛かりなこともあるが、東アジア2拠点開催が可能と判断されるほど潜在力のある市場と目されているのだろう。

マカオは世界最大規模のカジノ売上を誇る都市だが、G2Eアジアなどのエキジビションを通じて業界の最新トレンドや人材が集うハブとしても存在感を高めていた。昨年、G2Eアジアがシンガポールへ移転した際には、ゼロコロナ維持によるカジノ売上低迷長期化と相まって、マカオがこれまで築いてきたポジションを揺るがす由々しき事態として現地で物議を醸した。今年マカオへ復帰することが決まったものの、シンガポールとの2拠点開催体制となっており、マカオが唯一無二のポジションを回復するには、まず今年のマカオ版の成功とマカオカジノ市場の復活が必須といえよう。

なお、G2Eアジアといえば、日系のカジノマシン及び関連機器、カジノ用品メーカーなどによる出展やこれまでに日本版IRをテーマにした講演やパネルディスカッションを誘致するなど、日本の存在感が大きいことでも知られる。昨年、日本とシンガポールの間では隔離検疫免除での相互往来が可能だったことから、日本勢は現地入りすることができたが、当時マカオが厳格な水際措置下にあり、完全に蚊帳の外に置かれてしまった。今年は日本勢のマカオ往来に支障もないため、筆者は再びマカオでのネットワーキング機会に期待するとともに、シンガポール版の取材にも出かけたいと考えている。

マカオで開催された前回(第13回)「G2Eアジア2019」エキジビション会場の様子(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。

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