【2023年F1をゼロから学ぶ】ここだけは押さえておきたい技術レギュレーション変更点&注目ドライバー

 2023年のF1世界選手権は3月3〜5日に開催される第1戦バーレーンGPで、全23戦のシーズン開幕を迎える。1.6リッターV6パワーユニット(PU)×グランド・エフェクト・カー時代2年目の開幕を前に、あらためて2022年シーズンからのレギュレーションの変更点、新人を含むドライバーラインアップ、そして開催スケジュールを整理してみよう。

 まずは、技術規則の変更点について。昨2022年は車両規則の大幅変更が行われ、40年ぶりにF1にグラウンドエフェクトカーが登場した。ただそれにより、チームによっては高速走行時にマシンが激しく上下に跳ねる『ポーパシング現象』に悩まされることとなった。

 この『ポーパシング現象』による激しい上下運動がドライバーの健康や安全性の面で問題となり、FIA(国際自動車連盟)は対策として『フロアエッジを15mm高くする』、『ディフューザーのスロートを高くする(各チームのメカニカルコンポーネントのデザインに影響を与えないよう配慮)』、『ディフューザーエッジの剛性引き上げ』、『ポーパシング現象監視用のセンサー追加を義務付け』を2023年のレギュレーション改訂に盛り込んだ。

2023年F1バーレーンテスト3日目 シャルル・ルクレール(フェラーリ)

■参考:フェラーリの2023年車両『SF-23』主要諸元

モデル名 SF-23

シャシー カーボンファイバー、ハニカムコポジット

キヤボックス フェラーリ製8速縦置き(前進8速+後退1速)

ブレーキ ブレンボ製、油圧制御式セルフベンチレーションカーボンディスク(フロント/リア)

フロントサスペンション プッシュロッド式

リアサスペンション プルロッド式

総重量 798kg(水、オイル、搭乗者含む)

フロント/リヤホイール 18インチ

パワーユニット ー

名称 066/10

構成 90度V6/4バルブシングルターボ

排気量 1600cc

最高回転数 15000回転

過給器 シングルターボ

最大燃料容量 110kg

ボア 80mm

ストローク 53mm

最大噴射 500bar

ERS(エネルギー回生システム) ー

バッテリー リチウムイオン電池(最小重量20kg)

バッテリーエネルギー 4MJ

MGU-K最大出力 120kW

MGU-K最高回転数 50,000rpm

MGU-H最高回転数 125,000rpm

 また、2022年F1第10戦イギリスGPで発生した周冠宇(アルファロメオ)のアクシデントの際に、ロールフープバーがマシンから脱落してしまったことから、ロールフープの形状および強度テストの内容が変更となり、安全面の強化が図られた。

2022年F1第10戦イギリスGP クラッシュで逆さまになった周冠宇のアルファロメオC42

 細かな点では、後方視界を改善するべくミラーのサイズが変更され、幅が150mmから200mmに拡大された。そして搭載燃料の許容温度に関して、2023年より「外気温から10度以上下回ってはいけない/10度以下であってはいけない」という文言へと変更されているとおり、燃料の最低温度が20度から10度へ引き下げられている。

二人一組で手組で組立を行うホンダF1パワーユニット

 続いて、競技規則の変更点について。基本的には2023年シーズンも1大会で13セットのタイヤを使用していくが、試験的に2大会でタイヤ供給本数を11セットに減らす試みが実践される。この2大会ではQ1はハード、Q2はミディアム、Q3はソフトと、使用するタイヤコンパウンドが義務付けとなることも大きな特徴だ。

 ピレリから供給されるコンパウンドは5種類から6種類へと増加され、もっとも硬い『C1』と『C2』の間を補うコンパウンドが登場。2022年までの『C1』が『C0』へと改名され、2023年から導入される新たなコンパウンドが『C1』と呼称されることになった。ピレリは新コンパウンドの導入について、「以前のレンジにおけるハード寄りのふたつのコンパウンドの性能差を縮める」必要性があったためだと説明している。

 すでに開幕3大会のイヤセレクションがピレリより発表されており、開幕戦バーレーンGPでは、C2とC3とともに新導入にC1タイヤが登場する。第2戦サウジアラビアGPおよび、第3戦オーストラリアGPの2戦では、ピレリが選択したソフト寄りのC2、C3、C4タイヤがチームに割り当てられる予定だ。

 また、第6戦エミリア・ロマーニャGPからはピレリが開発した新たなウエットタイヤが使用可能となる。そのほかの競技、技術、財務レギュレーションの変更内容はこちらを確認してほしい。

2023年F1第1戦バーレーンGPのタイヤセレクション
2023年F1第2戦サウジアラビアGPのタイヤセレクション
2023年F1第3戦オーストラリアGPのタイヤセレクション
2023年F1開幕3戦の使用コンパウンド

■6チームが新体制に。ルーキーは3名

 4チームがドライバーラインアップを継続する一方、ニック・デ・フリース(アルファタウリ)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ローガン・サージェント(ウイリアムズ)と3名のルーキーが参戦する。

 なかでもデ・フリースはFIA F2王者、フォーミュラE王者という肩書きに加え、2022年第16戦イタリアGPにアレクサンダー・アルボンの代役としてウイリアムズからF1デビューを果たすと、予選ではQ2進出。さらに、決勝では9位に入り、ファンだけではなく、F1関係者も注目する存在となった。2023年は念願が叶い、角田裕毅のチームメイトとしてアルファタウリのシートを掴んだこともあり、その走りには注目が集まる。

 また、ミック・シューマッハーに代わりハースにはニコ・ヒュルケンベルグが加入。ヒュルケンベルグにとっては2019年以来のレギュラーシート獲得となる。そして、GP2、スーパーフォーミュラと、F1参戦以前からレッドブルとともにキャリアを重ねてきたピエール・ガスリーがアルファタウリからアルピーヌへ移籍。今期の最年長ドライバーとなるフェルナンド・アロンソはアルピーヌからアストンマーティンへ移籍。彼らが新天地でどのような走りを見せてくれるのかも、開幕戦から楽しみにしたいポイントだ。

 そして、やはりF1参戦3年目を迎える角田の走りにも注目だ。デビューイヤーとなった2021年に記録した自己最高位の4位を越える成績を残せるかという点にも注目したい。ホンダ・レーシング(HRC)のサポートのもと、レッドブル・パワートレインズが供給するPUの実力は、2022年にダブルタイトルを手にしたマックス・フェルスタッペンとレッドブル・レーシングが証明している。あとはアルファタウリのシャシー、そして角田がポテンシャルを存分に発揮できるかが鍵となるだろう。

 2023年シーズンのタイトル争いの焦点は、3連覇に挑むフェルスタッペンとレッドブルという高い壁に対し、チーム代表交代と改革を進めるフェラーリ、そしてメルセデスといった有力チームがいかに挑むかとなるだろう。フェルスタッペン&レッドブルの“黄金期”は続くのか。それとも下克上が見られるのか。各マシンのポテンシャルを見極めるためにも、第1戦バーレーンGPではフリー走行1回目から注視しておきたい。

2023年用レーシングスーツを着用したニック・デ・フリースと角田裕毅(アルファタウリ)
ランド・ノリス&オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
左からウイリアムズのコマーシャル・ディレクターを務めるジェームズ・バウワー、アレクサンダー・アルボン、ローガン・サージェント、ガルフ・オイルCEOのマイク・ジョーンズ

■2023年F1世界選手権 ドライバーラインアップ

No. Driver Team

1 マックス・フェルスタッペン オラクル・レッドブル・レーシング

11 セルジオ・ペレス オラクル・レッドブル・レーシング

16 シャルル・ルクレール スクーデリア・フェラーリ

55 カルロス・サインツ スクーデリア・フェラーリ

63 ジョージ・ラッセル メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラワン・チーム

44 ルイス・ハミルトン メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラワン・チーム

31 エステバン・オコン BWTアルピーヌF1チーム

10 ピエール・ガスリー BWTアルピーヌF1チーム

4 ランド・ノリス マクラーレンF1チーム

81 オスカー・ピアストリ マクラーレンF1チーム

77 バルテリ・ボッタス アルファロメオF1チーム・ステーク

24 周冠宇 アルファロメオF1チーム・ステーク

18 ランス・ストロール アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チーム

14 フェルナンド・アロンソ アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チーム

20 ケビン・マグヌッセン マネーグラム・ハースF1チーム

27 ニコ・ヒュルケンベルグ マネーグラム・ハースF1チーム

22 角田裕毅 スクーデリア・アルファタウリ

21 ニック・デ・フリース スクーデリア・アルファタウリ

23 アレクサンダー・アルボン ウイリアムズ・レーシング

2 ローガン・サージェント ウイリアムズ・レーシング

■初開催ラスベガスGPは土曜決勝のナイトレースに

 2023年シーズンは、3月3〜5日に開催されるバーレーンGPから全23戦が開催される。うちF1スプリントはアゼルバイジャンGP、オーストリアGP、ベルギーGP、カタールGP、アメリカGP(オースティン)、サンパウロGPで実施されることとなり、2022年は3大会から倍増。その分F1をじっくりと楽しむことができるだろう。

 初開催となるのは2023年11月に予定されているラスベガスGP。常設サーキットとストリートセクションを合わせたラスベガス・ストリート・サーキットが舞台となる。なお、決勝はナイトレースとして土曜に開催されることとなり、そのため、フリープラクティスは木曜、予選は金曜と、通常より1日早いスケジュールで開催されることになる。

 そして、待望の日本GPは9月22日〜24日に三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催される。今年はレノボがタイトルスポンサーを務めることとなった。2022年の日本GPは大雨による長時間の赤旗中断を挟むなど、雨に翻弄されたレースとなっただけに、2023年大会はドライコンディションでのレースに期待したいところだ。

F1ラスベガスGPのコースレイアウト予想図
2022年F1第18戦日本GP チェッカーフラッグを受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

Round 日程 グランプリ(開催地)

1 3月5日 バーレーン(サクヒール)

2 3月19日 サウジアラビア(ジェッダ)

3 4月2日 オーストラリア(メルボルン)

4 4月30日 アゼルバイジャン(バクー)

5 5月7日 マイアミ(マイアミ)

6 5月21日 エミリア・ロマーニャ(イモラ)

7 5月28日 モナコ(モナコ)

8 6月4日 スペイン(バルセロナ)

9 6月18日 カナダ(モントリオール)

10 7月2日 オーストリア(シュピールベルク)

11 7月9日 イギリス(シルバーストン)

12 7月23日 ハンガリー(ブタペスト)

13 7月30日 ベルギー(スパ・フランコルシャン)

14 8月27日 オランダ(ザントフォールト)

15 9月3日 イタリア(モンツァ)

16 9月17日 シンガポール(シンガポール)

17 9月24日 日本(鈴鹿)

18 10月8日 カタール(ロサイル)

19 10月22日 アメリカ(オースティン)

20 10月29日 メキシコ(メキシコシティ)

21 11月5日 ブラジル(サンパウロ)

22 11月18日 ラスベガス(ラスベガス)

23 11月26日 アブダビ(ヤス・マリーナ)

DAZNアフィリ用画像リンク

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