令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果 ~日本の定年はどう変わるのか?~

日本の現状

日本は世界トップクラスの長寿国として知られています。
一方で、かねてより少子高齢化が危惧されてきた日本ですが、人口の減少には歯止めがきいておらず、世界に先駆けて「超高齢社会」に突入しました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の人口は2000年頃1億2700万人前後で推移していましたが、2020年は1億2410万人となっており、2060年には9000万人を割り込むことが予想されています。
それに伴って高齢化が加速しており、2025年には高齢化率が30%に達するともいわれています。

世界に類を見ない「超高齢社会」の真っただ中にいる私たち……その弊害はどのようなものがあるのでしょうか。
本記事で一緒に確認していきましょう。

課題と変化する高齢者像

超高齢社会がもたらす課題は大きく分けて3つあります。
生産年齢人口減少による日本経済の低迷、社会保障費の拡大、介護負担の増大です。
これらの課題は現在すでに露呈していますが、今後は一層深刻化することが見込まれます。

一方で、昨今は高齢者像にも大きな変化が見られます。
一般に、高齢者は加齢とともに身体機能や認知機能が低下するといわれていましたが、近年は必ずしもそうではないとの指摘があるのです。
確かに、認知能力は50歳を機に衰えが見えてきますが、日常問題解決能力や言語能力は経験や知識の習得によってむしろ向上し、身体機能年齢についても年々若が得ているとの研究結果も出ています。

医療の進化や生活の変化により、健康寿命が延びていることが起因しており、定年後も働く高齢者や、趣味や旅行などアクティブな活動に時間を割く高齢者が増えてきているようです。

高齢者の雇用について

これらの課題や特徴を受け、政府は「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」を制定しました。
経済活動を維持することが目的で「働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高齢者が活躍できる環境整備を図る法律」です。
この法律は、企業に「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講じるよう努めることを義務化しています。
対象年齢は当初65歳でしたが、令和3年4月1日より70歳に引き上げられました。
法律の制定、および定年年齢の引き上げを受け、日本の企業の高齢者雇用の実態はどのように変化したのでしょうか。

令和4年6月1日時点での各企業の雇用状況をまとめた、厚生労働省の「高齢者雇用状況報告書」によると、65歳までの高齢者雇用確保措置を講じている企業の割合は、全体の99.9%と、これまでより0.2ポイント増加しました。
内訳としては、継続雇用制度の導入が70.6%を占め、定年制の廃止や引き上げを実施している企業はそれぞれ3.9%、25.5%にとどまっています。
「希望者に応じる」というかたちが多いものの、すでにほとんどの企業で高齢者雇用措置がとられているとみることができます。

一方、70歳までの高齢者就業確保措置が設けられている企業は全体の27.9%にとどまっています。
中小企業が28.5%、大企業が20.4%となっており、ともに2ポイント強増加しているものの、過半数には及びませんでした。
70歳までの雇用を確保する義務については、現状努力義務のため、全体に普及するまではまだ時間がかかる見込みです。

また、60歳定年企業において継続雇用された者は87.1%と、過半数が継続的に働くことを希望し、企業もまた受け入れた、という結果となっています。

日本人はいつまで働き続けるのか

生涯の労働時間が伸び続けている日本。
超高齢社会の突破口が見いだせていない今、日本経済を維持するには多くの人がこれまで以上に長い期間働く必要があります。
労働年齢が伸びるからこそ、より一層、自分に合った「働き方」を考えていく必要があるのではないでしょうか。
「若いうちに稼ぎ、定年後に余暇を楽しむ」という従来のかたちから、「仕事のある生活自体を楽しむ」というかたちにシフトしていく必要がありそうです。

<参考>
・ 厚生労働省「令和4年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」
・ 厚生労働省 ハローワーク「高年齢者雇用安定法 改正の概要」
・ 総務省「平成25年版 情報通信白書 第3節『超高齢社会におけるICT活用の在り方』」

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