【WBC】知られざるチェコ代表 欧州予選で運命を変えた投手は「広報もマーケも兼任」

©チェコ野球協会

「はじめまして。ルーカス・エルコリーです。チェコ代表チームでマーケティングと広報を務めています」

これが、本メディア韓国版「spotvnews.kr」によるWBCチェコ代表チームへの書面インタビューを求めるメールへの返信だった(WBC本大会1次ラウンドでチェコ代表は日本、韓国とともにプールBに入った)。

送り主は同国野球協会でマーケティングと広報を担当するエルコリー。実は、背番号63を背負ったチームの投手でもある。さらに昨年9月にドイツで開かれたWBC欧州予選で敗退の危機に追い込まれていた母国を救った英雄でもあるのだ。 

チェコは欧州予選でのスペインとの初戦で7―21、14点差の7回コールドゲームで惨敗し、予選敗退の危機に追い込まれていた。次の相手はメジャーリーグで百戦錬磨の実績を積み上げたブルース・ボウチー監督が率いるフランス。アメリカ生まれのマイナーリーグ経験者とフランス本土出身で米国大学球界のホープとされるレオ・ジミニアンら年齢バランスのいいチームだった。

一方のチェコは全員が自国出身、自国リーグに所属する選手たちで構成されたチームだったが……このフランスに対して7―1の大差をつけ、前日の完敗を忘れるほどの快勝劇を披露。先発登板したのは、このメールの送り主である「広報もマーケティングも兼任」のエルコリー。4イニングを無失点で抑えた。

エルコリーはチェコ国内リーグでの結果を認められ、代表に選出された。チェコ代表チームのWBC進出過程を描いたドキュメンタリー「小さな国、大きな夢(Malá zeme velké sny)」を見ると、エルコリーは秘密兵器だったことが分かる。

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チェコでは数少ない、米国マイナーリーグでのオールスター出場というプロキャリアを有するキャッチャー、マルティン・セルベンカがこう語る。

「エルコリーを完全に信じた。チェコ国内リーグでしっかり実績を残してきた投手だから。私はエルコリーが最初の試合(スペイン戦)の先発を引き受けるべきだと思った。以前の監督はエルコリーを信頼していなかった。しかし(新しい投手コーチである)ジョンはエルコリーの球威と投球を見て信じてくれた」

チェコはWBC予選を控えてパベル・ハディム監督を招へいし、世代交代を図った。マイク・グリフィン監督体制で機会を得られなかったエルコリーは予選を控え、ハディム監督に自分を重要な試合に任せる気があるのかと案じていた。

当のエルコリーは「代表チームで投げるというのは想像もできなかった」。だから去年の夏に監督に『私はチームでトップ6に入る投手なのか」と聞いた。そうでなければ広報チームの仕事をしなければならなかったからだ。「気持ちを整理する必要があった」という。

ハディム監督はエルコリーを代表チームに選び、エルコリーはチェコの夢を守るためにマウンドに上がった。 

彼の夢はWBC本大会進出では止まらない。自国出身選手だけを出したチェコ代表はWBC本大会のために戦力を補強した。元メジャーリーガーのエリック・ソガード、アリゾナの有望株投手ボリス・ベチェルカ、米国大学野球のホープ内野手ウィリー・エスカラが最終リストに加わっている。チームのリストには、依然として広報担当者と投手としてチェコを代表する「二刀流」エルコリーの名もある。

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