【WBC】侍ジャパンと対戦 チェコのベテラン"二刀流"は大谷翔平を知っていた! 「彼は大好きだけど…」

スフネイデル ©チェコ野球連盟

チェコのワールド・ベースボール・クラシック2023(WBC)本大会初出場への道のりは、まるで一編のドラマだった。

予選初試合で7―21の7回コールド負けを喫したスペイン代表と最終戦で再戦すると、今度は見事に逆転勝ち。本大会へのチケットを手に入れたのだ。 

それがドラマだとすれば、マルティン・スフネイデル(36)は主人公の一人だ。

チーム最年長右腕は、スペインの強打線を相手に6回1/3イニングを1失点に抑える好投を見せ勝利投手に。自国リーグ「エキストラリーガ」では主にストッパーを務めてきたが、最も重要なヤマで先発登板すると、クオリティー・スタート以上のパフォーマンスを見せた。

スフネイデルがチェコ野球でどのような存在かは、WBCが制作したドキュメンタリー「小さな国、大きな夢(Mala zeme velke sny)」で確認できる。「SPOTV NEWS」との書面インタビューを通じての回答には、やはり「生ける伝説」らしい品格が漂っていた。 

スフネイデルは、”まるでマンガのような”大谷翔平(エンゼルス)に似た点がある。それは彼がエクストラリーガで投手兼遊撃手として活躍してきた「二刀流」だからだ。

ただし、WBCでは遊撃手としてプレーする姿を見ることはできないようだ。彼は言う。

「WBCでは投手に集中すると(パベル・ハディム)監督に話した。私はキャリアを通じて二刀流選手だったが、今は立派に成長した後輩たちに自分の座を譲る時だね」

「代わりに代打や代走としてはいつでも出られるように準備する」

さらに「監督もそんな私を理解し、信用してくれている」とも。

ちなみに「SPOTV NEWS」がチェコ代表広報に書面で宛てた質問には「あなたは大谷のような二刀流だ」という表現を記してみたところ――

スフネイデルはこれを見逃さなかった。

「大谷はこれまでに二刀流を試みた選手の誰よりも優れており、これからもメジャーリーグを支配する選手だ。ただ彼のことは本当に好きなんだが、10年後、15年後にも体が持つかは分からない」

さらに「実際やってみたらそうだった」として、最後に笑顔を意味する「:)」の絵文字を付け加えてきたという。

スフネイデル ©チェコ野球協会

二刀流でなくても、スフネイデルが今のチェコ野球を代表する投手だという事実は変わらない。ドキュメンタリー「小さな国、大きな夢」には、同国代表の外野手マテイ・メンシークが、強心臓で有名な若手有望投手ミカイル・コバラの大胆な性格を表すこういうシーンがある。

「スフネイデルのように投げる」

監督からの信頼も厚く、ハディム監督は、ドイツで行われたWBC欧州予選最終戦の先発投手にスフネイデルを選んだ理由をこう説明した。

「ジョン(ジョン・フセイ投手コーチ)とこういう話をした。『 100万ドルがかかった試合なら誰を出すか?』って」

「我々の100万ドル投手? スフネイデルだろ」

監督に最高の投手として認められ、結果として世界行きのチケットを得た。スフネイデルは「周囲がそう思ってくれることには感謝したい」としながらも、「私は自分が最高の投手だとは思わない。私はいつも満足せず、いつも成長したい人だ」と謙遜した。  

チェコの「最高齢選手」という呼称については「おそらく書類上にはそう書かれているんだろうね」としつつ、「しかし、私の気持ちはただ世界最高のスポーツを愛する野球少年のまま」とした。 

一方で、後輩たちからのリスペクトについては限りない感謝を表する。

「若い選手たちから多くのリスペクトを受けていることはわかっているが、彼らとは気軽にジョークを交わす良い仲間でもある。自分は彼らにとって『野球を尊重し、情熱的にプレーし、また何があっても勝利のためにベストを尽くした選手』だったと記憶されたい。たとえそれが、たった一人であっても私を良い指標と考えてくれれば満足だ。だとすれば成功した人生だね」

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