どうなっちゃうんだ…弟と母の世話に追われた娘、今は弁護士に 誰も責められず、相談できず、背負った重責

ヤングケアラーの経験者で現在は支援活動をしている藤木和子さん(左から2人目)らパネリストが登壇したシンポジウム(上尾市提供)

 埼玉県上尾市は市文化センターで、大人の代わりに介護や家事など家族の世話している子ども「ヤングケアラー」についての理解を深めるため、小中学校教員や市職員、民生委員など支援に携わる人たちを対象にしたシンポジウムを開催した。

 基調講演では、同市出身の弁護士で「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」副会長の藤木和子さんが基調講演。藤木さんは5歳の時から耳の聞こえない弟の世話や母親の精神的なケアを担ってきた。現在はヤングケアラーの経験者として、さまざまな支援活動をしている。

 藤木さんは「10年以上前はヤングケアラーという言葉がなく、障害者のきょうだいだった」と話し、「弟の通訳と勉強の面倒を見てきた。お手伝いと違うのは、重い責任と負担。私しかやる人がいないと思ってきた。私の将来はどうなっちゃうんだろうと不安だった」と当時を振り返った。「家族全員が頑張っているので誰も責められない。でも勉強や部活、友人との時間が取れず心身ともにストレスだった。相談する人がいなかった」と実体験を語った。

 そして「ヤングケアラーは自分が自由にすることへの罪悪感がある。大人ができることは、気付くこと。そしてヤングケアラーの子自身を第一に考えてあげることが大切。プレッシャーをかけたり批判せずに受け止めてほしい」と支援する側の注意点についても述べた。

 その後、元ヤングケアラーによるパネルディスカッションが行われ、ヤングケアラー協会代表理事の宮崎成悟さん、20~30代のきょうだいの会・ファーストペンギン代表の菅井亜希子さんと藤木さんが、経験を交えながら、ヤングケアラーの支援について語り、参加者の質問などに答えた。

 市は昨年、市内小学4年生~中学3年生を対象に独自のヤングケアラー実態調査を実施。小学生7%、中学生4.3%がヤングケアラーに当たることが分かった。市では、「ヤングケアラーに早期に気づき、支援につなげるための体制を構築する必要がある」としている。

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