「一歩進んだのかな」熱海土石流の“崩落残土”撤去ようやく開始 災害から1年8か月「何が安全なのか分からない」不安の声も

住民28人が犠牲となった2021年7月の熱海土石流災害からまもなく1年8か月です。静岡県熱海市の伊豆山地区を流れる逢初川の源頭部付近で2023年2月28日から、崩れ残った土砂を運び出す作業が、ようやくはじまりました。住民の思いもさまざまです。

<神谷修二記者>

「午前9時です。落ち残った土砂の搬出作業が始まりました」

2月28日午前9時から始まったのは、土石流の起点付近にある崩れ残った土砂の撤去と運び出す作業です。2021年7月、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害では、崩落の起点となった付近に、いまも不安定な土砂が約2万立方メートル残ったままとなっています。

静岡県は盛り土を造成したとして、前の土地所有者である不動産会社に土砂の撤去を求める措置命令を出していましたが、会社側がこれを拒否。県が行政代執行に踏み切ったのは、2022年10月。土石流から1年3か月が過ぎていました。

<静岡県熱海土木事務所 池谷拓巳課長>

「住民の不安を取り除く意味でも早期に不安定な土砂を撤去して、逢初川流域の住民に対する安全性の確保をしていかなければいけない」

崩れ残った盛り土の影響で、被災地はいまだ警戒区域として立ち入りが禁止されたままです。土砂の撤去は、2023年夏に見込まれる警戒区域の解除、そして、“伊豆山帰還”への第一歩となるだけに、住民にとってはまさに悲願です。

<被災者 太田滋さん>

「一歩進んだのかなと思っています。土砂がなくなって、いままで通りの伊豆山というか、逢初川のところがきれいになれば、少し気持ちも落ち着くのかなと思っています」

一方で、土砂の撤去だけでは、不安をぬぐい切れない被災者もいます。

<被災者>

「すべての土を取り除くわけではないので、本当に安全な生活が送れるのか、何が安全なのかが本当によくわからない。盛り土をしてきた人たちは、これといっていまだに責任を負ってるわけではないので」

撤去された土砂の一部からは、基準値を超えるフッ素や鉛などが検出されていることから、撤去後は、袋に詰めた状態で熱海港近くに仮置きされます。日常の生活を取り戻すための第一歩となるか、盛り土の撤去は5月末の完了を目指しています。

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