「1日400本売れた」高級食パン専門店はどうなった? こんな所に活路あり!

広島市南区の住宅街で営業する「一本堂 広島段原店」。さまざまな味の商品がある

 全国でブームとなり、ちまたでもよく見かけるようになった高級食パン専門店が岐路を迎えている。2022年から今年にかけて広島県内で少なくとも10店が閉店・統合した。現在も30店舗以上あるとみられるが大行列ができるほどの人気は落ち着いたようだ。各店の動向と生き残るための工夫について探った。

 ▼あの店はいま…

 生クリームやバターなどで甘さを強調し、大サイズの販売で特別感を演出してブームとなった高級食パン。2010年代、関西や首都圏から全国へ広がった。

 広島でも15年に初進出した代表格「乃が美」、比較的手頃な価格と多様な味の商品が特徴の「一本堂」といったフランチャイズ(FC)が出店を重ねた。

 「19年のオープン後3カ月はパンを作るたびに10分でなくなり、1日400本が売れた」。当時、商業施設レクト(広島市西区)にあった「一本堂 広島レクト店」と「広島段原店」(南区)を運営していた三上英孝オーナーは振り返る。

 他店との競争激化や新型コロナウイルス禍による外出控えなどで売り上げは徐々に低下、レクト店は今年1月に閉店した。段原店のみを運営する。

 一本堂は22年以降、東広島市や福山市など3店を閉店、現在は南区のほか、東区、呉市となった。

 乃が美も福山市内の2店を閉め4店舗(広島市中区、安佐南区、尾道市、廿日市市)になった。「嵜本(さきもと)ベーカリー」は2月に福山市と三原市の2店を閉店し、県内はゼロとなった。

 広島の地場チェーンもブームの陰りの影響を受ける。プラフィード(広島市西区)が展開する「高級食パン専門店 瀬都(せと)」は22年にFCの可部店(安佐北区)と西条店(東広島市)を閉店、現在は直営の広島店(広島市西区)と呉店(呉市)のみだ。

 20年にオープンした広島店も、当初1日500本もあった売り上げは今や100本程度に。梶山薫社長は首都圏より遅れてきたブームの終息に加え、知人宅に持参するお土産としての需要がコロナ禍で落ちたことが大きいとみる。

 ▼宅配など販路を模索

 一方、梶山社長は新たな販路開拓を進める。「店で客を待っているだけでは限界だ」と自動車販売店や住宅展示場で開かれる催事にターゲットを絞る。1斤500~800円台で高級感のある瀬都の食パンは来場者に配る土産に向いていると考え、イベントの開催企業に売り込む。

 「一本堂 広島段原店」の三上オーナーが販路として活路を見いだしたのは、食パン店とは別に運営している高齢者向けの弁当宅配サービス。最近の高齢者はコメの弁当だけでなく手軽なパン食へのニーズも高いことから、宅配で獲得した顧客に一本堂の食パンも売り込む。ブームの浮き沈みに影響される高級食パン業界だが、各店はしぶとく新たな販路を模索している。

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