【連載コラム】第1回:ピッチクロック導入で3時間超の試合が激減!? 試合時間短縮の効果は絶大

昨年の"2023 MLB新ルール発表" カンファレンスの模様 @Getty Images

皆様はじめまして。MLB日本語公式サイト「MLB.jp」の編集長を務めております村田洋輔と申します。このたびSPOTV NEWSでMLBに関するコラムを書かせていただくことになりました。最新情報や気になるトピックなど、MLBに関する面白い情報をお届けできればと思います。

さて、2023年シーズンの開幕まで残り4週間ほどになりましたが、MLBでは今季から様々な新ルールが導入されることが決まっており、オープン戦はその新ルールのもとで行われています。新ルールの目玉は何と言っても「ピッチクロック」でしょう。ロブ・マンフレッド・コミッショナーが目標に掲げる試合時間短縮を実現するために導入されたルールです。このルールを簡単に説明すると、

●打者と打者のあいだは30秒
●投手は無走者時は15秒以内、有走者時は20秒以内に投球しなければならない(違反した場合は自動的に1ボール)
●打者はタイマーが残り8秒になるまでに打撃の準備を整えなければならない(違反した場合は自動的に1ストライク)

となります。要するに、ダラダラせずテンポよく試合を進めていきましょう、ということですね。オープン戦では初日にマニー・マチャド(パドレス)が「ルール違反第1号」として自動1ストライクを科され、ビニー・パスカンティーノ(ロイヤルズ)がカウント3-0から自動1ボールで四球になるというシーンもありました。さらに、オープン戦2日目にはレッドソックス対ブレーブスの試合が自動1ストライクによる見逃し三振で終了するという一幕も。ただし、選手たちの多くは「慣れの問題」と考えているようで、ピッチクロックに対する選手たちの反応は上々です。

先にピッチクロックがテストされたマイナーリーグでは、選手たちへのアンケートで約90%が「適応するのに1ヶ月もかからなかった」と答えています。実際、ピッチクロックが導入された最初の週にはルール違反が1試合あたり1.73回もありましたが、6週間後には1試合あたり0.53回まで減少。各球団の40人ロースターに登録されている選手の46%がすでにマイナーリーグでピッチクロックを経験しているというデータもあります。これらを踏まえ、MLB.comのアンソニー・カストロビンス記者は「シーズン開幕までにピッチクロックは気にならなくなるだろう」と述べています。

ピッチクロックの導入により、マイナーリーグでは平均試合時間が25分短縮されました(2021年の3時間3分から2022年は2時間38分)。今年のMLBのオープン戦も日本時間2月28日までに消化された50試合の平均試合時間は2時間39分となっています(2022年の公式戦は平均3時間3分)。オープン戦ということを考慮する必要はあるものの、ピッチクロック導入は試合時間短縮に十分な効果を発揮していると言えるでしょう。50試合のうち3時間を超えたのは7試合しかなく、逆に17試合が2時間半未満で終了しています。

ピッチクロックが期待通りの効果を発揮すれば、今季は3時間を超える試合のほうが珍しくなるかもしれません。サクサクとテンポよく進む試合を楽しむことができそうです。

© 株式会社SPOTV JAPAN