「工事を止めろ」一時騒然 石木ダム収用地初着工 反対住民、体張り抵抗

工事が進む現場で県職員に抗議する住民(右)=川棚町

 「工事を止めろ」。東彼川棚町の石木ダム建設現場のうち、長崎県が強制収用した事業用地での着工が明らかになった28日、体を張って阻止を図る反対住民を県職員が現場から連れ出すなど、一時騒然となった。
 午前9時過ぎから住民や支援者ら最大約35人が集まり、数人が立ち入り禁止の仕切り網をくぐって現場内に入った。切り倒されずに残っていた柿の木にしがみついて抵抗する女性も。ショベルカーに座り込んだ岩下和雄さん(75)は県職員3人に両脇を抱え上げられるようにして引き離された。「やめろ」「年寄りをいじめるな」。見守る仲間から怒号が飛んだ。
 午後も約15人が現場内で抗議の座り込みを始めたため、県は別の場所で工事を続行した。
 工事が始まった収用地を所有していたのは岩下秀男さん(75)。住民側は24日、収用されずに残った岩下さんの土地との境界線について、図面と現状に疑義があるとして、工事中止と測量を県に求めた。だが県は28日朝、別の場所で座り込んでいた住民に対し、測量をせずに工事を進めると伝達した。
 岩下さんは「調べてもらえないのは歯がゆい」と悔しがり、地元の同意を得てから建設するという内容で県と交わした1972年の覚書が「守られていない」と憤った。
 一方、県石木ダム建設事務所は測量に応じない理由について、収用裁決が済んでいる点を挙げ、「住民と作業員の安全を守りながら進める」としている。


© 株式会社長崎新聞社