社説:五輪談合を起訴 利権の構造に切り込め

 巨費を投じたスポーツ祭典を汚した利権構造と決別できるのか。

 東京五輪・パラリンピックの事業を巡る談合事件で、東京地検特捜部はきのう、独禁法違反(不当な取引制限)の罪で広告大手の電通や博報堂など6社のほか、大会組織委員会の元大会運営局次長ら7人を起訴した。

 これに先立ち公正取引委員会は同法違反容疑で電通などを検事総長に告発した。

 なぜ不透明な利権がはびこったのか。スポンサー企業の選定を巡る贈収賄事件と併せ、公開の法廷で全容を解明してもらいたい。

 談合の中核的役割を担ったとされる組織委の元局次長は、電通などの幹部らと共謀し、2018年2~7月ごろ、テスト大会の計画立案業務や本大会運営の受注予定企業を決めたとみられる。

 計画立案業務の契約は計5億3800万円だが、注目すべきは落札企業が総額約400億円に上る本大会運営もそのまま随意契約で受注していた点だ。一連の契約は連結していたと見ざるを得ない。

 受発注が一体となった談合の背景には、世界の注目を集める五輪での失敗は許されないとの考えがあったようだ。電通が主導し、国家的プロジェクトに絡む利権を手放したくないという関連業界の思惑も働いたのだろうが、自由な競争を妨げることは許されない。

 五輪・パラの大会経費は約1兆4200億円と公表されたが、会計検査院は約2800億円多い約1兆7千億円と認定した。競争原理が働かない契約によって事業費が膨らんだ可能性は大きい。

 多額の公費がつぎ込まれたことを考えれば、組織委はもとより国や東京都、日本オリンピック委員会(JOC)の責任は重い。

 再発防止に向け、スポーツ庁やJOCなどが先頃、大会運営組織の在り方について利益相反取引を監視する独立した委員会設置といった11の原則を盛り込んだ指針案を示した。札幌市が目指す30年冬季五輪招致をも見据え、今月中にも正式決定するという。

 ただ一連の不祥事をきちんと検証した上で策定したとは言い難い。利権構造を排し、スポーツビジネスを仕切ってきた電通などのノウハウに過度に依存した体質から脱却できるのか、疑問が残る。

 今後も大規模な国際大会が開かれる。国民の疑念を残したままでは、公費も投入されるスポーツ大会への理解は得られまい。

 法令順守や透明性をいかに確保するのか。スポーツ庁やJOCなどの本気度が問われよう。

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