【WBC】韓国大御所記者 佐々木朗希を「日本野球の象徴」と言い切る

2019年に侍ジャパンU-18で登板した小林朗希 @Getty Images

来月に開幕が迫った野球のワールド・ベールボール・クラシック(WBC)。東京ラウンドの注目といえばやはり3月10日の日韓戦だ。

韓国とのWBCにおける過去の戦績は4勝4敗と五分。そんな相手が注目する日本人選手は誰なのか。

当然のごとく、2017年の第4回大会をケガで出場辞退した大谷翔平(エンゼルス)がもっとも大きな関心を集めているが、韓国の大御所記者は佐々木朗希(ロッテ)について「日本野球の象徴」「190センチ台の投手が育ち始めているから」と高評価する。

韓国と佐々木の縁は、19年に開催されたU―18ワールドカップがある。大会期間を通じた佐々木のたった1度の登板機会が韓国戦で、血豆のために1イニングで降板。韓国内でも注目度は決して高い大会ではなかったが、それでも「怪物投手」としてメディアに取り上げられた。

22年4月に佐々木が28年ぶりの完全試合を達成した時のニュースは、韓国でも大きく報道された。韓国では40年間で一度も記録されていないことであるとともに、高校時代に甲子園出場よりも成長過程の肩を優先した育成方法などにも改めてスポットが当たった。

韓国スポーツ紙の記者として長年同国の野球界を取材してきた業界の大御所で、現在はライターのチェ・ミンギュ氏は「佐々木こそが、日本野球の変化と発展の象徴」と言い切る。

「私が見る限り、日本では180センチ台、もっと細かくいうと187センチくらいまでの投手は育てることはできていましたが、190センチを超える投手はあまり見かけませんでした。だからこそ佐々木が出てきて、日本の投手育成の雰囲気が変わっているのではないかと感じるのです」

チェ氏によれば、今シーズン就任したロッテ・吉井理人監督の育成方法の影響を強く感じるという。佐々木が入団した1年間、当時コーチだった吉井は佐々木にほとんど投げさせなかったことを「吉井氏は選手時代にメジャーでかなり"投手学"を学んだと聞いている。既存の日本の投手の育成法とは違っているように感じる」と指摘する。

ただし、だ。190センチ台の投手なら、侍ジャパンには大谷もいるが。

しかし、チェ氏は「大谷はもはや素材が突出していたという印象。一方で佐々木は、しっかりと壊れないように育てているのではないでしょうか。そこに価値があると思うのです」と話す。

韓国の野球技術面の専門家との話でも、昨年の佐々木は確実にフォームが変わり、従来はあった体のブレがかなり安定してきたという。

チェ氏の目には、そんな佐々木の姿こそが「日本野球の21世紀、あるいは2020年代の象徴」と映る。華麗な大谷の二刀流だけに目を奪われることなく、佐々木を「壊していない」点にも注目している。それを見逃すことは、侍ジャパンそして日本野球の大切な変換点を見逃すことになる――。海外から見る侍ジャパンへの視線だ。

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