「愛は消臭力」ド下ネタ・スリラー『ホーリー・トイレット』最低で最高な極限下サバイバル&サスペンス

『ホーリー・トイレット』© 2021 NEOPOL FILM, KELLNER & ZAPF GBR ©Daniel_Dornhoefer

映画の楽しみとして、誰も知らないような作品を発掘するというものがある。新作公開予定の映画をチェックしていると、気になる映画を見つけた。

『ホーリー・トイレット』

ドイツの映画で、上映時間は90分。原題は「HOLY SHIT!」とのこと。

「目覚めたらトイレ。爆発まで34分。 生き残れるのか!?」
「予測不能のストーリー展開と怒濤のサプライズ描写!」
「空前絶後の新感覚バキュ〜ム・スリラ〜」

長音符が「ー」ではなく「~」であるところが、なんとなくイラっとする。配給は安心のアルバトロス・フィルム。

注目すべきは海外レビューだ。

「この手のどんな映画よりもずっと面白い!!」MilwaukeeMafia.com

「トイレを舞台にした、今までで一番格好いい映画だ。最高の映画になるだろう」HorrorDNA.com

なんだ、この「今日が締め切りだったので急いで書いた」的なレビューは!!

「トイレを舞台にした映画」って、そもそもあまりないだろう!! そして「最高の映画になるだろう」ってなんだ!! なんで「だろう」やねん!! 見たんちゃうんか!?

ヤケクソなキャッチコピーにレビュー。

「これは観たい!! きっと34分後にはトイレが爆発してうんこまみれになるんだろうけど!! もう好きにしてくれ!!」

と、俺もヤケクソな気持ちになって観賞した。

最低であり最高

主人公であろう建築家フランクが目を覚ますと、仮説トイレの中。トイレにはカギがかかっており、おまけに右腕に鉄柱がささっている。

激痛と困惑の中でなんとか状況をまとめると、場所はリゾートホテル建設予定地のトイレで、34分後にダイナマイトで爆発するらしい。

この絶体絶命の状況から脱出できるのか――?

冒頭からおっぱい。画面いっぱいにうつるおっぱい。ちなみに、このおっぱいは本筋に全く関係ない。最低であり最高だ。

フランクの右腕を鉄柱が貫通しており、血が噴き出している。しかも閉じ込められているのは仮説トイレの中。外部との連絡を取ろうとするが、案の定スマホは排便タンクの中で汚物まみれ。つい状況を想像してしまい、気持ち悪くなってくる。画面からアンモニア臭が漂ってきそうだ。

汚物まみれになってスマホを掴むんだろうな、きもくて吐きそう……と思っていると、まず鼻に液体せっけんを塗りたくるフランク。

なるほど!!

その後もフランクは、激痛で身動きが取れない状況の中、トイレ内にあったアイテムを活用していく。

折りたたみ式の定規の先っぽにガムをつけてスマホを操作したり、ハンマーで壁に小さな穴を開けるなどしていくうち、徐々に状況が分かってくる。

この日はリゾートホテル開発の式典で34分後に爆発されること、その裏にある市長の邪悪な計画――。

うんちとスリルとサスペンス、だけじゃない

言わずもがな舞台はずっとトイレの中だが、極限下でのサバイバル術と徐々に明かされていく事件の真相でぶりぶり、いやぐいぐいと世界に引き込まれていく。

冷静に包帯で止血したり、光測定器で自分の状況を分析したかと思えば、絶望して力任せに壁を殴り続ける。絶望して涙したかと思えば、脱出のために痛みに耐えて踏ん張る。

いつの間にか自分がフランクになった気分になる。

もちろん、うんちとスリルとサスペンスだけじゃない。物語のテンションと比例して、人体も爆発四散。クライマックスは気分がスカっとする!! 愛は絶望にも悪臭にも勝るのだ。

「バキュ〜ム・スリラ〜」……すごいじゃないか。

この映画のダメなところを強いて挙げるなら、お食事中の観賞には向いていないところくらいだろうか。

感受性が豊かすぎる方は想像で吐いてしまうかもしれないので、観賞中は、香水の匂いをしみこませたハンカチやタオルなどで鼻と口を覆うなり、消臭スプレーを鼻の穴に直撃させるなりしてください。

文:デッドプー太郎

『ホーリー・トイレット』は2023年3月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

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