止まらない値上げ…北海道企業の知恵と戦略

今週のテーマは、「値上げ」。帝国データバンクが国内の主要な食品メーカー195社を対象に行った調査の結果、昨年1年間で値上げされた食品はなんと2万5700品目以上。今後も値上げは続き、4月の時点で累計で1万を超える見通しだ。去年の2倍のペースだという。原材料高騰に直面する北海道企業の現状を取材した。

【値上げでも販売個数は維持!?“価値”の見せ方に工夫が】

札幌の池田食品。豆菓子やかりんとうなど80種類を製造し、販売している。

創業は1948年。毎日およそ豆菓子2トンを製造。大部分の作業は機械化しているが、知識と経験が必要な部分は今も職人による手作業にこだわっている。

そんな老舗の経営にも、原材料高騰の影響は重くのしかかる。原料となる小麦や砂糖の仕入れ値がおととしから25パーセントほどアップ。うぐいす豆を中心とした主力商品の値段を去年11月、最大で20パーセント値上げした。

値段は上げざるを得ないが、客数を減らす訳にはいかない。そうした考えから、取り組んだのが、パッケージの見直し。

中身が見えるデザインに加え、さらには断面がどうなっているか、味の特徴はどうかという点を消費者に伝えるようにした。結果、値上げ後もそれまでと同じ販売数を維持できているという。

池田社長は「ただ単に値上げという訳ではなくて、付加価値を付けて値上げをすることができて良い対応ができた」と話す。販売数を維持できたことと業務の効率化による残業の削減で、今のところはさらなる値上げには踏み切らずにいる。今回の原材料価格の高騰はある意味、事業見直しのチャンスだと捉えている。

池田社長は「革新していくことでしかのれんを守れない。まだまだ世の中・世界は変わっていくと思うので、客のニーズに近づけられるように頑張っていきたい」と話す。

【廃棄ロス防ぐ値下げ 内容量の見直しも】

千歳発祥のもりもと。和菓子、洋菓子に並んで人気を集めているのが、職人が毎日手作りするパンだ。

いまの一押しは、カレーパン。北海道産ブランド牛十勝若牛のうまみを自家製カレーで引き出し、外はさくっと、中はふわふわの生地で包み込む。もりもとも去年2回、値上げを実施。主力の商品の値段を最大で30円上げた。小麦や容器など原材料・資材が高騰したためだ。

値上げは避けられない状況なのだが、そんな中でも品質を落とさずに少しでも安く商品を提供したい。そうした考えからこんなサービスが生まれた。

時間は不定期で、夕方商品の残り具合によって割引価格で販売している。これまでもりもとは、値下げしてまで売ろうという考えはなかったという。消費環境が厳しくなる中で客数が減るのを食い止めようと、この取り組みを始めた。

この3つのパンだと、935円が500円で買える

この取り組みは、フードロスの削減にもつながっている。個数にすると1日当たり500~600個、廃棄するパンが減ったという。今後も原材料の高騰は続き、さらなる値上げの可能性は否定できないが、値上げ幅を少しでも抑えるべく、新たな取り組みを考えていくとしている。

値上げしたことで売り上げが減ってしまった企業もある。

札幌を中心に「みよしの」を展開するテンフードサービス。人気のギョーザは秘伝のスパイスで味付け。このカレーとギョーザの組み合わせは、北海道民にもなじみ深い。

大きな影響を受けたのは、みよしののもうひとつの主力商品、家庭用のチルドギョーザだ。

原料の小麦とサラダ油、牛肉が高騰し去年4月、それまでよりも6パーセント値上げしたところ、販売数が2割も落ち込んでしまった。

このため来月から1袋の個数をこれまでより3個少ない9個にし、値上げ前の100円台に戻すことを決めた。数は減らすものの、消費者が手に取りやすい値段にすることで売り上げを伸ばそうという戦略だ。

西田社長は「より頻度高く購入してもらえるような値段の設定になっていると思う。大衆が気軽に買える価格は維持して、気軽な食を提供する会社であり続けたい」と話す。

【本州の大手メーカー 工夫とアイデアで経費の大幅削減】

菓子製造のシャトレーゼ。全国に720店、北海道では32店を展開。北海道の店では、アップルパイが人気だという。原材料高騰の影響はもちろん受けたのだが、これまでは店舗コストの見直しなどで全ての商品の値段を据え置いた。

来月からの値上げが避けられない状況となった。とはいえ、値上げをするのは全品ではなく一部。値上げは最小限に抑えるをモットーに、事業の効率化を一層進めることを決めた。

その一つが、この番重というケース。ずれの防止、緩衝の意味を込めて中にパッキンを挟んでいたが、容器の形をデザインに組み込むことで緩衝材を使わずに済むようにした。

この取り組みで1000万円分の経費を削減でき、値上げを最小限に抑えることにもつながった。現場も、ゴミを捨てる必要がなくなり負担の軽減にもつながっている。

このほかにも従業員から募った改善提案をもとにアイスのパッケージ素材を安い物に変えるといったコスト削減を続けている。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「値上げをするなら付加価値を」と話した。原材料価格の高騰などで値上げは避けられない状況になっているが、その中でもできる工夫、新たな付加価値が生み出せるかもしれない。企業の知恵が試されている。
(2023年3月4日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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