家族題材の短編3作 岡山で上映会 4、5日 市在住の安井祥二が監督

映画「スイート」の一場面

 岡山市在住の映像作家、安井祥二(41)が監督した自主映画の上映会が4、5日、イオンシネマ岡山(同市北区下石井)で開かれる。母娘の葛藤を描いた最新作「スイート」など家族を題材にした短編3作品で、全て県内で撮影した。初のシネコンでの上映を前に、安井は「多くの人に見てもらえる機会ができてうれしい。それぞれの作品に込めた思いを自由に感じてもらえたら」と話す。

 安井は倉敷芸術科学大で映像を学び、フリーの助監督としてテレビや映画で活躍。その後企業などのプロモーション映像を手掛ける会社を立ち上げ、一度は映画製作から離れたが、社会現象になった低予算映画「カメラを止めるな!」(2017年)に刺激を受け、情熱が再燃した。

 今回上映する「つれづれ」と「からっぽのシュークリーム」は、19年に再入学した映画・演劇の専門学校の課題として撮った作品。「つれづれ」は離婚して長年息子と離れて暮らす中年男性と、同僚の不器用な青年の交流を描く。「からっぽ―」は、妻の妊娠を喜ぶ夫が、検査に訪れた病院で子どもができない障害があると告げられ苦悩する…との内容で、自らの不妊経験に着想を得た。アジア最大級の国際短編映画祭・ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2021のジャパン部門で、観客らに選ばれる「オーディエンスアワード」に輝いた。

 「スイート」には、教育熱心な母親と小学2年生の娘が登場する。母の束縛を受ける娘が、自由な表現を促すピアノ講師と出会い、解放への憧れと罪悪感の間で葛藤する。脚本を務めた妻の経験が基になっているといい、安井は「愛情表現が相手を苦しめることもある。受け取る側が愛だと感じるための条件は何だろうということを描きたかった」。同作は国内各地の短編映画祭などでグランプリや最優秀主演俳優賞を受賞している。

 今夏には初の商業長編映画の製作に着手する予定。「資金難や創作の苦しみから『僕が作る意味は本当にあるのか』と迷い、映画を作れなかった時期が長かったので、これからはとにかく作品を撮り続けたい」と意気込む。

 上映会は各日午後2時半~4時。両日とも上映後に舞台あいさつがある。1200円。

「短い時間の中で、どれだけ主人公の生き様や感情を伝えられるかを大切にしている」と話す安井さん

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