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スズキは2023年2月19日〜25日、イタリアのサルディーニャ島にて、新型アドベンチャーモデル・Vストローム800DEの「WORLDWIDE PRESS TEST RIDE」を実施。フリーランスライターの谷田貝 洋暁がこの国際試乗会に参加してきた。2023年3月6日現在、このVストローム800DEは日本国内への導入は決定しているものの、発売日、価格などの詳細は未定。また試乗車は海外仕様であり反射板の有無など、国内モデルとは一部仕様が異なるが、来るべき国内導入に向けてぜひ購入検討の参考にしてほしい。
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スズキ・Vストローム800DE(海外仕様)
スズキのVストロームシリーズは、流行りのアドベンチャーバイクの中でちょっと変わった立ち位置にいる。現行のVストロームシリーズは、1050シリーズ、650シリーズ、250、SX(日本未発売)といった排気量違いのファミリーを形成しているが、どの車両もどちらかというとオンロード、つまり舗装路での走行性能を重視したアドベンチャーモデルというのが、シリーズ全体に共通するキャラクターとなっている。特に1050シリーズ、650シリーズなどはアルミのツインスパーフレームを採用し、その車体構成はロードスポーツバイクに近い。
しかし、近年のダート性能重視のアドベンチャーモデルの人気が高まっており、ついにスズキもフロントタイヤに21インチサイズを採用するダート性能重視のアドベンチャーモデルの“DE”シリーズをVストロームシリーズにラインナップすることになったのだ。
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“DE”とは、デュアル・エクスプローラーの略であり、舗装路も未舗装路も両方(Dual)探索できる冒険者(Explorer)という意味だ。
現在、この“DE”を冠するモデルにはVストローム1050DEと、Vストローム800DEの2機種があり、両車ともフロント21インチの走破性の高い大径ホイール&長めのサスペンションストロークを採用しているのが特徴。
つまりツーリングライダーの中でも、「荷物を積んでのキャンプ旅や長旅が好きで、しかもちょっとは未舗装の林道にも入り込みたい!」なんていう冒険心あふれるライダーにぜひおすすめしたい。
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アドベンチャーバイクで主流の“クチバシ”デザインは、Vストローム800DEのご先祖様であるファラオの怪鳥と呼ばれたDR-Z(DRジータ)から始まった。
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メーター上にはφ12㎜のパイプが配されており、GPSなどのアイテムを装着可能。ボルト留めのフロントスクリーンは15㎜幅、3段階で調整が可能。
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ハンドガードも空力をしっかり意識しており、フロントスクリーンと合わせて走行風をしっかり受け流すようになっている。
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メーターの左脇には、USBポートを用意。最大出力は5V2Aで、スマートフォンの充電も可能。シート下に電源の取り出し口をオプションで増設することも可能
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樹脂製のリヤキャリアを標準装備しキャンプ道具などの荷物も積みやすそう。このリヤキャリアは1050や650にも装着可能だとか。
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シート下スペースはほとんどなく、かろうじてタンデムシートの下にETC車載器が入るくらい。ETCはオプションの電源電源の取り出し口との同時装着は難しいそうだ。## POSITION & FOOTHOLD
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テスター/谷田貝 洋暁:172cm 75㎏
シート高は855㎜とアドベンチャーバイクらしく高めに設定されているが、跨り部分がしっかり絞り込まれているため、足着き性に関しては数値ほど悪くない。172cmの筆者の身長で両足をつこうとすると両足の母指球がかろうじて接地する。ちなみにオプションにはプラス30㎜のハイシートと、マイナス20㎜のローシートも用意される。
主要諸元(海外仕様)■全長2345 全幅975 全高1310 軸距1570 シート高855(各㎜) 車重230㎏(装備)■水冷4ストDOHC並列2気筒 776cc 84ps/8500rpm 7.9kg-m/6800rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20ℓ(ハイオク) ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70R17 ※日本国内への価格・導入時期は3月6日時点で未定
【SUZUKI / Vストローム800DE : impression】 オンロード性能
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アドベンチャーバイクは、オフロード性能とオンロード性能のバランスでそのキャラクターが決まる。Vストローム800DEは、21インチホイールを採用しながらも、しっかりオンロード性能を確保しており、峠道でスポーティな走りも可能。
“DE”、デュアル・エクスプローラーたる二面性である“舗装路”での性能から見ていこう。そもそもとしてVストロームシリーズは“舗装路”での性能を重視したアドベンチャーモデルであることは説明した。
長兄であるVストローム1050シリーズなどは、“イタリア北部のステルビオ峠という九十九折の山岳道路で最強”なんて、コンセプトで作られたくらい。峠道をガンガン攻められてこそVストロームなのだ。
新作のVストローム800DEも、タート走破性アップのために21インチホイールは履いているものの、ワインディングはかなり攻め込めることに驚いた。オフロード性能重視のフロント21インチホイールのアドベンチャーにありがちな舗装路上での車体の剛性不足感が少なく、ワインディングでは腰を落として曲がるようなスポーティなコーナリングも可能なのだ。
開発陣によれば、このVストローム800DEのロードスポーツ性の高さは、リヤタイヤにアドベンチャーバイクとしてはちょっと小さめな17インチサイズのホイールを採用したことに加え、専用設計したタイヤのパターンに秘密があるという。
タイヤに関しては市販のダンロップ・トレイルマックスミクスツアーに対してスペシャルチューンを施している。フロントタイヤの斜め方向の溝は2㎜拡大、またリヤタイヤの斜め方向の溝は3㎜拡大してダート性能をアップしているのに対し、リヤタイヤの縦方向の溝はむしろ幅を狭くして舗装路での安定性をアップしているのだとか。
これらの工夫により、Vストローム800DEはフロント21インチサイズのアドベンチャーモデルでありながら、類い稀なロードスポーツ性を実現。やろうと思えばハングオンに近い腰を落としたライディングだって可能だった。
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リヤのホイールサイズがアドベンチャーバイクで一般的な18インチではなく、17インチなのは、舗装路でのスポーツ性能のため。
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リヤショックはもちろん、フロントサスペンションにもプリロード機構を備え、あらゆる走りに応える。とくにリヤのプリロード機構は工具なしで調整可能で、荷物の積載や二人乗りなどの状況に合わせて簡単に変更できる。
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UP/DOWN対応のクイックシフターを備えるとともに、アシストスリッパークラッチを内蔵。クラッチレバーの操作も軽い。
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燃料はハイオク指定だが、タンクは大容量で20ℓを確保。満タン状態から450kmも走ることができるという。
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シートは前部が絞り込まれて足着き性をアップ。それでいて着座位置は快適で長時間のライディングでも疲れない快適性を持っていた。
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市販のダンロップ・トレイルマックスミクスツアー(左)に対して、Vストローム800DE専用開発のタイヤ(右)は、ダート性能アップのために斜め方向の溝が3㎜ワイドとするも、縦方向の溝はロードセクションの安定性のためにむしろ幅を狭めている。
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これだけのロードスポーツ性能を確保しながら、快適性もあり旅感も強い。とにかく“汎用性が高くて使い勝手がいい”というVストロームシリーズのDNAをしっかり受け継いでいる。## 【SUZUKI / Vストローム800DE : impression】 オフロード性能
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となると気になるのは“DE”、デュアル・エクスプローラーのもう一方の性能である“未舗装路”での性能である。これも走ってみれば実に高かったのだ。
新設計の776ccのパラレルツインエンジンは、特許を取得した“スズキクロスバランサー”によってエンジンそのものの前後長を短縮。これにより21インチのフロントタイヤを車体側へと引き寄せられたことで“未舗装路”に最適な、前後タイヤにかかる荷重配分を実現できたのだ。
実際、走ってみてもこの前後タイヤにかかる荷重配分が秀逸で、滑りやすい“未舗装路”の上でも、フロントタイヤが路面をしっかり捉えてくれる。おかげでとても安心してダート路面を走ることができるのだ。
新採用の“Gモード”っていったいナニ?
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新しいトラクションコントロールのモード、“Gモード”を使えば気持ちよくパワースライドがキメられる!
近年、大型のアドベンチャーバイクにとってなくてはならないのがトラクションコントロールシステムだ。このトラクションコントロールは、スロットルの開けすぎなどでリヤタイヤが空転、スリップを起こした際に自動的にエンジン出力を抑えてスリップダウンを抑制する電子制御システムだ。
車体が大きく重く、しかもハイパワーな重量級のアドベンチャーバイクでダート走行をする際にはなくてはならない機能であり、近年のアドベンチャーブームもこのトラクションコントロールシステムの進化が下支えしていると言っても過言ではない。もちろんVストローム800DEもこのトラクションコントロールを搭載している。
このトラクションコントロールシステムには、各社の電子制御に対する考え方が非常に色濃く現れるのだが、スズキはこのVストローム800DEに“Gモード”と呼ばれる特別なトラクションコントロールを搭載することにしたのだ。
“Gモード”とはグラベル(未舗装)モードである。つまり未舗装路を走るための特別なトラクションコントロールのモードというわけだが、走ってみるとこの“Gモード”の出来が秀逸だったのだ。
というのも未舗装路、とくにコーナリングにおいてはスロットルの開けすぎによるリヤタイヤが空転が怖いものだ。この無用な空転を防ぐため、Vストローム800DEにはまず1〜3の介入度のトラクションコントロールが用意されている。しかし、オフロードを走り慣れたライダーが未舗装路をアグレッシブに走る場合には、時としてこのトラクションコントロールの存在が煩わしく感じることがある。
とはいえ、走らせるのは230kgの大型アドベンチャーバイクである。制御が煩わしいからといってトラクションコントロールのシステムを完全にオフにして100%乗り手のスキルだけで操る状態にするのもなかなか度胸がいるものだ。誰だって大切なバイクで転倒したくないからだ。
そんなジレンマを解決すべく登場したのが“Gモード”というわけ。他の1〜3のトラクションコントロール設定が、介入タイミングが違うだけで最終的にはスリップを完全に抑えてしまう制御を行うのに対し、この“Gモード”では点火タイミングをコントロールすることでスリップ具合を緩やかにしてライダーがコントロールしやすくするような制御を行なっている。トラクションコントロールがいい感じでリヤタイヤを空転させてくれるというわけだ。
実際、この“Gモード”を使って未舗装路を走ってみると、非常に走りやすく感じる。コーナーでスロットルを開けた際にいきなり出力が高まるのではなく、スライドを発生させながらも穏やかな過渡特性でパワーが盛り上がっていくおかげで、ライダーがスライドをコントロールしやすい。だから、コーナーで気持ちよくスロットルを開けながらコーナリングを楽しむことができるのだ。
アドベンチャーバイクのオーナーとなったならば一度は憧れるスライドコントロールであるが、Vストローム800DEの“Gモード”を使えば転倒の可能性が非常に少なく、パワースライドを体感でき、スライド時のマシンコントロールをより安全な状態で身につけることができる。
つまりこの“Gモード”を使うことで効果的なスライドコントロールの練習が可能なのだ。この“Gモード”で走り込めば、いずれはトラクションコントロールをオフにしての大きなパワースライドだって実現可能かもしれない。
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ダート路面で有利な21インチサイズのホイールを採用。スポークホイールで前後ともチューブレス仕様。
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特許のスズキクロスバランサーを使い、前後長の短いパラレルツインエンジンを新開発。オフロードでの走りやすさの秘密はこのコンパクトなエンジンにある。
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燃料タンクは20ℓと大きく重いハズなのだが、走り出してしまえば車体が非常にコンパクトに感じる。ワイドなアルミ製テーパーハンドルを装備。
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ダブルディスクに加え、ABSのモードは3種類用意。介入度の違う2つのモードに加え、リヤブレーキのABS制御をカットするOFFモードを装備する。
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サスペンションストロークは前後とも長めの220㎜を確保。この数値は大きければ大きいほど、オフロード性能が高いということだ。
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スタンディングする際に重要なのがステップの食いつき。ゴムパッドは取り外すことも可能で、実際かなりブーツの食いつきがよくなる。
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フルカラーのデジタルメーターを採用し、設定変更項目が画面右上あたりに3つ並んでいる。右から「トラクションコントロール(4種類+OFF)」、「ライディングモード(3種類)」、「ABS(3種類)」となっている。## まとめ
Vストロームファミリーに加わったVストローム800DE。ダート走行のための21インチホイールのマシンではあるが、オンロード性能も十分高く、20ℓタンクによる長旅も十分可能。
しかも、ダート路面に入ればかなりの走破性を見せる。一番近いライバルは、ヤマハのテネレ700やBMWのF850GSあたりが最も近い。テネレ700ほどダート性能には振ってないが、F850GSよりもダート性能は高く、それに準じるような快適性や旅感もそなえているという印象。しかも、Vストローム800DEには峠道などでのロードスポーツ性能という大きな強みがある。
加えて、これらライバルに決定的な差をつける“Gモード”の存在。ライバルたちとではなかなか到達するが難しい“スライドコントロール”の世界に、Vストローム800DEとなら意外なほど簡単に入り込めるのだ。
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