復活が期待される漫画家とは、年間2000冊読破の有名書店員が熱望

2018年に売り上げが紙コミックを追い抜き、2021年には紙と電子合わせて6759億円と過去最大規模に上った市場をけん引している電子コミック。総合電子書籍ストア・ブックライブの書店員で、10年以上に渡って年間2000冊以上のマンガを読み続けるすず木さんに「新作が待たれる漫画家」をテーマに話を聞いた。

◆年間2000冊読破を10年超

千葉出身のすず木さんは2005年にBookLiveの前身であるビットウェイに入社。事業統合により2013年から同社でサイト運営、おすすめマンガの紹介などの企画にも携わる。人生を変えた作品は「東京BABYLON」(作・CLAMP)で「小学校3年の時にはオタクになっていて、順調に中二病に育ち、気がついたらマンガを売る仕事に就いていました」と振り返った。そんなすず木さんに、新作が待ち遠しい漫画家3人を挙げてもらった。

一人目は小沢としお。不良マンガの「フジケン」「ナンバMG5」で知られ、2018年に連載を終えた「Gメン」が直近の作品にあたる。

「フジケン」(作・小沢としお/秋田書店)※画像はブックライブより引用

2022年の同ストアにおける少年・青年マンガ売り上げトップが「東京卍リベンジャーズ」(作・和久井健)で、不良マンガの注目が高まっている。また、「ナンバMG5」は昨年春にテレビドラマ化され、「Gメン」は今年夏の実写映画公開が予定されている。

すず木さんは「今までとは違う新しい小沢先生のヤンキー漫画を読みたいです。これまでもアウトローではなく、ギャグが混じったり、家族観が描かれもしました。ドラマ『今日から俺は!!』のヒットが最近のドラマ化の理由の一つでしょうけれど、金髪リーゼントの不良は今の街中にはいなくても、小沢先生が描くキャラクターは現代にマッチしていると思います。令和でどのようなヤンキーを描くのか、とても興味があります」と熱望した。

「ナンバMG5」(作・小沢としお/秋田書店)※画像はブックライブより引用
「Gメン」(作・小沢としお/秋田書店)※画像はブックライブより引用

二人目は空知英秋。アニメ、実写映画化された「銀魂」は単行本全77巻、2018年に15年間の連載を終えた。

すず木さんは「個人的な趣味が強いのですが『銀魂』は生き生きとしたキャラクターが大好きでした。ギャグもいける、シリアスもいける、ヒューマンドラマも詰まっている。どこを取っても面白い。作画の迫力がマンガとして引き込まれました。ギャグとシリアスがバランス良く飽きさせない。空知先生には本当に連載お疲れ様という気持ちが強いんですけれど、やっぱり早く次の作品を描いてほしいと思います」と語った。最も好きなキャラクターは「銀さん(坂田銀時)は捨てがたいんですけど、うーん、土方(十四郎)ですかね」とファン目線を全開させていた。

三人目は奥瀬サキ。「低俗霊狩り」「コックリさんが通る」など、オカルト要素をモチーフとした作品で知られる。

すず木さんは「オカルトと風俗を合わせた作品を描かせたら天下一品だと思っています。最近は原作者としての活動が多く、ご自身ではそれほど描かれている印象がありませんが、続きを待っている作品も多いです」と説明。その上で「パパ活、メン地下、ホストにはまる女たち、など今のテーマを取り入れたオカルト漫画を描いたらどうなるんだろう。絵が非常に繊細かつ耽美なんですけど肉感的なところは他にないと思います」と興味深そうに語った。

「Flowersフラワーズ <増補改訂版>」(作・奥瀬サキ/幻冬舎コミックス)※画像はブックライブより引用

上記3人以外には「古谷実先生、吾峠呼世晴先生、『進撃の巨人』が終わってそれほどたっていないですが諫山創先生も新作が楽しみです」と列挙した。「どの漫画家さんも時代の描き方、取り入れ方が上手で、エッジが効いていて面白い。令和の時代をどのように取り入れるかを見せていただきたいです」と締めくくった。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

© 株式会社神戸新聞社