アルコール依存症の船長 セレブ乗客の無理難題をいなす 「逆転のトライアングル」本編映像

第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した映画「逆転のトライアングル」(公開中)から、船長がお客様をゴージャスにおもてなしをする”キャプテンズ・ディナー”シーンの、本編映像の一部が公開された。

ワイングラスが床を転がるような大嵐の中で開催されるディナーは、船長(ウディ・ハレルソン)のお出迎えから始まる。アルコール依存症で普段は自室にこもりっきりの船長は、クルーの指示に従いながら身支度を整え、不自然に傾いた姿勢で副船長とともにゲストを迎える。1人の女性が「船の帆が汚れていた」とクレームを入れてくる。それに対し船長は「(帆は)洗えないと思いますよ。なぜなら発動機船なので帆はついてない」と穏やかに返すが、女性は逆上。「カタログで確認した」と否を認めない。船長は慣れた様子で「分かりました。帆を洗いましょう」とウインクし客をなだめる。

毎日世界中のセレブリティから押し付けられる無理難題に応え、そのストレスを酒で洗い流そうとする船長の苦労があらわになるシーンで、船長役を演じているのはウディ・ハレルソン。オストルンド監督はウディとの仕事について、「彼とは出演交渉時に、アメリカの左翼と北欧の左翼の違いについて話したんだけど、それがとても興味深かった。酔っぱらった船長がセレブたちに『グダグダ言わずに税金を払え』というセリフがあるんだけど、それはウディとの会話からヒントをもらった。僕らスウェーデン人は国への信頼が厚いから、税金は有効活用されると信じている。だけどウディが言うには、アメリカの左翼は『税金なんて払って何になるんだ?ロビイストや軍需産業に流れるだけだろ』と全く信用していない。その考えは僕にはまったくなかったから面白いなと思ったんだ。もともと作家の言葉の引用で船長のセリフの一つにしようと考えていたんだけど、彼からその考えを聞いて、この言葉を何度も登場させようと思いついたんだ」と、ウディとの会話がきっかけで、より面白味にあふれたシーンが生まれたことを明かしている。

「逆転のトライアングル」は、ファッション業界とルッキズム、現代階級社会について描いた作品。監督は、「ザ・スクエア 思いやりの聖域」で第70回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞し、本作でカンヌ史上3人目の2作品連続パルムドール受賞を果たしたリューベン・オストルンド。「キングスマン:ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソンが主演を務め、本作が遺作となったモデル出身のチャールビ・ディーンのほか、ドリー・デ・レオンやウディ・ハレルソンらが出演する。3月に発表されるアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされている。

【作品情報】
逆転のトライアングル
上映中
配給:ギャガ
Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

© 合同会社シングルライン