【レビュー】超高齢化の日本に訴えかける。58年の映画『楢山節考』NYで

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

© 1958 Shochiku

ニューヨークで日本の文化を紹介する「ジャパンソサエティ」では月例で、日本の名作が上映されています。今月の映画は、木下恵介監督の『楢山節考(ならやまぶしこう)』(1958年、原作:深沢七郎)。

同作は、食料不足が続く貧しい村で70歳に達した老人を楢山に遺棄する恐ろしい因習を題材としたもの。慣わしに従い年老いた母を背板に乗せ真冬の楢山へ捨てに行きます。

母はこの年で健康な歯を恥じ岩に打ち付け自傷。山に行きたくないと拒否する村人がいる中、母は自ら進んで「楢山まいり」の日を早めたいと言います。無言で母を背負い山に登っていく、心優しい一人息子。神様がいると言われる山の頂上で見た実際の光景は・・・。

両親が高齢となった人、また自身も数十年後にそのような年代になる人には切ないシーンでした。そして若い世代にとっても他人ごとではありません。人は必ず老い死ぬのですから。

© 1958 Shochiku

現代日本では人口減少と超高齢社会が深刻化する中、これといった解決策は見出されておらず、対応策について意見が分かれています。しかしいかなる場合であってもネット上で推奨、炎上した集団自決のような結末はあってはなりません。また社会が高齢者をそのような思想に追い込んだり、生きていて恥に思うような風潮は決して許されません。

58年の映画でしたが、現代の日本人にも大いに関わってくる題材でした。歌舞伎の様式が取り入れられている演出も興味深かったです。

上映室は日本人よりローカルの人が多かったです。所々感嘆の声が上がっていました。アメリカはどのようにこの映画を受け止めたでしょうか。

『楢山節考』(The Ballad of Narayama)

1958年/98分/35mm/カラー/日本語上映・英語字幕付き

(35mmフィルム 提供・国際交流基金)

監督:木下恵介

出演:田中絹代、高橋貞二、望月優子ほか

###

Text by Kasumi Abe 無断転載禁止

© 安部かすみ