患者だけが入れる「大谷記念館」 越谷の歯科医院、二刀流に魅了の理事長が収集

待合室を改修した展示スペース

 間もなく開幕する野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。3大会ぶり世界一を目指す日本代表「侍ジャパン」の注目は、何といっても大リーグ・ロサンゼルスエンゼルスの大谷翔平選手。投打の二刀流で世界中を熱狂させたボールやバットなどお宝の数々が、実は埼玉県越谷市にあった。同市相模町の「かみむら歯科・矯正歯科クリニック」。待合室で順番待ちする患者は時間を忘れ、ショーケースに目を輝かせる。

 土の汚れが残るボール、衝撃で塗装のはがれたヘルメット、根元から真っ二つに折れたバット…。並ぶのはどれも大谷選手が実際に大リーグ公式戦で使用したものばかり。中には2021年リーグMVP記念で販売された、世界限定24体の特大ボブルヘッド(首振り人形)もある。右も左も大谷一色。歯科医院とは思えない野球ファン垂ぜんの夢空間が広がっている。

 「歯医者は誰もが本当は行きたくない場所。そんな思いを払拭し、楽しみながら待ち時間を過ごしてほしい」と理事長の上村英之さん(62)。待合室を患者のみ公開する“大谷記念館”に改修した。

 大谷グッズを集め始めたのは21年から。大リーグ公式オークションを連日チェックし、希望品を狙って落札。これまでの購入総額は約2千万円。最高額は昨年オールスターで、大谷選手が着用したヘルメットの408万円になる。

 バットやボール以外にも、試合時ベンチで使われた手書きメンバー表や、大谷選手がホームランを打った際に踏んだベース、投球時の滑り止め粉「ロジンバッグ」など、貴重な品々は50点以上にのぼる。

 上村さんが大谷選手に魅せられたのは、前人未到の二刀流に挑み続ける生きざま。周囲から何と言われようと、自分の信念を貫き挑戦し続ける姿勢に大きな感銘を受けた。

 大谷選手が活躍するたびに、もちろんグッズも増加。うれしい悩みは当分続きそうで、現在は2階に新たな展示スペースを増設中だ。

 間もなく始まるWBCへ向けて「日本を背負う戦い。もちろん世界一を期待」と上村さん。ファンの心境としては「大舞台でけがだけはせず、またシーズンで大活躍してほしい」とエールを送った。

バットやボールなどお宝の数々
大リーグ公式オークションを連日チェックし落札しているという

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