ダイハツのスーパーハイトワゴン「タント」。2022年には流行りのSUVテイストを盛り込んだ新モデル「ファンクロス」を追加し、注目を集めています。軽自動車の中でも特に人気のあるタントの価格や内装、スペックやおすすめグレードなどをカーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが詳しく解説します。
タントのおすすめポイント
・左側の前後のドアを両方ともに開くと開口幅が1490mmに広がる
・後席の座り心地が先代型に比べて改善され、4名が快適に乗車できる
・後席を格納すると容量の大きな荷室にできる
タントのレビュー・評価
総合評価 4.0 ★★★★☆
5段階採点の解説
外観
スーパーハイトワゴンの定番的なデザインです。ファンクロスは、SUV風のパーツを装着することで、外観を個性的に仕上げました。
内装
インパネなどの内装は実用重視のデザインです。頭上が広く、後席はスライド位置を後端に寄せると、足元空間が大幅に広がります。
走行性能
ノーマルエンジンは、車両重量に対して駆動力が不足しています。走行安定性は、スーパーハイトワゴンでは優れた部類に入ります。
運転のしやすさ
水平基調のボディは四隅の位置が分かりやすく、視界も良いです。最小回転半径は、売れ筋の14インチタイヤ装着車なら4.4mに収まります。
乗り心地
走行安定性を向上させた代わりに乗り心地は硬めです。路上の細かなデコボコを伝えやすく、段差を乗り越えた時も硬さを感じます。
価格の割安度/燃費/維持費
軽自動車のスーパーハイトワゴンは競争が激しく、タントも価格が割安です。標準ボディのXは実用装備を充実させて150万7000円です。
総合評価の解説
左側は中央のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させたため(ミラクルオープンドア)、前述の通りワイドに開きます。子育て世代のユーザーは、ベビーカーを抱えた状態で乗車できます。
車内が広いため、助手席を予め前側へスライドさせておくと、子供をチャイルドシートに座らせる作業も車内で行えます。そのまま降車せずに、運転席まで移動できます。また高齢者も、広い開口部により、体をよじらずに乗り降りできます。
荷室のアレンジには注意しましょう。2022年のマイナーチェンジ前は後席の背もたれを前側に倒すと、座面も下がり、簡単に床の低い荷室に変更できました。
それがマイナーチェンジ後は、後席の背もたれが前側へ倒れるだけです。荷室に変更した時の床の位置が、100mmくらい高まりました。この影響で荷室高が不足しています。
その代わり車内後端に備わるデッキボードを高い位置にセットすると、倒した後席の背面と繋がり、広くて平らな荷室になります。デッキボードの下側は、アンダーボックスとして小物類を収納できます。
車内の広さは同じスーパーハイトワゴンでタントのライバルであるホンダ N-BOXなどと同様に広いですが、タントの使い勝手には、前述のような個性があります。ほかの車種との比較も含め、ご自分の使い方に合っているかを確認して選びましょう。
良かった点
・全高が1700mmを超える軽自動車の中では走行安定性が優れている
・居住性と乗降性が良く、子育て世代に向けた機能も多彩
・標準ボディとスポーティなカスタム、SUV風のファンクロスも選べる
気になった点
・シートアレンジが簡素化され、後席を格納した時の荷室高が減った
・時速40km以下で街中を走ると、乗り心地の粗さを感じる
・ノーマルエンジンは、登坂路でパワー不足になりやすい
タントの基本スペック・価格表
タントのボディサイズ
タントの燃費
タントの発売日と納期の目安
現行モデルのタントは2019年7月9日に発売されました。
2022年10月3日には従来のタント、タントカスタムの一部改良と、SUVテイストを盛り込んだ「タントファンクロス」が新たに登場しました。
納期と今後のモデルチェンジ予想
納期は比較的短く、3〜4か月に収まります。発売が2019年で、2022年にはシートアレンジまで変更を受けたため、当分の間は現在の状態を保って販売を続けます。
今後、特別仕様車の追加などは行いますが、規模の大きな変更は行いません。
最近の売れ行き&人気度
2019年に発売された現行型は、先代型に比べて売れ行きが低調でしたが、2022年の改良で持ち直しました。軽自動車では2位の売れ行きで、今後も現在の販売水準を保つと思われます。
タントのリセールバリュー
リセールバリューの5段階採点:3点
タントは売れ筋の軽自動車ですから、中古車市場の流通台数も多いです。希少性が生じることはなく、数年後の売却額が際立って高まることもありません。
しかし定番の実用的な軽自動車ですから、中古車の需要も多く、リセールバリューに不満が生じることもないです。
タントのおすすめグレード
おすすめグレード:標準ボディのX(150万7000円/2WD)
機能と価格のバランスでは、標準ボディのXグレードが最も割安です。衝突被害軽減ブレーキや左側スライドドアの電動機能などを標準装着して、価格を150万7000円に抑えました。
登坂路を試乗してパワー不足を感じた時は、Xターボグレードも検討します。価格は11万円高いですが、最大トルクはノーマルエンジンの1.7倍に増えて、WLTCモード燃費は7%しか悪化しません。ターボも高効率です。
なお納期の遅延に対応して、アイドリングストップ非装着車も設定しましたが、価格が下がることはありません。
ライバル車との比較
一番のライバル車はホンダ N-BOXです。タントに比べてインパネ周辺の質感が高く、前席の座り心地も快適です。エンジンなどのノイズはタントよりも小さく、街中での乗り心地も優れています。
その代わりスライドドアは一般的なタイプで、タントの左側のようなワイドな開口幅は得られません。後席の座り心地は、N-BOXは柔軟性が乏しく、タントが快適です。車内の移動性もタントが優れています。
さらにタントは操舵に対する反応が素直で、走行安定性も上まわります。つまり両車は一長一短で、N-BOXは上質感や付加価値が魅力です。タントは実用性に重点を置いて開発されています。
タントのカラーバリエーション
タント
タントカスタム
タントファンクロス
タントを販売店で試乗するときのポイント
タントの特徴は、ミラクルオープンドア(左側面のワイドな開口部)、車内の移動のしやすさなどです。そこを確認しましょう。また後席を格納した時の荷室高、荷室を平らにするデッキボードの使い勝手もチェックします。豊富に装着された収納設備なども見ておきましょう。
試乗を開始したら、できれば路面の荒れた場所を時速40km以下で走り、乗り心地の粗さや突き上げ感を確かめます。登り坂も走り、パワー不足を感じたら、ターボエンジン搭載車も試乗しましょう。
【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:小林 岳夫/茂呂 幸正】