Z世代の女性オタクは新作を観ない?いまだ『ユーリ!!!』『BANANA FISH』が支持されるわけ

1月に開催された、BLレビューサイト「ちるちる」が開催するセミナーに腐女子編集部員が潜入! 昨今の腐女子が好きな作品は最新アニメよりも昔のアニメという調査結果が発表されました。その理由とは?

「2023年 腐女子の平均消費額と推しコンテンツ」をテーマとしたセミナーに、numanの腐女子編集部員が参加してきました! 講師として解説してくださったのは、「ちるちる」を運営している株式会社サンディアスの代表取締役社長であり、腐女子マーケティング研究所所長である井出洋さん。

約500人の「ちるちる」ユーザーを対象に集計したアンケート結果をもとに、さまざまな腐女子の推し活事情からBL界隈の動きまで詳しく伺いました。【前編】の本記事では、好きな作品についての調査結果をお届けします。腐女子の好きな作品は数年前から変わっていなかった……!?

CD『Oh! スケトラ!!! ユーリ!!! on ICE』オリジナル・スケートソングCOLLECTION

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アニメが一般化した昨今。ディープなオタクは過去作品を好む

「アニメはBLと切っても切り離せない、カップリングの王道」と井出さんも言うように、アニメのコンテンツからBLの世界に足を踏み入れた人は多いはず。では、現在腐女子に人気のあるアニメはいったい何なのでしょうか。

「実は2020年にとったアンケート結果と、あまり変わっていないんです」(井出さん・以下同)好きなアニメは何かといったアンケートに対し、ランキングの上位作品として名前が挙がっていたのは、1位から順に『呪術廻戦』『BANANA FISH』『ハイキュー!!』『ユーリ!!! on ICE』『SPY×FAMILY』。週刊少年ジャンプにて連載中のダークファンタジー『呪術廻戦』がかろうじて1位に、2022年からアニメ放送されている『SPY×FAMILY』が5位にランクインしているものの、3位『ハイキュー!!』はすでに連載が終了、4位『ユーリ!!! on ICE』に至ってはアニメ放送からすでに約6年も経っている作品です。

好きなアニメのアンケート結果(腐女子マーケティング研究所作成)

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6位以下には『進撃の巨人』や『Free!』『名探偵コナン』など、いずれも連載終了作品やアニメ放送から時間が経った作品、または昔から連載されている作品が目立ちます。「腐女子の方は興味関心の移動が激しいと思われていますが、自分がいいなと思った作品はずっと追い続けます。コンテンツによって長く愛されるものとそうではないものが両極端に存在するという傾向が見られます」実はこの結果は、Z世代(※1)でも変わらないそう。意外なのが、2019年にアニメが放送され爆発的ヒットを記録した『鬼滅の刃』が、Z世代のランキングでも急激に順位を落とし、そのほかの過去作品に埋もれてしまっていること。

※1……便宜上、10~20代をまとめてZ世代と総称しています。「若い方は新しいものが好きだろうと条件反射で思ってしまいますが、昔の作品も観ています。むしろ最近の作品はそこまで受け入れられていないようにも思われます」

10代・20代の好きなアニメに関するアンケート結果(腐女子マーケティング研究所作成)

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「『鬼滅の刃』の順位が下がっていることからわかるように、一般的には受け入れられるものがオタク層には受け入れられ難くなってきているのかもしれません」と井出さん。

「通常はシリーズが続くにつれ人気が下降するものですが、いまのアニメ界では逆の現象が起きているといいます。例えば、2022年公開の劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』はシリーズ25作目にも関わらず、過去最高収益を記録。これまでアニメを観なかった層が参入してきた結果でしょう」これにより“本来の意味のオタク”層の居場所がなくなってしまい、アニメの屋台骨を支えている根強いオタクが離れていってしまっている、と井出さんは分析します。

CD『 BANANA FISH Original Soundtrack』

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「2013年~2018年は腐女子の間で『ユーリ!!! on ICE』や『BANANA FISH』などたくさんのアニメが流行しました。新規コンテンツは腐女子が熱狂するものばかりで、最もバランスが取れていた時期なのでしょう。それと比べると、ここ数年は腐女子人気コンテンツの空白期間であることがわかります」過去アニメが人気で新作アニメが伸び悩んでいる実態は、BLを嗜むスタッフの会話でヒントを得たのだそう。それは、「知らないキャラが登場するアニメを観てもつまらない」という一言。

「商業BLではなく二次創作を買う心理として、既視感のあるキャラは物語に入り込みやすい。知らないキャラだとわからないという意識があります。アニメにも同じことが言えて、昔のアニメはすでに情報が溢れており、評価も確定している。反面、最新アニメは情報がなく一から学習しないといけない。特にZ世代はVtuberやゲームに忙しく、最新アニメを学ぶ時間が惜しい。

その結果、昔のアニメは“二次創作”、最新のアニメは“オリジナル”という概念でアニメを見ているのではないでしょうか」

二次創作への関心がダウン。新作アニメ離れの影響?

では、昨今の腐女子における二次創作への関心はどの程度なのでしょうか。アニメやマンガの二次創作を通じてBLという世界を知り、腐女子になったという人も多いでしょう。二次創作から商業BLに入る人も少なくありません。

アンケート結果によると「二次創作を読んでいる」と答えた割合は約半数の54%。2020年に同様のアンケートを取った際は約6割の59%で、この2年で5%下がりました。

二次創作に関する調査結果(腐女子マーケティング研究所作成)

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「社会現象となった『鬼滅の刃』や『東京リベンジャーズ』ですら、現時点で腐女子からの注目度はそこまで高くありません。内容は面白く、世間ではヒットしているのに、二次創作界隈で覇権を獲らない。これは2020年からの流れで、暗い世間のムードに影響されているのかもしれません」この結果について、先述のように新作アニメの人気が振るわないのが一因ではないかと井出洋さんは話しています。つづく【後編】では、引き続き腐女子におけるマンガ以外の推し活事情についてお届けします。中堅声優の人気とBLCDの関係とは。そして若い世代では海外BLがアツい……!?(執筆:ヤマコジ)<参考>

・第14回BLアワード2023 商業BLの祭典

https://www.chil-chil.net/blAwardNominate/e/2023/■2022年のBL流行はジャンルレス?専門家が見たトレンド傾向とは。映像化も過去最多に

https://numan.tokyo/column/PMHbR

■令和のBLは“クソデカ感情”至上主義時代へ。2023年トレンド予測を専門家に聞いた

https://numan.tokyo/column/8FdQj

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