少数民族ロマとハンセン病患者、それぞれの差別構造や孤立とは 名護・愛楽園で写真展と対談

 【名護】沖縄県名護市の沖縄愛楽園交流会館で、写真家の小原一真さんの写真展「記憶と忘却、想起と想像 ロマ―ウクライナ戦争の見えざる犠牲者」が開催中だ。ヨーロッパで差別されてきた少数民族ロマが、戦争により一層過酷な立場に置かれた現状を伝えている。初日の2月25日に行われた対談では、ハンセン病患者が経験した隔離や沖縄戦の歴史をなぞらえ、戦時下の構造的排除や孤立を考えた。

 ロマは北インド発祥の少数民族。古くからヨーロッパ各地を移動する生活を送り、差別や迫害の対象となってきた。第2次大戦中は、ナチス・ドイツによってユダヤ人と同様に虐殺された。現代では定住して生活する人も多く、ウクライナには約40万人が居住する。しかし差別を避けるため、出自を明かせぬまま暮らす人も少なくないという。

 小原さんは昨年、チェコ、モルドバなどで、ウクライナから逃れたロマの難民が避難先で差別されている状況を取材した。写真展では、白人の難民には用意されるアパート入居を断られ、非正規難民用の元収容施設に入れられる差別的扱いを受けるロマの人々の写真などを展示する。ホロコーストで家族全員を虐殺されたロマの女性の写真もある。

 2月25日は小原さんと、愛楽園入所者からの証言聞き取りに携わった沖縄国際大非常勤講師の吉川由紀さんが対談。ロマを取り巻く状況と、ハンセン病患者が国に隔離収容され、沖縄戦で爆撃されても逃げることすらできなかった状況を考察した。

 小原さんは「災禍で、元々難しい立場にある人々が、より一層の困難に直面する。国や時代は違うが、同じような排除の構造が起きている」と述べた。吉川さんは、日本軍がハンセン病患者を人目にさらす方法で強制収容した事実に触れ「戦時下、(権威は)差別や排除を先鋭化させ、『死んでもいい人たち』というような見方を世の中に肯定させる」と指摘した。写真展は入館無料。4月23日まで。

(岩切美穂)

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