エバラ「フライパンで焼肉鍋」 鍋料理の負のイメージ一新したい…新ジャンル開拓の舞台裏 

フライパンでおいしく、家庭の負担軽減を狙った商品を手に笑顔で語った渡邊課長=横浜市西区

 焼き肉のたれ「黄金の味」や、鍋物調味料「プチッと鍋」シリーズなどで知られるエバラ食品工業(横浜市西区)。昨年夏に発売した「フライパンで焼肉鍋」が好調な滑り出しを見せている。焼き肉と鍋料理を融合させた新ジャンル。開拓の背景には「準備や片付けが面倒」「マンネリ化しがち」といった鍋料理の負のイメージを一新したいとの思いがあった。

 フライパンで肉を焼き、冷蔵庫に余っている野菜と水、調味料を加えて煮込み、そのまま食卓に並べて食べるスタイル。「コチュジャン醤油(しょうゆ)味」と「うま塩にんにく味」の2種類あり、2022年8~10月の売り上げは、当初予想の2.3倍を記録した。

 「フライパン一つで完結する。しかも片付けが楽。おいしく、たくさんの野菜が食べられる」と同社商品開発部商品開発第三課の渡辺哲也課長。顧客は30~50代のファミリー層が中心という。

◆「手間解消」に一役

 「世間が思っている鍋の実態。そこに新商品のヒントがある」

 21年に、同社のグループ会社から商品開発部に帰任した渡辺課長は、エバラ食品として18年以降、新商品の登場がなかった「鍋」ジャンルに着目した。インターネットなどを使って、家庭での鍋料理に関するアンケートを行ったところ、「具材や味がいつも同じ」「カセットこんろや土鍋の準備、片付けが手間」との意見が多く寄せられた。

 手軽に提供できるものとして思い付いたのが、フライパンだった。「日頃から使用頻度は高く、そのまま食卓に出せれば準備や片付けの時間を短縮できる」と渡辺課長。おかずとして人気の焼き肉と鍋料理を組み合わせることで、「新感覚鍋として話題性も生まれる」と確信した。

◆忙しい現代人にニーズ

 肉と同時にたくさんの野菜を手軽に消費できる点も、好調の要因のようだ。商品パッケージでは、家庭で余りがちなキャベツやタマネギなどをお勧めの食材として紹介。「子どものいる家庭では、手軽に栄養が取れると好評」という。忙しい現代人には、調理が簡単な上、煮込んでいる間に食卓の準備をするなど、時間の有効活用ができることも支持されている。

 同社は、冬だけでなく年間を通じて売れる商品を目指すといい、今後は交流サイト(SNS)を通じた商品PRも検討している。渡辺課長は「焼肉鍋のさらなる認知拡大で家庭の定番化を狙う。将来的には主力商品に育てたい」と力を込めた。

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