「まさかの事態」も「かわいさ」も 一番近くから発信、動物園SNS 逆境時届いたエール、啓発活動も意識

「画角いっぱいに動物を映して強調する」と工夫してSNS用の写真を撮る広報担当=2日、東松山市の県こども動物自然公園

 新型コロナウイルス流行による外出自粛などをきっかけに、動物園や水族館の交流サイト(SNS)戦略が進んでいる。埼玉県内の動物園も動物たちの愛らしい姿を発信して人気を集めており、県こども動物自然公園(東松山市)の「ツイッター」は74万人のフォロワーを有する。東武動物公園(宮代町)もツイッターのほか、動画投稿サイト「ユーチューブ」や動画投稿アプリ「ティックトック」などを活用。SNS上で話題となって多くの人の目に留まり“バズる”ことで、若年層を中心に幅広い世代へのPRや、集客につなげている。

 県こども動物自然公園のツイッター(@saitamazoo_tw)では、口角が上がって笑っているように見える「クオッカ」ら小型動物の愛らしい姿が人気だ。1月には、つがいとして飼育していたビスカチャ「ルイ」と「ルナ」がどちらも雌であることが発覚。寄り添う2頭の写真と「職員一同ひっくり返りました。。」という投稿がバズり、「仲良しでほほ笑ましい」「いつか会いに行きたい」とコメントがあふれた。

 2月には東武動物公園(@tobuzoo7)が投稿した、ボールのように弾みながらカメラに迫るゴマフアザラシ「もちもち」の姿に注目が集まった。ツイッターで7万9千件の「いいね」を獲得。ティックトックにも投稿すると再生数は100万回超に上った。

■常連客のエール「直接」

 東武動物公園は「バズろうと狙っているわけではない。ファミリー向けのイメージが強いので、若い人に知ってもらうきっかけにしたい」と語る。来園者は見ることができない動物のバックヤードでの姿が人気だ。動物には個体ごとのファンもおり、卵から生まれる様子から成長する姿を発信するなど「親目線」で楽しめる工夫も。

 2010年の開設から徐々にフォロワーを増やしていたが、特に17年に実施したアニメ「けものフレンズ」(けもフレ)とのコラボイベントで「ぐっと増えた」という。

 昨年12月、けもフレにも登場するヘビクイワシの「ジョジョ」が鳥インフルエンザで死んだ。感染による死や安楽殺で計23羽とお別れし、同園は一時休園。未曽有の事態の中、ツイッターに届けられたのは、同じキーワードで検索しやすくする「#(ハッシュタグ)」を使った「#東武動物公園にエールを」の投稿だった。

 動物の写真や収束を願うメッセージであふれ、広報担当は「『けもフレ』からの常連の方が始めてくれたのではと思う。問い合わせのメールとは違い、リアルタイムで直接声をかけられているようでうれしかった」と感激していた。

■休園中もフォロワー増

 県こども動物自然公園は18年にツイッターを開設。20年には新型コロナの流行により全国のレジャー施設が臨時休園し、同園も同年3~6月まで休園した。自粛ムードの中、SNSで流行したのが「#休園中の動物園水族館」。来園者がいなくても伸び伸びと生活する動物たちの姿が、未知のウイルスにおびえる世間の心を癒やした。

 同園でも体重測定などの飼育係目線の写真や動画を投稿し、フォロワーが増加。さらに20年4月にオーストラリアから同園でしか見られないクオッカが来園したことで勢いを増した。

 同園の広報担当者は「バズってフォロワーが増えれば多くの人に情報を発信できるが、その分動物への誤解がないようにしたい」と話す。「家庭ではモルモットを洗ったりはしないが、園にはたくさんいるので寄生虫の恐れもあり、獣医師の判断の下でシャンプーをしている。ペットとは違うことを注意書きしたりする」という。「国際マヌルネコデー(4月23日)や世界ペンギンの日(同25日)など、絶滅危惧種の啓発に絡めた発信もしている。動物と人間の関係にはプラスの面もあれば、マイナスの面もある。かわいい、面白いだけでない動物の情報や魅力を多くの人に届けたい」と話した。

ゴマフアザラシ「もちもち」の動画がバズった東武動物公園の公式ツイッター

© 株式会社埼玉新聞社