謎の化石は「日本最古のカイギュウ」 80年に発見、展示始まる 西海・崎戸

日本最古のカイギュウの化石標本(左)。右上の図は漸新世のカイギュウ、ハリテリウムの骨格を基にした化石のおよその位置。右下は標本の図で、黒は背骨、濃いグレーは肋骨、薄いグレーは骨片など(西海市教育委員会・福井県立恐竜博物館提供)

 1980年に長崎県西海市崎戸町で見つかった化石が、マナティーやジュゴンの仲間の哺乳類「カイギュウ」のもので、日本最古であることが分かった。長年正体不明だったが、専門家の指導でクリーニング作業を進め、重要な化石と判明した。同町の崎戸歴史民俗資料館で4日、展示が始まった。
 カイギュウは地球が暖かかった始新世(約5600万~3390万年前)に北米の大西洋沿岸やアフリカ北部、地中海で繁殖。ジャワ島付近にもいたとされている。その後の漸新世(~2300万年前)に地球の寒冷化で暖かい海域に移動。東南アジア周辺では漸新世以前の化石の記録はなく、1700年代に乱獲などにより絶滅している。
 化石は西彼杵層群蛎ノ浦層が分布する崎戸島で、長さ、幅ともに約80センチの砂岩にまとまった形で発見。正体不明のまま同資料館で展示していたが、市が化石の解明と活用に向け2016年、福井県立恐竜博物館の宮田和周総括研究員らの指導でクリーニング作業を開始。同博物館で作業を継続し、化石を含む岩石と地質を解析した。
 同一個体のあばら骨21本、背骨4点ほか、骨片約10点を確認。検証の結果、約3300万年前の古第三紀漸新世初期の化石で、あばら骨が太いバナナ状であることなどから、カイギュウと推定。宮田総括研究員らが19年に国際学会、昨年には日本古生物学会でそれぞれ発表した。
 これまで日本最古のカイギュウの化石は1982年に北九州で見つかった2点の尾椎骨。約2800万年前のもので、この時期以前にインド洋から南を回って太平洋にやってきていたと考えられていた。市教委などは「謎となっている移動の歴史を知る貴重な資料になる」としている。
 市教委は25日午後2時から、崎戸中央公民館で宮田総括研究員の講演会を開催。展示は4月30日まで。5月3日~6月30日、長崎市野母町の市恐竜博物館で展示する。


© 株式会社長崎新聞社