SF新チーム『TGM Grand Prix』誕生の理由。池田和広代表「自分たちの存在意義を証明するために」

 大湯都史樹、ジェム・ブリュックバシェを起用し、2023年シーズンより全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦するTGM Grand Prix。この“新チーム”はどのような経緯で誕生し、国内最高峰の舞台に挑むこととなったのか。チーム代表の池田和広氏に聞いた。

「私達はレーシングチームで、レースをすることが使命です。レースをするからには勝たないと我々の存在意義はありませんし、勝つことこそが我々の使命だと思っています。そこで日本最高峰のスーパーフォーミュラは、我々にとって一番適した舞台であり、一番チャレンジングなシリーズだと考えて参戦を決めました」

 これは取材冒頭に池田代表が口にした言葉であり、TGM Grand Prixが誕生した最大の理由でもある。

 TGM Grand Prixは、さまざまなレースプロジェクトに携わってきたセルブスジャパンを運営母体としている。同社は長年、車両メンテナンスやエンジニアリングサポートという点から国内トップフォーミュラにも関わってきたが、そんなセルブスジャパンの社長を務める池田代表が「スーパーフォーミュラで結果を出したい」という使命をかたちにするべく、自らの手で設立したのがTGM Grand Prixというチームとなる。

ジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)

 また、「スーパーフォーミュラで結果を出したい」と、同じ使命を抱いたドライバーとの出会いも、TGM Grand Prix設立を加速させることとなった。そのうちのひとりがトルコ出身のジェム・ブリュックバシェだ。3月3日に起用が明らかにされたふたりのドライバーのうち、ブリュックバシェは日本でのレース経験はなく、2022年はF1直下のFIA F2に参戦していた。

 ただ、ブリュックバシェは2022年シーズン中盤にFIA F2を離れることとなった。逆境のなか、ブリュックバシェの父は、今後の息子のキャリアについて周囲に相談。そのうち、元ダラーラ社のスタッフだった知人から、日本のスーパーフォーミュラに参戦を計画しているチームがあると紹介されたことが、ブリュックバシェとTGM Grand Prixが出会うきっかけとなったという。

 両者の出会いは急だったものの、12月7〜8日に鈴鹿で開催された合同テスト/ルーキーテストにブリュックバシェとともに参加することが叶った。ただ、まだチーム名すら決まっていなかったため“TEAM TBD”としての参加となったが、これがTGM Grand Prixの始まりの第一歩となる。ブリュックバシェにとっては初のスーパーフォーミュラ、初の鈴鹿サーキットということもあり、心配もあったと明かす池田代表だが、テスト結果には驚かされたという。

12月7〜8日に開催された鈴鹿合同/ルーキーテストにTEAM TBDから参加したジェム・ブリュックバシェ

「2日間走ってクラッシュもなく。データを解析するとまだまだ限界までは走れてはいませんでしたが、エンジニアの見解だと“かなりのポテンシャルを持ってる”とのことでした。たとえば、1セクターのタイムや、細かな部分を見てみると、かつてスーパーフォーミュラで大いに活躍した外国人ドライバーたちに匹敵するほどのものを感じると」

「もちろん、スーパーフォーミュラは日本の最高峰ですし、海外からの参戦となると日本のサーキットを覚えたり、クルマに体を慣れさせないといけません。1年目からいきなり優勝争いができるとかいえば難しい世界です。ただ、2年ほど経験を積めばかなり面白いドライバーになるのではと考えています」

「それはジェムも望んでいる部分でもあります。ジェムはeスポーツの世界では他を圧倒する結果を残していますが、そのポテンシャルを実車の世界でいかに実証できるか。我々とともに経験を積んで、本当に素晴らしいドライバーになってくれたら、それもレーシングチームとして多大なやりがいを感じるところだと思います。我々のトップフォーミュラでの経験をもとに、どこまでジェムを引き上げることができるか。それもTGM Grand Prixとしてのチャレンジのひとつです」

SF23シェイクダウン 大湯都史樹(TGM Grand Prix)

 若いルーキードライバーをチャンピオンにまで引き上げることもチャレンジのひとつではあるが、これがすべてではない。冒頭に池田代表が口にした言葉にあるように、TGM Grand Prixは「勝つことこそが我々の使命」であり「勝つことが存在意義」としている。この新チームが自らの存在意義を証明するべく、起用したのがスーパーフォーミュラでの優勝、ポールポジション、そして複数回の表彰台を経験している大湯都史樹だ。

「やるからには勝たないといけない、それが使命です。結果が残らなければ我々の存在意義はありませんので、とにかく結果にこだわります。そんななかで大湯選手は、私達とともに“勝てる”ドライバーだと思ってます。大湯選手という、とても速いドライバーを起用したからには、野尻智紀選手の3連覇を止めるのは私達であるべきだと思います。自分たちの存在意義を証明するために、自分たちができるなかで最大限にいい環境を常にドライバーに提供し、ともに戦っていきます」

 2023年シーズン、スーパーフォーミュラという大舞台に挑むTGM Grand Prixは、いかに自らの存在意義を証明するだろうか。開幕から注目しておきたい存在に違いない。

池田和広チーム代表(TGM Grand Prix)
ジェム・ブリュックバシェの55号車に入る『#PrayForTurkiye』。なお、カッティングシートは池田代表自ら貼り付けたとか
ジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)の55号車
2023鈴鹿ファン感謝デーで初投入されたTGM Grand Prixのメカニックスーツ

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